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高血糖(糖尿病)が大腸がん患者の生存率を低下させる理由:新たな研究報告

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大腸がんは世界的に増加傾向にあります。

特に日本では近年大腸がん患者が急速に増加しており、最近の全国集計によると罹患数は男女合わせて第1位(2012年)、がん死亡数では第2位(2014年)になりました。

日本では同時に生活習慣病である糖尿病の罹患率も増加しています。厚生労働省の「患者調査」によると、糖尿病の患者数は300万人を超えました。

このため、大腸がん患者のなかにも糖尿病を合併している患者さんが多くなっています。

これまでの研究により、糖尿病(高血糖状態)は大腸がんの発症リスクを高めるだけではなく、生存率を低下させる因子であることがわかっています。しかし、その原因についは不明でした。

今回、新たな研究により、高血糖が大腸がんの進行を促進し、予後を悪化させるメカニズムのひとつが明らかとなりました。

高血糖が大腸がんにおよぼす影響についての研究結果

台湾の研究者らは、高血糖と大腸がんの予後・進行との関係について、患者および大腸がん細胞を用いて研究しました。

High blood sugar levels significantly impact the prognosis of colorectal cancer patients through down-regulation of microRNA-16 by targeting Myb and VEGFR2. Oncotarget. 2016 Apr 5;7(14):18837-50. doi: 10.18632/oncotarget.7719.

高血糖は大腸がん患者の生存率を低下

まずは520人の大腸がん患者を、血糖値が110mg/dl以上(高血糖グループ)と110mg/dl未満(正常血糖グループ)に分けました。そして、生存期間を比較しました。

その結果、正常血糖グループに比べ高血糖グループでは無再発生存期間(P < 0.0001)と全生存期間(P = 0.0017)ともに有意に短い(予後が悪い)という結果でした。

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また、さまざまな因子の中から、予後に直接関係するものを同定する多変量解析では、高血糖が無再発生存率および全生存率の低下に関わる独立した因子であることがわかりました。

高血糖(グルコース)が大腸がん細胞へ与える影響

次に、大腸がん細胞を使って高血糖が大腸がんに与える影響について実験を行っています。

3種類の大腸がん細胞に対して、グルコース(ブドウ糖)を直接大腸がん細胞に加え、細胞の増殖と遊走(運動)の変化を調べました。その結果、グルコースをがん細胞に与えると、がん細胞の増殖と遊走が刺激されました

つまり、高血糖によって大腸がん細胞の増殖と活動性が高まることが実験によって直接示されました。

高血糖が大腸がん細胞のマイクロRNAに与える影響

最後に、高血糖と大腸がんのマイクロRNAとの関係を調べました。

マイクロRNAとは、特定の遺伝子発現を抑制する効果を持つ非常に短い(21~25塩基程度の)一本鎖RNAです。がんでは様々なマイクロRNAが増加したり、低下していることが報告されています。

まず、高血糖(≧ 110mg/dL)の大腸がん患者では、正常血糖(< 110mg/dL)の大腸がん患者に比べて血液中のマイクロRNA-16が低下していることがわかりました。

さらに、大腸がん細胞にグルコースを与えると、このマイクロRNA-16の発現が低下しました。またこの結果、マイクロRNA-16が抑制しているMybとVEGFR2というがんを進行させる遺伝子の発現が増加しました。

つまり、大腸がんでは、高血糖によってマイクロRNA-16が低下し、その結果、いくつかのがんを促進する遺伝子の発現が高まることがわかりました。

これが大腸がん患者において高血糖(糖尿病)が予後を悪化させている理由の1つである可能性があります。

大腸がんと糖尿病を予防しましょう

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糖尿病は大腸がんの発症リスクを高めるだけではなく、大腸がんの予後を悪化させる可能性があります。

したがって、両者を予防すること、あるいは大腸がん患者では糖尿病を治療・コントロールすることが大切です。

日本生活習慣病予防協会によると、糖尿病の予防や治療には、①血糖値が高くなるようなことを控えること、そして、②血糖値が高くなりにくい体質に改善し、それを維持することが大切であるとのことです。

具体的には、肥満を防止し、体重を適正にコントロールすることと、歩行、体操、筋肉トレーニングなどの運動を積極的に行い、常日頃からだをよく動かすことです。

また最近では、糖質制限ダイエットが糖尿病の予防や治療に有効であることが示されはじめました。また糖質制限(ケトジェニックダイエット)はがんの予防や治療にも有効であることが報告されつつあります。

糖質制限ダイエットは糖尿病とがんの両方を予防(治療)に役立つ方法かも知れません!

詳しくは以下の記事をご参照ください。

参考:「すべてのがん患者さんへ!楽しくゆるい糖質制限食のすすめ」

参考:「ケトン食(ケトジェニックダイエット)が末期がんを救う:最新の研究結果」

参考:「主食・スイーツをあきらめない!がんサバイバーの糖質制限ダイエットを強力にサポート」


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  • この記事を書いた人

佐藤 典宏

医師(産業医科大学 第1外科 講師)、医学博士。消化器外科医として診療のかたわら癌の基礎的な研究もしています。 標準治療だけでなく、代替医療や最新のがん情報についてエビデンスをまじえて紹介します。がん患者さんやご家族のかたに少しでもお役に立てれば幸いです。

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