血中の変異KRASレベルが膵臓がんに対する抗がん剤の反応を早期に予測:新たなバイオマーカーとして期待

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膵臓がんに対する化学療法(抗がん剤治療)は、FOLFIRINOX(フォルフィリノックス)やゲムシタビン+ナブ・パクリタキセル(アブラキサン)併用療法などの導入により、予後の改善が期待されています。

一方で、これらの抗がん剤による副作用も強い傾向があり、効果をできるだけ早期に判定し、効果が期待できない場合には、無意味な治療に伴う副作用に苦しむことを避けるなどの対策が必要となってきます。

現在、腫瘍マーカーであるCA19-9が化学療法の効果予測に使われていますが、その感度および特異度に関しては限界があります。したがって、膵臓がんに対する抗がん剤治療の効果をより正確に予測できる新たなバイオマーカーの確立が必要です。

膵臓がんでは多数の遺伝子に異常があることが明らかとなってきましたが、このうちKRAS遺伝子の変異が膵臓がんの90%以上にみられることより、診断・治療におけるバイオマーカーとして研究がすすめられています。

今回、膵臓がん患者における血中遊離DNA(血液中にもれだして循環しているがん由来のDNA)変異KRASが、抗がん剤治療の反応を予測する新たなバイオマーカーとなる可能性が報告されました。

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膵臓がんにおける遺伝子異常

膵臓がんは「遺伝子病(genetic disease)」と呼ばれるほど、遺伝子異常が多いがんとして知られています。つまり、多くのがんに関連した遺伝子に傷がついていることが分かっています。

このうち、とくに下に示す4つの遺伝子に変異(配列の異常)が集中していることがわかっています。

遺伝子名 役割 異常の頻度 主な働き
KRAS がん遺伝子 90-95% 細胞の増殖促進、細胞死の抑制など
CDKN2A/p16 がん抑制遺伝子 80-90% 細胞周期、老化の調節
TP53 (p53) がん抑制遺伝子 75% DNA損傷チェックポイント(細胞周期停止、アポトーシス導入)
SMAD4 (DPC4) がん抑制遺伝子 50-55% 細胞増殖の抑制など

このうち、KRAS遺伝子の変異は膵臓がんで最も多い遺伝子異常であり、およそ90~95%にみられます。

KRAS遺伝子は「がん遺伝子」と呼ばれ、がんのスピードを速めるアクセルの役目をはたす遺伝子です。つまりKRAS遺伝子に変異がおこると、アクセルが踏みっぱなしの状態となり、車が暴走するようにがんがどんどん進行するのです。

このKRAS変異は、その頻度の高さより膵臓がんにおけるバイオマーカーの候補として期待されており、診断や治療に関する様々な研究が行われています。

膵臓がんに対する抗がん剤治療の効果判定バイオマーカーとしての、血中遊離DNAにおける変異KRASの有用性

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Early changes in plasma DNA levels of mutant KRAS as a sensitive marker of response to chemotherapy in pancreatic cancerSci Rep. 2017 Aug 11;7(1):7931. doi: 10.1038/s41598-017-08297-z.

本研究は、血中遊離DNAの変異KRASが、膵臓がんの抗がん剤治療の効果判定のバイオマーカーとして有用かどうかを調べたものです。

対象は、抗がん剤治療を受けている27人の転移性または局所進行膵臓がん患者(平均年齢68歳)です。

抗がん剤治療のレジメンは、FOLFIRINOXが13人 (52%)で、 ゲムシタビン+ナブ・パクリタキセル(アブラキサン)併用が14人(48%)でした。

治療の前後(治療前と治療15日目)で3mlの血漿をサンプリングし、遊離DNAが抽出されました。ちなみに遊離DNAとは、がんから血液中にもれだして循環しているDNAのことです。

高感度のPCR(特定のDNA断片を増幅する方法)によって、変異型KRASのコピー数(量)を調べました。

結果を示します。

■ 27人中19人(70.4%)が治療前に、血中遊離DNA中の変異KRASが陽性でした。
■ この19人のうち、変異KRASレベル抗がん剤治療後(15日目)増加していたグループ(増加群)減少(または安定)していたグループ(減少群)に分けたところ、無増悪生存期間(増加群2.5ヶ月 vs 減少群7.5ヶ月, P = 0.03)および全生存期間(増加群6.5ヶ月 vs 減少群11.5ヶ月, P = 0.009)ともに減少群で増加群より有意に延長していました(下図)

変異KRASと抗がん剤感受性DFS

■ 一方で、他の因子/バイオマーカー(性別、年齢、ステージ、パフォーマンスステータス、腫瘍の部位、治療前のCA19-9値)は、どれも無増悪生存および全生存と関連はありませんでした。
■ いくつかの症例では、変異KRASの早期の増加がCA19-9よりも鋭敏に腫瘍の進行(PD)を予測することができました

以上の結果より、膵臓がん患者における遊離DNAの変異KRASは、抗がん剤治療の効果が期待できる症例では減少(または安定)し、一方、効果が期待できない(増悪する)症例では増加する傾向にあるとの結果でした。

したがって、血中の変異KRASレベルは、抗がん剤への治療反応を比較的早期に予測できるバイオマーカーとして期待できると結論づけています。

このがん細胞からの遊離DNAを抽出して遺伝子の検査を行う方法はリキッドバイオプシーとも呼ばれ、体液を利用した侵襲の少ない方法です。がんの診断や治療効果判定の検査法として今後ますます普及すると考えられています。

さらに大規模な臨床試験による検証が必要ではありますが、このようなバイオマーカーが早く臨床的に使用できるようになれば良いと思います。


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