腹腔鏡による大腸がんの手術は安全なの?10年間にわたる開腹手術との比較結果

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腹腔鏡(ふくくうきょう)手術とは、お腹に小さな穴(5ミリから1センチ程度)を数カ所開けて、そこからカメラや様々な器具をお腹のなかに挿入して行う手術のことです。

腹腔鏡手術は、1990年頃より胆石や良性疾患に対する手術として普及し、その後、がんなどの悪性疾患に対しても行われるようになりました。

大腸がんに対する手術では、以前はお腹を大きく開ける開腹手術が行われていましたが、2000年頃より腹腔鏡手術の行われる割合が急速に増えてきました。最近では多くの施設で腹腔鏡手術が標準術式として行われています。

この腹腔鏡手術ですが、従来の開腹手術に比べて傷口が小さく、また体に対する負担が少ないとされ、患者さんにとってはメリットが大きいと考えられています。

しかし一方で、導入当初から腹腔鏡手術の安全性と根治性(がんを完全に切除できること)を懸念する声もありました。

今回、大腸がんに対する腹腔鏡手術と開腹手術の比較試験の長期成績(10年間)が報告されましたので紹介します。

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大腸がんに対する腹腔鏡手術

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適応(どんな人が受けることができるか?)

大腸がんに対する腹腔鏡手術の適応は、がんの部位および進行の程度(ステージ)、また、患者さんの全身状態や腹部の手術歴なども考慮しながら決定します。がんの部位に関しては、基本的には(直腸を含む)すべての大腸がんが腹腔鏡手術の対象となります。

日本における標準治療の指針である大腸がん治療ガイドラインでは、当初は早期大腸がんに限って腹腔鏡手術が認められていましたが、2009年度版では進行大腸がんにも適応拡大が可能であるとされました。

現在では、もちろん施設によって適応基準は異なりますが、ステージ0~IIIの(つまり遠隔転移のない)大腸がんに対して腹腔鏡手術が行われています。ただしがんが極端に大きい場合、隣の臓器に浸潤している場合、あるいはリンパ節転移がたくさん認められる場合には、通常の開腹手術が選択される傾向にあります。

また、過去にお腹の手術を受けたことある患者さんなどで、癒着(ゆちゃく=腸管同士あるいは腸管とお腹の壁などが引っ付くこと)がひどい場合には、腹腔鏡手術が難しいことがあります。また途中から通常の開腹手術へ変更されることもあります。

どんな手術か?

まずおへそに小さなの穴を開け、ここから腹腔内(ふくくうない)に炭酸ガスを入れてドーム状に膨らませます。このおへそから細い高性能カメラ(腹腔鏡)を挿入してモニターで観察します。同時に手術操作に用いる器具を挿入するために、5ミリから1センチの小さな穴を左右に合計4~5か所に開けます。

術者と助手が強力し、がんのある大腸を剥離(はくり=はがすこと)したり、周囲のリンパ節の切除を行います。腹腔内での操作を終了後、最終的には病変を含む大腸を4~5センチの切開創からお腹の外に取りだします。

吻合(ふんごう:残った腸をつなぐこと)は、お腹の外で行う場合と特殊な器械を使ってお腹の中で行う場合とあります。

また最近一部の施設では、体への負担をさらに減らす目的で、穴の数を減らす減孔式(げんこうしき)腹腔鏡手術や穴が1か所の単孔式(たんこうしき)腹腔鏡手術も行われるようになってきました。

腹腔鏡手術のメリットとデメリット

腹腔鏡手術の最大のメリットは、傷が小さくてすむため、術後の痛みが少なく、美容面でもすぐれていることです。また開腹手術よりも術後の回復が早く、入院期間が短く、社会復帰も早くできる傾向にあります。

また腹腔鏡手術では、腸管が外気に触れないため、癒着(ゆちゃく)が少ないと言われています。これに伴い、手術後の合併症である腸閉塞(ちょうへいそく)が少ない傾向にあります。

逆に腹腔鏡手術のデメリットとしては、開腹手術と比べて手術手技が特殊で難しいこと、カメラの視野外(見えてないところ)でおこった臓器の損傷などを見落とす恐れがあること、さらに、予期せぬ出血など手術中の合併症に対してすぐに対応できないことがあることです。

加えて、導入当初より腹腔鏡手術ではがんの取り残しや再発が多いのではないかといった意見がありました。一方で早くから腹腔鏡の大腸がん手術が導入された欧米では、進行がんに対しての成績が従来の開腹術に劣らないことが報告されています。

結腸がんに対する腹腔鏡手術と開腹手術の比較試験:10年目の長期成績

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今回、大腸(結腸)がんに対する腹腔鏡手術と開腹手術を比較した臨床試験の10年目の長期成績を報告した最近の2つの論文を紹介します。

まずは2015年にイタリアから報告されたランダム化比較試験の結果です(Allaix, et al. Laparoscopic versus open resection for colon cancer: 10-year outcome of a prospective clinical trial. Surg Endosc. 2015 Apr;29(4):916-24)。

この前向き試験では、304人の大腸がん患者のうち、154人を腹腔鏡、150人を開腹手術へランダムに割り付けました。10年目の時点における全生存率は腹腔鏡が87.2%で開腹が78.7%(統計学的な有意差なし)で、無再発生存率は腹腔鏡が80.9%で開腹が76.8%(有意差なし)でした。

2つめは、2016年にヨーロッパの多施設から報告されたランダム化比較試験の結果です(Deijen, et al. Ten-year outcomes of a randomized trial of laparoscopic versus open surgery for colon cancer. Surg Endosc. 2016 Oct 12. [Epub ahead of print])。

1248人の大腸がん患者が登録され、最終的には256人(腹腔鏡125人と開腹手術131人)が10年目での解析が可能でした。

結果ですが、全生存率は腹腔鏡が48.4%で開腹が46.7%(統計学的な有意差なし)で、無再発生存率は腹腔鏡が45.2%で開腹が43.2%(有意差なし)でした。

再発率に関しても、腹腔鏡グループで29.4%、開腹グループで28.2%とほぼ同等でした。

以上の結果より、結腸がんに対する腹腔鏡手術は、開腹手術と比較して長期の治療成績に差はありませんでした

まとめ

がんに対する腹腔鏡手術は、多くの施設で安全に行われるようになってきました。腹腔鏡手術は傷が小さく、痛みが少ない傾向にあり、入院期間が短く、社会復帰も早いというメリットがあります。さらに今回、大腸がんに対する腹腔鏡手術の長期成績が報告され、従来の開腹手術に比べて劣らないことが証明されました。

腹腔鏡による大腸がん手術は、安全性、低侵襲性(体への負担が少ないこと)に加え、根治性(がんを確実に切除できること)においても優れた手術であることが示されました。

大腸がんの手術を受ける場合には、腹腔鏡手術が可能かどうか、またそのメリットやデメリットについて医師とよく相談し、それぞれの患者さんにとって最も好ましい手術法を選択する必要があります。


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