生活の質だけじゃない!がん患者さんに緩和ケアの早期導入をすすめる理由5つ

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「緩和ケア(palliative care)」とは、重大な病気に直面した患者さんや家族の生活の質(クオリティー・オブ・ライフ)をよくするために、苦痛を防いだり、和らげたりする医療のことをいいます。

2010年、「肺がん患者に対して、早期から緩和ケアを導入すると生活の質だけではなく、予後(生存期間)まで良くなる」という衝撃的な論文がニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに報告されました。

これ以降、日本においてもがん治療の早い段階から緩和ケアを導入する重要性が認識されるようになってきました。

しかし、患者さんや医療者側の「緩和ケア」についての誤解などもあり、実際には「早期からの緩和ケア導入」は十分にできていないのが現状です。

今回は、がん患者さんに対する早期からの緩和ケア導入の利点について解説します。

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緩和ケアの早期導入をすすめる理由

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緩和ケアといえば、「がんの末期の患者さんが受ける治療のこと」という考えが一般的でした。

しかし、いくつかの海外からの研究報告がきっかけとなり、緩和ケアはがんと診断されて早期から組み込むべき治療の一つの柱として見直されてきました。

日本では、2007年に「がん対策推進基本計画」が打ち出され、「がん患者およびその家族が可能な限り、質の高い療養生活を送れるようにするため、治療の初期段階から緩和ケアの実施を推進していくこと」が掲げられました。

がん患者さんに緩和ケアの早期導入をすすめる理由を挙げてみます。

1.生活の質(クオリティー・オブ・ライフ)が向上する

まず、緩和ケアを早期から導入することで、痛みやその他のつらい身体的症状、精神的苦痛やストレスが緩和され、生活の質(生活のしやすさ)が向上します。これは多くの研究によって明らかになっています。

特に、痛みがあると生活の質はとても悪くなりますが、適切な鎮痛治療によって、がん患者さんのほぼ100%で痛みのコントロールが可能とされています。

また、がん患者さんに対しては精神的なケア(心のケア)も重要で、精神科、心療内科、あるいは専門の腫瘍精神科(サイコオンコロジー)の医師やスタッフが担当することも多くなってきました。

2.生存期間が延びる

前述のニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンの論文によると、転移を伴う非小細胞肺がんと診断された151名の患者さんを、「標準治療+緩和ケア(早期緩和ケア導入群)」と「標準治療のみ(通常治療群)」に無作為にグループ分けしました(N Engl J Med. 2010 Aug 19;363(8):733-42)。

この結果、早期緩和ケア導入群の患者では、終末期に抗がん剤治療などを受けている割合が少なかったにもかかわらず、生存期間が有意に延長したとの結果でした(生存期間の中央値:11.6ヶ月 vs 8.9ヶ月 )。

また、この研究以外にも、緩和ケアの早期導入が、がん患者さんの生存期間を延長するという報告がいくつかあります。

さらに日本における研究(近畿大学医学部堺病院 大塚正友先生ら)でも、7日以上緩和ケア外来を受診できた患者さんのほうが、6日以下しか受診できなかった患者さんに比べて生存期間が有意に延長していたことより、緩和ケアの早期かつ定期的な介入が、生存期間を延長した可能性があるとしています(Jpn J Clin Oncol. 2013 Aug;43(8):788-94)。

3.家族への負担が減る

がん患者さんをサポートする家族にとって、がんによる痛みなどの症状に苦しんでいる姿をみることほどつらいことはありません。

早期の緩和ケア導入によって患者さんの症状が軽くなれば、家族の心理的(あるいは看病による肉体的)負担が減ると考えられます。また、がん患者さんの家族に対しても心のケアを行っている施設が増えてきました。

4.社会資源(労働力)の確保につながる

日本におけるがん罹患率の上昇に伴い、いわゆる働く世代のがん患者さんが増えています。しかし、がんと診断されたために仕事をやめたり、休職することが多いのが現状です。

もちろんがんの部位や重症度によっては働くことが難しい場合もありますが、緩和ケアによってがんの症状が軽くなれば、それだけ仕事を継続できる可能性が高まります。ひいては労働力の確保にもつながり、社会へのメリットにもなります。

2人に1人ががんになる時代、例えがんになっても仕事を続けられることが重要です。このためには、医療機関や企業が、がん患者さんの就労をサポートする体制を構築することも重要ですが、まずは患者さんの症状を緩和することが大前提だと思います。

5.がんに対するイメージが変る

がんといえば、いまだに「痛い、苦しい、きつい、つらい」、といったネガティブなイメージがあります。患者さんががんの告知を受けたとき、このイメージのせいで精神的ダメージが大きくなっていると考えられます。

しかし、緩和ケアを早期から導入すれば、がんに伴う痛みやつらい症状が軽くなったり、あるいは全く症状がないまま生活できる可能性が高まります。

多くのがん患者さんが、早い段階からの緩和ケアの恩恵によって、症状や精神的苦痛のない(あるいは軽い)生活を送れるのが当たり前の世の中になると、皆さんのがんに対するイメージもきっと変ると思います。

以上が、(もちろんすべてのがん患者さんに当てはまる訳ではありませんが)緩和ケアの早期導入をすすめる理由です。

これまでは、コントロールできない症状が出てきた時に初めて緩和ケアを提供するというのが一般的でした。しかし今後は、がんが診断された早い段階から緩和ケアを導入することがますます増えていくと思われます。

がんの患者さん(あるいはご家族のかた)は、たとえ痛みや他の症状、不安や精神的苦痛が我慢できる範囲だとしても必ず主治医に伝え、その対策について、あるいは緩和ケアの受診(病院によって違いますが、緩和ケア科、緩和ケアチームなどがあると思います)について聞いてみてください。


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