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がんの手術を受ける患者さんへ!手術前に必ずしてもらいたい5つのこと

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がんに対する治療法は日々進歩しています。新しい抗がん剤や放射線治療、さらには免疫治療も開発され、臨床応用されるようになりました。

また、外科の分野では、より安全な手術術式や、患者さんへの負担を軽くする低侵襲手術が次々と開発され、導入されています。

このような手術の進歩の一方で、術後の合併症はなくなりません

術後の合併症は入院期間が延びる原因となるだけでなく、手術に伴う死亡(手術関連死)につながることがあります。また、術後合併症が起こるとがんの再発率が上昇したり、術後の生存期間が短くなるといったことも報告されています

合併症の発生には、手術手技(手術の方法や技術)の因子だけでなく、患者さんの因子(たとえば併存疾患、栄養状態や免疫力など)も関係しています。

したがって、術後合併症の発生リスクを減らすために、手術前に患者さんが自分自身で出来ることがあります

がんの手術前に患者さんにしてもらいたいこと5つ

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最近では、手術の前日に入院することが一般的になりました。また、患者さんの多い病院などでは、手術が2週間~1ヶ月先になることもあります。

手術を待つ間は、心配で何もやる気にならないかも知れません。しかし、この手術までの期間に(たとえ短期間でも)、術後の合併症リスクを減らすためにできることがあるのです。

今回は、術後合併症を減らすために、がんの手術前に患者さんに必ずしてもらいたい5つのことを紹介します。

1.栄養状態(特に低タンパク血症)の改善

多くのがん患者さんでは、栄養状態が悪化しています。しかし、低栄養状態(特に低タンパク状態)は術後合併症のリスクを上昇させます。

栄養状態の指標にはいろいろありますが、血液中のアルブミン値が低下(一般的には血清アルブミン値が3.5 g/dL以下)している場合には、栄養状態が低下していると考えられます。

このような患者さんでは、術前に良質のタンパク質を摂取し、出来るだけ低アルブミン血症を改善しておくことが大切です。

食欲がない方や、消化管のがんで食事があまり摂れない患者さんなどでは、病院で経管栄養剤(エンシュアHなど)を処方してもらうのもいいでしょう。また、抗炎症作用があるEPA配合の栄養機能食品(プロシュア)や、免疫強化栄養剤(インパクト)などが市販されていますので、試してみるとよいでしょう。

2.筋肉やせ(サルコペニア)の改善

サルコペニアとは、筋肉量および筋力が低下した状態のことで、もともと高齢者にみられる変化として報告されましたが、がんに伴っておこることがあります。なかでも、食道がん、胃がん、膵臓がんなどの患者さんに多いとされています。

じつは、このサルコペニア(あるいは肥満を伴うサルコペニア)がある患者では、術後の合併症リスクが高くなり、また生存率が低下することが報告されています。そこで、術前にできるだけサルコペニアを改善することが必要です。

サルコペニアを防止あるいは改善させるためには、プロテインの摂取とレジスタンス運動をおすすめしています。

詳しくは、「体重減少に悩むがんサバイバーの方へ:ホエイプロテイン+筋トレ(レジスタンス運動)のすすめ」をどうぞ。

3.口腔ケア(歯科受診、歯周病のチェック・治療)

多くの研究により、歯周病が食道がんなどの術後合併症(とくに肺炎や傷の化膿などの感染性合併症)のリスクとなることが分っています

最近では、積極的に術前の口腔ケアを取り入れている病院もあります。もし手術を受ける病院で歯科(あるいは口腔外科)受診や術前口腔ケアの説明がなかった場合には、自分でかかりつけの歯科へ行き、歯周病、う歯のチェック・治療および専門的な口腔内清掃を受けてください。また、毎日の口腔ケア(清掃方法)の指導を受けましょう。

また手術前から歯科を受診することは、全身麻酔の時の気管挿管(呼吸補助のチューブを気管に入れること)による歯の破損や誤飲の予防になるといったメリットもあります。

4.免疫力の向上

がんになると様々な身体的・精神的な理由から、免疫力が低下します。免疫力が低下すると術後合併症のリスクが増加します。例えば、免疫状態の指標である総リンパ球数が少ない人では、術後の合併症が増えることが明らかとなっています。

免疫力を高める方法としては、規則正しい生活、適度な運動、ストレスを減らす生活、バランスのよい食事や腸内細菌を整える食品(ヨーグルトや酵素をとる)、体温をあげる、などがあります。

詳しくは、「がんを退治!免疫力を高める5つの習慣」をどうぞ。

また免疫力を保つためには十分な睡眠をとることが大切です。がんのことが気になって眠れないようでしたら、遠慮なく主治医に相談しましょう。

5.禁煙、呼吸訓練

喫煙は、術後肺炎などの重大な合併症のリスクとなります。手術が決まったら、すぐに禁煙しましょう

また、慢性の閉塞性肺疾患(COPDなど)があり、呼吸機能が低下している患者さんでは、術前呼吸訓練が術後呼吸器合併症の減少のために重要です。このような合併症がある患者さんや、長年喫煙を続けているような方は、呼吸訓練について積極的に主治医に相談しましょう。

 

以上、がんの手術が決まったら、必ず術前にしてほしい5項目でした。

 


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  • この記事を書いた人

佐藤 典宏

医師(産業医科大学 第1外科 講師)、医学博士。消化器外科医として診療のかたわら癌の基礎的な研究もしています。 標準治療だけでなく、代替医療や最新のがん情報についてエビデンスをまじえて紹介します。がん患者さんやご家族のかたに少しでもお役に立てれば幸いです。

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