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野菜・果物をとりましょう!食物繊維は膵臓がんのリスクを大幅に低下させる

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膵臓がんは非常に予後(治療成績)が悪いがんであり、10年生存率はわずかに5%です。

最近では新しい抗がん剤やレジメン(投与の組み合わせ)の導入により、膵臓がん患者の生存率は少しずつですが改善傾向にあります。今後はさらに予後が改善すると期待されています。

しかしながら、現状ではひとたび膵臓がんと診断された場合には、完治はきびしい状況です。そこで、当たり前のようですが「まずは膵臓がんにならないこと」が最も重要です。近年の世界的な膵臓がん罹患率の増加を考えると、早急に何らかの対策(膵臓がん予防策)をとる必要があると考えられます。

今回、食事による繊維(ファイバー)の摂取と膵臓がんのリスクについて解説します。

食物繊維の摂取と膵臓がんリスクの関係

最近、Maoらは食事と膵臓がんについてのこれまでの疫学研究(最終的には14の研究報告を採用)を調査し、食物繊維の摂取が膵臓がんの発症リスクに与える影響についてメタ解析を行いました。

Dietary fiber intake is inversely associated with risk of pancreatic cancer: a meta-analysis. Asia Pac J Clin Nutr. 2017 Jan;26(1):89-96. doi: 10.6133/apjcn.102015.03.

その結果、繊維を多く摂取することは、膵臓がんのリスクをおよそ50%も低下させることが明らかとなりました(オッズ比 0.52)。

 

同様のメタ解析が2015年にも報告されており、ほぼ同様の結果を示しています。

Dietary fiber intake and pancreatic cancer risk: a meta-analysis of epidemiologic studies. Sci Rep. 2015 Jun 2;5:10834. doi: 10.1038/srep10834.

すなわち、1つのコホート研究を除き、13のケースコントロール研究において、食事による繊維の摂取は膵臓がんの発症リスクの低下(およそ45%の低下)を伴っていました。

これらの結果より、食物繊維をたくさんとることは膵臓がんのリスクを低下させる可能性が高いという結論でした。

しかしながら、すべてのデータは後ろ向き研究から得られたものであり、繊維と膵臓がん発生の因果関係を確実に証明するためには、今後、前向きの臨床研究が必要であると考えられます。

高繊維食が膵臓がんの発症リスクを低下させる理由

なぜ、食物繊維が膵臓がんの予防につながるのでしょうか?

実は、まだ明確な因果関係はわかっていません。しかし、以下に示す2つの可能性があると考えられています。

1.食物繊維が、糖尿病および膵臓がんの発生リスクのひとつであるインスリン抵抗性を改善する可能性

2.食物繊維が、おそらく酪酸塩(ブチラート)やプロピオン酸塩といった酵素産物を介して、膵臓がんの発生リスクである炎症を抑える可能性

繊維が膵臓がんの発生を抑えるメカニズムとして、これら(あるいはその他)のことが関係している可能性があります。

どのくらい食物繊維を摂ればいいの?

では、膵臓がんを予防するためにはどのくらい繊維を摂ればよいのでしょうか?

結論から言えば、摂取する繊維は多ければ多いほどいい(リスクが下がる)とのことです。とはいえ限界はありますが・・・

つまり、前述した研究の用量反応解析(繊維の摂取量と膵臓がんリスクとの関係)によると、一日の食物繊維摂取量が10g増える毎に、膵臓がんのリスクが12%減少するという結果でした(下図)。

繊維摂取量と膵癌リスク

Asia Pac J Clin Nutr. 2017 Jan;26(1):89-96. より引用(一部改変)

ちなみに、厚生労働省が推奨する繊維の摂取量は、成人では1日に18~20gとのことですので、20g以上は摂りたいですね

食物繊維の多い食品は、野菜(とくに根菜類)、果物、穀物、いも類、豆、きのこ、海藻などです。これらを毎食とれるように意識しながらバランスよく食べましょう。

どんな食物繊維を摂ればいいの?

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食物繊維には水溶性と不溶性があり、また色々な食べ物に含まれています。はたしてどんな食物繊維が膵臓がんの予防に最も効果的なのでしょうか?

2012年にAnnals of Oncology誌に報告された、繊維の摂取と膵臓がんリスクとの関係を調べたケースコントロール研究によると、繊維の種類については以下の結果でした。

Fiber intake and pancreatic cancer risk: a case-control study. Ann Oncol. 2012 Jan;23(1):264-8. 

■ 食物繊維のうち、水溶性繊維(オッズ比0.4)と不溶性繊維(オッズ比0.5)の摂取は、ともに膵臓がんの発生リスク低下と関連していました。

■ 繊維の種類別解析では、不溶性植物繊維のセルロース(穀物の外皮、いも類、ゴボウなどの根菜類に多い)リグニン(ふすま、イチゴ、梨、ラズベリー、豆類などに多い)がリスクの低下と関係してました。

■ フルーツの食物繊維が膵臓がんのリスク低下と関連していたのに対し、穀物の食物繊維はリスク低下との関連を認めませんでした。

以上より、特にフルーツ(おすすめはアボカドです)、いも類、根菜類がいいようです。

膵臓がん予防のために、毎日の食卓に意識して食物繊維をとるようにしましょう。

 


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  • この記事を書いた人

佐藤 典宏

医師(産業医科大学 第1外科 講師)、医学博士。消化器外科医として診療のかたわら癌の基礎的な研究もしています。 標準治療だけでなく、代替医療や最新のがん情報についてエビデンスをまじえて紹介します。がん患者さんやご家族のかたに少しでもお役に立てれば幸いです。

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