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炎症を引き起こす食べ物は免疫力を弱めることで大腸がんリスクを高める:最新の研究報告

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これまでの研究により、特定の食べ物(食事のパターン)によって腸に炎症が引き起こされ、大腸がんを発症するリスクが増加することが明らかとなってきました。

例えば、加工肉や赤身肉は大腸がんのリスクを高めることが分かっていますが、これらをよく食べる人では血液中の炎症マーカーが上昇していることが報告されています。

一方で、炎症を引き起こす食事が、どのように大腸がんのリスクを高めているかについてはわかっていません。

今回、海外の研究チームによる大規模なデータベースの解析により、炎症を引き起こす食事パターンが、がんに対する免疫力を低下させることで、大腸がんの発症リスクを高めている可能性があることが示されました

炎症を引き起こす食べ物、抑える食べ物

さて、まずは今回の研究でも使われている、経験的な炎症性食事パターン(Empirical Dietary Inflammatory Pattern: EDIP)について解説します。

これは、もともと2016年にTabungらが提案したスコアで、血液中の3つの代表的な炎症のマーカーである、インターロイキン-6、C反応性タンパク(CRP)、腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor)αレセプタ-2(TNFαR2)の数値との相関関係から、炎症を引き起こす食べ物と、炎症を抑える食べ物に分類し、スコア化したものです。

Development and Validation of an Empirical Dietary Inflammatory Index. J Nutr. 2016 Aug;146(8):1560-70. doi: 10.3945/jn.115.228718. Epub 2016 Jun 29.

以下に炎症を引き起こす食べ物(9つのカテゴリー)と炎症を抑える食べ物(9つのカテゴリー)を表にまとめます。

分類 具体的な食べ物の例
炎症性(炎症を引き起こす)  
1.加工肉 ホットドック、加工肉、ベーコン
2.赤身肉 ハンバーガー、ビーフ(ポーク)サンドイッチなど
3.臓器肉 肝臓 
4.他の魚 ツナ缶、エビ、 ロブスタ-、ホタテ貝など
5.他の野菜 コーン、ミックスベジタブル、なすび、セロリなど 
6.精製穀物 白パン、白米、ベーグル、マフィンなど 
7.高カロリー飲料 コーラ、ペプシなど 
8.低カロリー飲料 低カロリーコーラなど 
9.トマト トマト、トマトジュース、トマトソース 
抗炎症性(炎症を抑える)  
1.ビール ビール、ライトビール 
2.ワイン 白ワイン、赤ワイン 
3.お茶 お茶 
4.コーヒー コーヒー、カフェインレスコーヒー 
5.緑黄色野菜 にんじん、サツマイモ、冬カボチャ 
6.緑色葉野菜 ほうれん草、レタスなど 
7.スナック ポテトチップス、ポップコーン、クラッカー 
8.フルーツジュース アップルジュース、オレンジジュース、グレープジュース 
9.ピザ ピザ 

上記の分類にしたがって炎症を引き起こす食べ物(例えば加工肉)には高い点数をつけ、炎症を抑える食べ物(例えばビール)には低い点数をつけます。

そして、合計したのものがEDIPスコアであり、食事による炎症の程度を数値で反映したものになります。

このEDIPスコアが高い場合には「炎症を引き起こしやすい食事パターン」であり、逆に低い場合には「炎症を引き起こしにくい食事パターン」であるといえます。

炎症性食事パターンと免疫応答によって分類される大腸がんの発生リスクとの関係

Association Between Inflammatory Diet Pattern and Risk of Colorectal Carcinoma Subtypes Classified by Immune Responses to Tumor. Gastroenterology. 2017 Aug 30. pii: S0016-5085(17)36078-X. doi: 10.1053/j.gastro.2017.08.045. [Epub ahead of print]

本研究は、炎症性の食事パターンと大腸がんの発生リスクとの関係を、免疫応答(immune response)に注目して調査したものです。

2つの前向きコホート研究のデータベースに登録されている124,433人において、食事についてのアンケート調査から、上記の経験的な炎症性食事パターン(EDIP)スコアを算出しました。

観察期間中に、1311人に大腸がん(結腸・直腸がん)が発症していました。

これらの患者の大腸がんの組織について、リンパ球の浸潤(腫瘍の周囲や腫瘍内へ入り込んだリンパ球の存在)を調べ、腫瘍のまわりにリンパ球の浸潤が無い、少ない、中間、多い大腸がんに分類しました(下図)。

リンパ球浸潤と大腸がん

つまり、(図の左側のように)腫瘍のまわりにリンパ球の浸潤が無い(あるいは少ない)がんは、免疫細胞ががんを攻撃するはたらき(免疫力)が低下しており、逆に(図の右側のように)腫瘍のまわりにリンパ球の浸潤が多いがんは、免疫力が強い状態を反映していると考えられます。

EDIPスコアと、これらのリンパ球で分類した大腸がんのリスクについて関連を調べました。

結果を示します。

■ 高いEDIPスコアとすべての大腸がんのリスク増加の間には有意な正の相関があった(P = 0.02)。
■ 高いEDIPスコアは、腫瘍のまわりにリンパ球の浸潤がない(または少ない)大腸がんのリスク増加と相関していた(P < 0.001)
■ 一方、高いEDIPスコアは、腫瘍のまわりにリンパ球が多い(または中間の)大腸がんのリスクとは相関を認めなかった。

つまり、炎症を引き起こす食事パターンが、がんに対する免疫力(リンパ球のがんに対する反応)を低下させることで、大腸がんの発症リスクを高めている可能性があることが示されました

食べ物による発癌にも炎症と免疫が密接に関係していることを示唆する貴重なデータだと思います。

 


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  • この記事を書いた人

佐藤 典宏

医師(産業医科大学 第1外科 講師)、医学博士。消化器外科医として診療のかたわら癌の基礎的な研究もしています。 標準治療だけでなく、代替医療や最新のがん情報についてエビデンスをまじえて紹介します。がん患者さんやご家族のかたに少しでもお役に立てれば幸いです。

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