何故がん患者さんは死ぬのか?がん末期の状況と実際の死因を医師が解説

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がんが進行すると、最終的には命を落とすことになります。しかし、何故がん患者さんは死ぬのでしょうか?直接的な死因は何なのでしょうか?

今回は、がん患者さんはいつ、どのようにして命を落とすのかについて考察します。

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がんで死亡する時期は?

がんはある臓器から発生し、徐々にまわりの臓器に広がったり、他の臓器に転移していきます。そして最終的には死を迎えます。

がんを告白して数ヶ月~1年以内で亡くなる芸能人の報道を目にすることもあり、「がんになったらあっという間に死んでしまう」という印象をお持ちのかたもいると思います。

では、がんが発生してから患者さんが死ぬまでにどのくらいの期間がたっているのでしょうか?

もちろん個人差はありますが、一般的には、がん細胞が腫瘍(かたまり)となり、大きく成長・転移し、最終的に死亡するまでには実は相当な時間がかかると考えられています

がんが発生してから死亡するまでの期間を予測する計算モデルが報告されています。

Evolution and dynamics of pancreatic cancer progression. Oncogene. 2013 Nov 7;32(45):5253-60. doi: 10.1038/onc.2013.29. Epub 2013 Feb 18.

この報告によると、がん細胞の遺伝子変異(がん細胞にみられる遺伝子配列の変化)のパターンを調べることにより、膵臓がんがどのくらいの期間で発生し、いつまわりに広がるがん(浸潤がん)に成長し、いつ転移して死亡に至るかを計算することができるとのことです(下図)。

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このモデルによると、がん細胞(あるいは前がん細胞)が発生してかたまり(いわゆるがん)になるまでにおよそ12年、さらにまわりの組織やリンパ管、血管にひろがる浸潤がんになるまでに7年、そして、最終的に他の臓器などに転移して死亡に至までにさらに3年かかるとのことです。

つまり、がんができて死亡するまでにはおよそ10年以上もかかるという計算になります。

これが、一般的に悪性度が高く、早く進行すると考えられている膵臓がんの場合ですので、他のがんなどではもっと長い経過をかけてがんが成長・進行すると予想されます。

がん患者さんの死亡原因は?

がんで死亡する直接の原因は色々あり、がんの部位(臓器)や患者さんの全身状態などによってさまざまですが、多くの場合、以下の状態が最終的な死因となります。

1.悪液質(カヘキシア)による栄養障害

カヘキシア(悪液質:あくえきしつ)とは、進行したがんによって引き起こされる代謝障害を伴う重度の骨格筋の萎縮と臓器の機能不全の病態です。

簡単に言うと、がんによる栄養・代謝障害で、いわゆるがんによる「激やせ」の状態です。これは、がんによって栄養が奪い取られ、食事や点滴で栄養を補給しても栄養状態が徐々に悪くなる合併症です。

多くのがん患者さん(とくに消化器のがん)は、この悪液質が原因となって死に至ります。

2.臓器不全

がんが生命を維持する臓器(肺、肝臓など)に転移し、その臓器が機能しなくなった場合に臓器不全で亡くなることになります。

例えば、がんが肺に転移し、肺の大部分にがんが広がった場合、あるいはがんによって胸に水がたまって十分な呼吸ができなくなった場合、臓器不全で死ぬことになります。

また、がんが肝臓に転移し、転移が大きくなって正常の肝機能の大部分が障害された場合や、がんが胆管をふさいで胆汁の流れがストップした場合、肝不全となって命を落とすことがあります。

また、最終的にはいくつかの臓器が同時に機能不全に陥りますが、これを多臓器不全(たぞうきふぜん)といいます。

3.感染症

がんが進行し、栄養障害が合併すると、体の免疫力(抵抗力)も低下してきます。このため、肺炎、腸炎や敗血症など感染症を合併することが多くなってきます。

とくに高齢のがん患者さんや、筋肉が衰えて嚥下(えんげ)障害(飲み込むことができなくなる)がある患者さんでは、肺炎になるリスクが高くなります。

感染症に対しては抗生物質などで治療しますが、効果がない場合には重症となり、死亡することがあります。

4.治療の合併症

がんそのものが原因ではなく、がんに対する治療の合併症によって死亡するケースもあります。例えば、がんに対する手術の合併症で死亡することもあります。

侵襲(からだへの負担)が大きな手術ではとくに死亡のリスクが高くなります。例えば、膵臓がんの手術の一つである膵頭十二指腸切除術の場合、手術が原因で入院中に死亡する確率が3%程度もあると報告されています。

また、抗がん剤や放射線治療の合併症が原因で死亡する可能性もあります。

5.オンコロジカル・エマージェンシー

オンコロジカル・エマージェンシー(Oncological emergencies)とは、がん患者さんにみられる、「悪性腫瘍またはその治療が原因でおこる、急性の生命をおびやかす病態」と定義されています。がんが進行することによって急に発症する合併症や、治療の副作用でおこる緊急事態のことです。早期に対応できない場合、死亡することも少なくありません。

直接の死因となるオンコロジカル・エマージェンシーには、以下のようなものがあります。

●好中球減少性腸炎(neutropenic enterocolitis: NE)

●播種性血管内凝固症候群(DIC)

●脳転移

●急性消化管出血

●高カルシウム血症

●肺血栓塞栓症

以上です。

オンコロジカル・エマージェンシーについてはこちらの記事をどうぞ。

このように、がん患者さんが死亡する直接の原因は色々あります。

急に命をおびやかすオンコロジカル・エマージェンシーのような病態もありますが、多くの場合はカヘキシアなどゆっくりと進行する栄養障害が引き金となります

つまり、進行がんや転移性のがんであると診断されたとしても、すぐに死亡するわけではありません。逆にいうと、この悪液質(カヘキシア)を予防(あるいは治療)することで、がんがあっても長期に生存することも可能なのです。

カヘキシアの治療についてはこちらの記事もどうぞ。


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