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ガイドライン解説!「膵癌の発見(早期診断)はどのようにしたらよいか?」膵癌診療ガイドラインより

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膵臓がんは年々増えており、日本における死亡者数は2013年には年間3万人を突破しました。

膵臓がん患者の5年生存率(治療開始から5年後に生存している人の割合)は10%以下であり、消化器がんの中では最悪の成績です。

この理由として、膵臓がんの特徴として、症状がでにくいためにかなり進行した状態でみつかること、まわりの臓器に浸潤(しんじゅん)したり、転移しやすいこと、また抗がん剤治療が効きにくいこと、などが原因と考えられています。

このような膵臓がんの治療成績を少しでも改善するためには、統一された標準的な診療体系の確立が必要です。この目的で、ガイドラインが出版されています。

がんのガイドラインとは?

ガイドラインとは、がんの診療にあたる臨床医に実際的な診療指針を提供するための本です。

簡単に言うと、エビデンス(医学的根拠)に基づいた医療や、エビデンスはないが、将来につながりそうな試みなどについて体系的にまとめた「現時点でのがんの標準的な診断・治療の手引き」といえます。

例えば治療に関しては、ガイドラインではおもに標準治療について解説しています。

標準治療とは、多くの臨床試験などの結果をもとに、専門家が集まって検討を行い、安全でかつ最も効果が高いと合意が得られている治療法のことです。つまり、エビデンス(根拠)にもとづいた現時点でのベストの治療法が「標準治療」といえます。

現在、多くのがん(乳がん、肺がん、胃がん、食道がん、大腸がん、膵臓がん、など)についてガイドラインが発行されており、その中で推奨される標準治療について詳しく書かれています。詳しくは、こちら(日本癌治療学会 がん診療ガイドライン)を参照ください。また最近では患者さん向けのガイドラインも増えてきました。

膵癌診療ガイドライン

「膵癌診療ガイドライン」は2006年に初版が出版され、以後何度か改訂されてきました。

時代の流れと共に、がんのエビデンスも変ります。ここ数年、膵臓がんの診断・治療についても新しい診断・治療法が報告され、それによってガイドラインの内容も大きく変りました。

さて、ここでは最新の膵癌診療ガイドライン(2016年版)から、最新の情報として、気になる項目(質問と答え)をピックアップして紹介します。

診断法(D1) 膵癌の発見はどのようにしたらよいか?

 

ステートメント

1.腹痛、食欲不振、早期の満腹感、黄疸、体重減少、糖尿病新規発症、背部痛などの症状を認める場合には、膵癌の可能性を考慮し検査を行うことを提案する。

2.膵癌診断に一定の有用性がある血中膵酵素や腫瘍マーカーを測定することを提案する。

3.膵癌のスクリーニングのためにUS(超音波検査)を行うことを提案する。

4.膵癌のリスクファクターを複数有する場合には、検査を行うことを提案する。

それぞれについて詳しくみてみましょう。

膵臓がんの症状

まず1についてですが、膵癌の症状には腹痛(およそ80%)、食欲不振(65%)、早期の満腹感(60%)、黄疸(55~80%)、睡眠障害(55%)、体重減少(65~85%)、糖尿病の新規発症(97%)、背部痛(50%)などがあります。

ただし、これらの症状は膵癌だけにみられるわけではありませんが、膵癌の高リスク群(後述)にこのような症状が出現した場合には精密検査をすべきであるとしています。

また、初期症状のない膵癌も15%以上あることより、注意が必要です。

膵臓がんの血液検査(酵素、腫瘍マーカー)

(膵型)アミラーゼ、リパーゼ、エラスターゼ1、トリプシンなどの血中酵素は膵癌に特異的ではないが、膵癌診断のきっかけになることがあります。

また、腫瘍マーカーについては、膵臓がんの検出感度はCA19-9が70~80%、SPan-1が70~80%、DUPAN-2が50~60%、CEAが30~60%、CA50が60%とされています。

膵臓がんのスクリーニング検査

膵臓がんのスクリーニング検査としは、超音波検査(US)は簡便で侵襲のない安全な検査として有用とされています。ただし、感度は48~95%、特異度は40~91%と対象(検査を受けるひと)によって大きな開きがあります。

超音波検査は消化管のガスや肥満によって膵臓の一部あるいは大部分が描出困難なことがあります。また、1cm以下の膵臓がんの描出率は50%(3cm以上では95%以上)と低いため、早期発見には感度が低いと考えられます

膵癌高リスク群へのスクリーニング

膵癌のリスクファクターとして、家族歴(膵癌家族歴、家族性膵癌)、遺伝性疾患(遺伝性膵炎など)、合併疾患(糖尿病、慢性膵炎、膵管内乳頭粘液性腫瘍、膵のうほう、肥満)、嗜好(喫煙、大量飲酒)、職業(塩素化炭化水素曝露にかかわる職業)などがあり、これらを複数有する場合には、膵癌の高リスク群として検査を行うことを奨めるとしています

以上が「膵癌の発見はどのようにしたらよいか?」に対する最新の情報です。

 


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  • この記事を書いた人

佐藤 典宏

医師(産業医科大学 第1外科 講師)、医学博士。消化器外科医として診療のかたわら癌の基礎的な研究もしています。 標準治療だけでなく、代替医療や最新のがん情報についてエビデンスをまじえて紹介します。がん患者さんやご家族のかたに少しでもお役に立てれば幸いです。

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