膵臓がんは早期発見が難しく、およそ8割は診断時に切除ができないほど進行しています(切除不能膵臓がん)。
切除不能膵臓がんに対しては、標準治療としてゲムシタビン(ジェムザール)を主体とした抗がん剤治療が行われていますが、その効果を予測する確立されたマーカーはありません。
抗がん剤によって引き起こされる好中球減少は、よくみられる副作用であり、時に投与量を減らす原因となります。一方で、この抗がん剤による好中球減少は、乳がん、子宮頸がん、膵臓がん、および卵巣がんなどにおける予後良好なサインとして報告されています。
つまり、抗がん剤による好中球減少は、その薬ががんに効いているというサインとして捉えることができます。
今回、膵臓がんに対するゲムシタビン治療による好中球減少の時期(タイミング)と予後との関係を調べた、非常に興味深い研究結果が報告されました。
抗がん剤治療による好中球減少のタイミングと予後との関係:膵臓がんにおける検討
Chenらは、進行膵臓がん患者に対して、初回治療としてゲムシタビン(ジェムザール)ベースの抗がん剤治療を行い、少なくとも1サイクルは治療可能であった134人を対象としました。
抗がん剤治療の内訳は、ゲムシタビン単独(およそ30%)、ゲムシタビン+S1(ティーエスワン)/カペシタビン、ゲムシタビン+nab-パクリタキセル(アブラキサン)などでした。
抗がん剤投与1日目と8日目、および7日おきに採血検査を行い、末梢血液中の好中球絶対数(absolute neutrophil count:ANC)が測定されました。
好中球減少はその時期によって、①早期好中球減少があった患者(2サイクル終了以前にANC<2.0×109 /Lとなった場合)、②早期好中球減少がなかった患者(ANC<2.0×109 /Lにならなかった、あるいは2サイクル終了時以降にANC<2.0×109 /Lとなった場合)の2つのグループに分類しました。
結果を示します。
以上の結果より、ゲムシタビン主体の抗がん剤治療によって早期に好中球減少をきたした患者さんの予後は、良好であることが示されました。
まとめ
好中球減少は、非常に一般的な抗がん剤の副作用です。多くは問題となりませんが、ひどい場合には発熱性好中球減少症(FN)を引き起こしたり、抗がん剤の投与量を減量(あるいは中止)しなければならなくなることもあります。
しかし、「副作用が強くでる患者さんには抗がん剤が効いている」ということを経験することもあり、実際に抗がん剤によって皮膚症状などの副作用がでると予後が良好であったとする報告があります。
今回の結果からは、「抗がん剤投与後に早期に好中球減少がおこること」は、予後良好のマーカーとして臨床的に有用である可能性が示されました。
抗がん剤の副作用は、(もちろん大歓迎ではありませんが)忌み嫌うばかりのものでもないようです。
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