膵臓がんの手術:膵体尾部切除後の合併症である膵液瘻(すいえきろう)の危険因子と予防策

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膵体尾部切除(尾側膵切除)は、膵臓がんに対する標準術式のひとつですが、合併症が比較的多い手術です。

とくに、膵臓を切った端などから膵液がもれる合併症である膵液瘻(すいえきろう)は、最も頻度が高く、また時として入院期間が長引いたり、命をおびやかす可能性もある重大な合併症です。

膵液瘻の危険因子をさぐり、この合併症が起こらないようにする手段(予防策)の確立が必要です。

今回、全世界の施設からなる国際的な研究チームによる2000例を越す症例の検討により、膵体尾部切除術後の膵液瘻の危険因子、予測モデル、および予防策の解析結果が報告されました。

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膵体尾部切除とは?

膵体尾部切除(尾側膵切除術)は、がんなどの病変が膵臓の体部から尾部に存在する場合の標準的な手術です。膵臓がんでは、一般的にリンパ節の切除の意味で脾臓(ひぞう)も合併切除します(下図)。

Distal pancreatectomy

最近では、ステイプラという器械を使い、ホッチキスのようなもので膵臓の端をふさぎながら切ることが一般的となってきました。

この手術後の合併症として最も多いのは膵液瘻(すいえきろう)です。これは、膵臓(ほとんどの場合、膵臓を切った端)から膵液がもれるというもので、まわりの組織を溶かしてしまうために膿瘍(のうよう)という膿(うみ)のたまりができたり、血管から出血したりすることもあります。

これまでにも数多くの研究によって、膵液瘻の危険因子や予防策などが報告されてきましたが、膵液瘻を劇的に減らすまでには至っていません。

膵体尾部切除後の膵液瘻の危険因子および予防策(緩和策)について

Risk Factors and Mitigation Strategies for Pancreatic Fistula After Distal Pancreatectomy: Analysis of 2026 Resections From the International, Multi-institutional Distal Pancreatectomy Study Group. Ann Surg. 2017 Aug 29. doi: 10.1097/SLA.0000000000002491. [Epub ahead of print]

本研究は、「膵体尾部切除術」の国際研究チームによるもので、10施設、52の外科医によって行われた2026例膵体尾部切除の症例が対象となりました。

切除の適応は、囊胞(のうほう)性膵腫瘍(30.6%)、膵臓がん(27.8%)、神経内分泌腫瘍(19.1%)などでした。

また、腹腔鏡手術やロボット手術など、低侵襲手術が27.9%(残りは通常の開腹手術)でした。

これらの症例について、膵液瘻(国際診断基準に従った診断)の頻度、危険因子、および予防策について調査しました。

結果を示します。

■ 臨床的に問題となる膵液瘻306例(15%)にみられました。
■ 膵液瘻の危険因子として、以下のものが特定されました。
  • 年齢(60歳未満)
  • 肥満(高いボディマスインデックス(BMI))
  • 栄養状態の不良(低アルブミン血症)
  • 硬膜外麻酔がない
  • 神経内分泌腫瘍または良性の疾患
  • 脾臓の合併切除
  • 血管の合併切除
■ 一方、これらの因子を使った膵液瘻の予測モデルは、膵液瘻あり・なしを鑑別するパワー不足(C統計量(c-statistic)0.654)のため、よいモデルではないと判断されました。
■ 多変量解析(予後に影響する複数の因子を同時に解析し、最も関連の深いものを同定する方法)の結果では、手術した病院膵臓を切る方法主膵管の縫合閉鎖ステイプル(膵臓を切る器械)のサイズ膵臓の切った端をふさぐための種々のパッチや薬などは、膵液瘻の発生リスクと関係ありませんでした
■ 多変量モデルの解析では、腹腔内ドレーンの留置の有無(ドレーンの留置は膵液瘻のリスクを高めるが、膵液瘻の重症度を軽減する)が膵液瘻の独立した危険因子となりました。

以上の結果より、今回の大規模な膵体尾部切除術症例の解析からは、いくつかの危険因子が特定されましたが、結果的には膵液瘻の発生を予測する信頼できる方法はないという結論でした。

つまり、膵体尾部切除術後の膵液瘻の発生には様々な因子が複雑に関与しており、単純な公式ではリスクを予測できないということだと思います。

膵臓を切る方法・器械など手術の工夫についても、膵液瘻を確実に減らす方法はまだ確立されていません。

しかし、過去の報告にもあるように、肥満低栄養(低アルブミン血症)など、患者側の因子が膵液瘻の危険因子であることより、手術前に少しでもこれらを改善することが重要であると考えられます。

術前の低栄養状態を改善する方法については、以下の記事をどうぞ。


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