「膵癌では手術例数の多い施設で外科的治療を受けることが推奨されるか?」膵癌診療ガイドラインより

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膵臓がんは予後(治療成績)が悪いがんの代表格で、約70~80%の患者さんでは診断された時点で遠くの臓器に転移をしていたり、手術による切除が及ばないほど広がっています。

しかし、およそ20~30%の患者さんでは、がんが膵臓内にとどまり、切除が可能である段階で発見されます。手術によって完全にがんが除去された場合、根治(完全に治ること)の可能性があります。

もちろん術後に再発・転移を認めることも多いですが、膵臓がんに対して、唯一の根治および長期生存を期待できる治療法は外科切除であることは間違いありません。

しかし、膵臓がんの手術はからだに対する負担(侵襲)も大きく、術後に合併症がおこるリスクも高いため、手術を受ける施設(病院)については慎重に決めるべきです。

今回、「膵臓がんの手術について、どんな施設で受けるべきか?」について、最近改訂された膵癌診療ガイドライン2016年版を調べてみました。

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がんのガイドラインとは?

ガイドラインとは、がんの診療にあたる医師(または他の医療従事者あるいは患者さん)に、実際的な診療指針と最新の確かな情報を提供するための本です。

簡単に言うと、エビデンス(医学的根拠)に基づいた医療や、エビデンスはないが、将来につながりそうな試みなどについて体系的にまとめた「現時点でのがんの標準的な診断・治療の手引き」といえます。

現在、多くのがん(乳がん、肺がん、胃がん、食道がん、大腸がん、膵臓がん、など)についてガイドラインが発行されています。詳しくは、こちら(日本癌治療学会 がん診療ガイドライン)を参照ください。

また、乳がんや膵臓がんなど、いくつかの種類のがんでは患者さん向けに発行されたガイドラインもあります。われわれ医療従事者だけではなく、患者さんやご家族にとっても重要な情報が書かれていますので、ぜひご一読ください。

膵癌診療ガイドライン

「膵癌診療ガイドライン」は2006年に初版が出版され、以後何度か改訂されてきました。

時代の流れと共に、がんのエビデンスも変ります。ここ数年、膵臓がんの診断・治療についても新しい診断・治療法が報告され、それによってガイドラインの内容も大きく変りました。

さて、ここでは最新の膵癌診療ガイドライン(2016年版)から、膵臓がんの手術と施設についてみてみましょう。

RS2 膵癌では手術症例の多い施設で外科的治療を受けることが推奨されるか?

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ステートメント(質問に対する答え)ですが、

膵癌では、全死亡率の低下、在院死亡率の低下、手術関連合併症の低下、術後在院期間の短縮を考慮した場合、手術例数の多い施設で外科的治療を行うことを提案する(推奨の強さ:2、エビデンスレベル:B、合意率:100%)

ということでした。

つまり、「膵臓がんの手術を受けるなら、たくさん手術をやっている病院(これをhigh volume center: ハイボリュームセンターと言います)のほうが安全ですよ」ということです。

この結論は、いくつかの研究結果に基づいています。

症例数が1000例以上の観察研究や、これらの研究を統合したメタアナリシスでは、手術症例の多い施設では少ない施設に比べ、全死亡率が低下し、在院死亡率が低下し、術後在院期間が短縮しており、手術関連合併症も減少する傾向があるということが証明されています。

ただし、これらの研究の多くは海外からの報告であり、日本の医療現場に当てはまるかどうか分からないこと。また膵臓がんに対する切除術だけを対象にしたものではなく、他の疾患を含めた膵切除術全体で比較したものが多いことより、注意が必要です。

さらに手術が多い病院(high volume center)の定義が試験によって違うことなどの問題もあり、正しく評価できていない可能性もあります。例えば、膵臓がんの切除が年間10例以上の場合をhigh volume centerとする研究もあれば、膵頭十二指腸切除術が年間で28例以上とする研究もあり、まちまちです。

現在、わが国においても、全国の施設における症例の治療成績を集積しているNational Clinical Database(NCD)などの大規模なデータベースが整備されつつあります。今後、このデータベースによって、日本の施設における手術例数と外科治療の結果(死亡率や合併症率など)との関連が明らかとなるでしょう。

まとめ

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ガイドラインによると、「手術症例が多い施設では、全死亡率の低下、在院死亡率の低下、術後在院期間の短縮の効果が明らかに認められることより、膵臓がんの外科治療は手術が多い施設(high volume center)で行われることが提案される」となっています。

具体的には大学病院やがんセンターなどが好ましいということになります。

ただし、これは一般的な話であり、high volume centerでも腕のいい外科医が執刀するとは限りません。一方で、手術症例の少ない地方の病院でも経験豊富で腕のいい外科医がいることもあります。

膵臓がんの手術は、命にかかわる合併症の可能性があるため、施設および外科医(主治医)は慎重に選びましょう。


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