膵臓がんは予後が悪い癌の代表格ですが、最大の原因は、診断された時にはすでに転移が認められ、切除ができないほど進行している患者さんが多いためです。
他の臓器などに転移しているステージ4の膵臓がん患者さんの場合、未だに余命(生存期間(中央値))は半年~1年未満です。一方、切除ができるステージの膵臓がんの場合、術後の抗がん剤治療を追加すると生存期間(中央値)は4年にせまるほど改善されてきました。
つまり、膵臓がんの場合、切除ができるかどうかで治療成績が大きく変わってくるのです。
最近、切除ができないがんに対して抗がん剤治療を行い、ステージをさげること(ダウンステージング)により、切除が可能になるという症例が増えてきました。
今回、ステージ4の膵臓がんに対し、抗がん剤治療でダウンステージングが得られ、切除ができた症例についての治療成績が海外から報告されました。
ダウンステージングとは?
ダウンステージング(downstaging)とは、抗がん剤治療などによりがんを小さくしたり、転移を消失させることにより、がんのステージ(病期)を下げることです。
がんがダウンステージされると、当初は切除手術が不可能だったものが可能になる場合があり、さらなる生存期間の延長が期待できます。
ステージ4膵臓がんのダウンステージングと切除手術後の治療成績
Downstaging in Stage IV Pancreatic Cancer: A New Population Eligible for Surgery? Ann Surg Oncol. 2017 May 17. doi: 10.1245/s10434-017-5885-4. [Epub ahead of print]
本研究は、イタリアの病院における転移性膵臓がん患者535人を対象としました。このうち、抗がん剤治療によってダウンステージングが得られ、切除手術ができた患者さん24人(4.5%)について解析しました。
■ 全例に肝転移を認め、その個数は1個(5人)、2個(5人)、および複数個(14人)でした。他の臓器への転移はありませんでした。
■ これら24人が受けた抗がん剤治療は以下のとおりです。
(1)ゲムシタビン(ジェムザール)単独(5人)
(2)ゲムシタビン+ナブパクリタキセル(アブラキサン)併用(3人)
(3)FOLFIRINOX(オキサリプラチン、イリノテカン、フルオロウラシル、レボホリナートカルシウム併用)療法(16人)
■ 原発巣(膵臓)の腫瘍の大きさは、31mmから19mmまで縮小していました(p < 0.001)。
■ 腫瘍マーカーのCA19-9は、596から18 U/mLまで減少していました(p < 0.001)。
■ 診断後、平均10ヶ月後に切除手術(膵頭十二指腸切除 14人と膵体尾部切除術 10人)を行っていました。
■ 組織学的に(顕微鏡検査によって)24人中20人(88%)でがんが完全に切除(R0)できており、また17%で抗がん剤の完全寛解がみられた。
■ 術後の補助化学療法は15人(63%)に行われていました。
■ 全患者における無病生存期間(DFS)は27ヶ月であり、全生存期間(OS)は56ヶ月(36~75ヶ月)でした。
以上の結果より、たとえ転移があるステージ4の膵臓がんでも、抗がん剤治療によってダウンステージが得られて切除が可能であった場合には長期の生存(なかには5年以上)が期待できるという結果でした。
まとめ
以前は転移性膵臓がんに対しては、緩和目的の抗がん剤治療のみが行われており、余命は6ヶ月前後と長期予後はほぼ期待できませんでした。
しかし、最近のFOLFIRINOX療法といった強力な抗がん剤のレジメン(組み合わせ)の登場により、転移がある膵臓がんでも切除手術が可能となるまでステージを下げることが可能なのです。
ステージ4の膵臓がんでもあきらめない!そういう時代になりつつあります。
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