「BRCA遺伝子変異をもつ女性に乳房切除術は勧められるか?」乳がん診療ガイドライン解説

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女優アンジェリーナ・ジョリーさんの告白によって、「遺伝性乳がんの遺伝子検査(BRCA1およびBRCA2)」が一躍注目を浴びました。この遺伝子検査ですが、実際にはどういった検査で何がわかるのでしょうか?

また、彼女が選択した両側乳房の予防的(リスク低減)切除術については賛否両論があります。実際にはどのくらい効果があり、日本ではどう考えられているのでしょうか?

今回は、乳がん診療ガイドラインから、遺伝性乳がんの遺伝子検査および両側リスク低減乳房切除術について解説します。

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遺伝性乳がん・卵巣がんのための遺伝子検査

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遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(Hereditary Breast and Ovarian Cancer, HBOC)

BRCA1BRCA2は、がん抑制遺伝子といわれ、DNAに傷がついたときに正常に修復する機能を持った遺伝子です。したがって、BRCA1あるいはBRCA2に生まれつき変異(遺伝子配列の異常)があった場合、本来のがんを抑制する機能を失いやすくなり、乳がんや卵巣がんを発症しやすくなることがわかっています。

 これを遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(Hereditary Breast and Ovarian Cancer, HBOC)といいます。

HBOCの人は、生涯を通じて乳がんにかかる可能性が40~90%乳がんにかかった乳房の反対側の乳房に新たにがんを発症する可能性が40~60%、また卵巣がんにかかる可能性も10~60%になるといわれています(米国におけるデータ:米国臨床腫瘍学会ASCO資料による)。

どんな人が受けるべきか?

ではどのような人が遺伝性乳がんの遺伝子検査を受けるべきでしょうか?基本的には遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)が疑われる場合にはBRCA1、BRCA2の遺伝子検査を受けるべきだと考えられます

遺伝性乳がん卵巣がん症候群 チェックリスト

母方、父方それぞれの家系について、以下の質問にお答えください。あなた自 身を含めたご家族の中に該当する方がいらっしゃる場合に、□にチェックを入 れてください。

以下の質問にひとつでも該当する項目があれば、あなたがHBOCである可能性は一般よりも高いと考えられます。

□ 40歳未満で、乳がんを発症した方がいますか?

□ 年齢を問わず、卵巣がん(卵管がん、腹膜がん含む)の方がいらっしゃいますか?

□ ご家族の中で、おひとりの方が時期を問わず、原発乳がんを2個以上発症したことがありますか?

□ 男性の方で、乳がんを発症された方がいらっしゃいますか?

□ ご家族の中で、ご本人を含め、乳がんを発症された方が3名以上いらっしゃいますか?

□ トリプルネガティブの乳がんといわれた方が、いらっしゃいますか?

□ ご家族の中に、BRCAの遺伝子変異が、確認された方がいらっしゃいますか?

日本HBOCコンソーシアムHPより)

まず母親、兄弟姉妹に(男性乳がんの場合も含めて)乳がんの病歴がある場合には、HBOCを疑います

また、若年で乳がんを発症した人、両側の乳がん、片方の乳房に複数回乳がんを発症、乳がんだけでなく卵巣がんも発症した既往歴などが、HBOCを疑うべき臨床的な特徴です。したがって、このような人(患者さんおよびその血縁者)が遺伝子検査の対象となります。

ちなみに、BRCA1BRCA2遺伝子の検査は、通常未成年では行わず、検査を受ける人が成人した後に、本人が十分に情報を得たうえで受けるか受けないか、自由意思できめることとされています

HBOCの発症が心配な場合は、専門の医師やカウンセラーに相談し詳しく説明を受け、将来の健康について専門家の意見とアドバイスを受けることが勧められます。詳しくは、日本HBOCコンソーシアムのウェブサイトをご覧ください。

遺伝子検査でわかること、わからないこと

BRCA1BRCA2の遺伝子検査を受けて、遺伝子の異常が見つかった場合、乳がんや卵巣がんに罹患するリスクが非常に高いという遺伝的な体質があることがわかります。

したがって、その後の検診はこのリスクを考慮しながら慎重に行われます。

またHBOCの患者さんの血縁者の方で、同じ遺伝子の異常が伝わっているかどうかを調べることができます。親から子にその遺伝子の異常が伝わる確率は2分の1(50%)です

もしこれらの遺伝子に異常がみつかった場合には、25歳頃から乳腺専門医による適切な乳がん検診ならびに35歳くらいから婦人科専門医による卵巣がん検診をうけることにより、乳がん・卵巣がんに発見するようにします。

しかし一方で、遺伝子検査では常に確実な答えが得られるわけではありません

例えば、患者さんの状況や家族歴から遺伝性乳がんが強く疑われて、BRCA1BRCA2の遺伝子検査を行ったものの遺伝子の異常がみつからなかった場合、現在行われている遺伝子検査ではみつけることができない遺伝子の異常が存在している可能性もあるため、遺伝性乳がん・卵巣がんの可能性を完全に否定することはできません。

遺伝子検査を受けられる施設、費用

日本においては、すべての医療機関でBRCA1BRCA2の遺伝子などの乳がんの遺伝子にかかわる遺伝子の検査ができるわけではありません。

一部の大学病院、がん専門病院、地域の基幹病院(がん拠点病院)などで検査を受けることができます。ただしBRCA1BRCA2遺伝子の検査は、現状では健康保険の適応対象になっておらず、一般的な検査よりもかなり高額となっています(~20万円前後)。

日本においてBRCA1BRCA2の遺伝子の異常が検査できる施設は、日本HBOCコンソーシアムのウェブサイトから検索できます。いずれにしても、まずは遺伝カウンセリングで詳しい話を聞くことをおすすめします。

科学的根拠に基づく乳癌診療ガイドライン

ガイドラインとは、専門家が集まって膨大な情報について調査し、話し合いの結果合意に至った、科学的データと医学的根拠(エビデンス)に基づいた標準的な診断・治療の指針です。

簡単に言うと、現在の最もよいとされる診断・治療の手引きです。もともとは医師など医療者を対象にしたものでしたが、最近では患者さん向けのガイドラインも発行されています。

乳癌診療ガイドラインは、日本乳癌学会によって2004年に刊行されました。以後、改訂をくり返し、2011年からは治療編や疫学・診断編の2分冊となりました。

乳癌診療ガイドライン②疫学・診断編2015年版より、癌遺伝子診断と予防について、特に予防的乳房切除についての項目をピックアップします。

CQ32 BRCA1あるいはBRCA2遺伝子変異をもつ女性にリスク低減乳房切除術は勧められるか

BRCA1あるいはBRCA2遺伝子変異を持つ場合、乳がんの発症リスクが40~90%になることより、有効な予防法を確立することは重要な課題とされています。

海外では、これらの女性に対する予防的(リスク低減)乳房切除術が行われてきました。

しかし、はたしてこの手術は日本ではどう考えられているのでしょうか?乳癌診療ガイドラインでは以下のようになっています。

両側リスク低減乳房切除術:BRCA1あるいはBRCA2遺伝子変異をもつ未発症の女性に対して、リスク低減乳房切除術の実施を検討してもよい(推奨グレードC1)

対側リスク低減乳房切除術:BRCA1あるいはBRCA2遺伝子変異をもつ既発症の女性に対して、対側のリスク低減乳房切除術の実施を検討してもよい(推奨グレードC1)

つまり推奨グレードはC1(十分な科学的根拠はないが、細心の注意のもの行うことを考慮してもよい)ですが、結論としては「予防的乳房切除の実施を検討してもよい」という答えでした。

乳がんを発症していない人に対する両側リスク低減乳房切除術、片方の乳がん発症者に対する対側のリスク低減乳房切除術は、いずれにおいても乳がん発症リスクは確実に減少するといわれています。例えば、過去の報告によると、両側リスク低減乳房切除術は、BRCA1/2変異を有する女性の乳がん発症を90~100%抑制していると考えられています。

ただしこれらの手術を実施するに至っては、乳腺科の診療および遺伝カウンセリング外来の中で予防的乳房切除の医学的意義および注意事項について十分な説明を受け、理解した上で受ける必要があります。

日本では予防的乳房切除は保険の適応外であるため、自費診療での実施となります。こちらも施設によって費用が違いますが、片方の乳房の切除で20~50万円、両側の乳房の切除で50~100万が必要となります。再建手術を行う場合にはさらに高額となります。

 


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