転移性肝がんに対して陽子線による定位放射線治療(SBRT)が有効!第2相臨床試験

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消化器がんの肝臓への転移に対する治療は難しく、いぜんとして予後不良であると考えられています。

転移が少数(オリゴメタスターシス)で、しかも肝臓にだけ限局している場合には、外科切除によって根治できる可能性があります。しかしながら、他の部位にも転移を認める例や、手術のリスクの高い患者さんでは、切除ができないこともあります。

体幹部定位放射線治療(SBRT; stereotactic body radiotherapy)は、放射線を多方向から標的となる病変に集中して照射する治療法です。従来の放射線治療よりも多い線量を、より少ない回数(4~10回)で照射できるため、短期間で高い効果が期待できる治療として注目されています。

さらに最近、粒子線(重粒子線や陽子線)による新たな放射線治療が導入され、さまざまながんに対してその有効性が報告されています。

今回、転移性肝がんに対する陽子線によるSBRTの有効性について、海外の第2相臨床試験の結果が報告されました。

この陽子線によるSBRTは副作用が少なく、また腫瘍の進行を阻止するのに非常に効果的であり、比較的大きな肝転移に対してもコントロール可能であることがわかりました。

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体幹部定位放射線治療(SBRT)とは?

SBRTとは、従来の放射線治療とは異なり、多方向(6~8方向)から一点に集中して放射線を当てる比較的新しい治療法です。

通常の放射線治療よりも多くの線量を当てることができ、高い治療効果が期待できると同時に、がんに対してピンポイントに放射線を当てることができるため、正常組織へのダメージが少なく、副作用が少ないとされています。

主な適応疾患は、比較的小さな(直径が5cm以下の)肺がん(原発および転移性)、肝臓がん(原発および転移性)などです。

陽子線治療とは?

がん治療に利用される放射線は、大きく光子線と粒子線の2つに分けられます。

光子線とは電磁波のことで、X線やガンマ線など一般的に放射線治療に利用されています。一方、粒子線とは水素や炭素の原子核といった粒子を利用した放射線のことです。

このように非常に小さな粒子を用いた放射線治療をまとめて粒子線治療と呼んでおり、水素を用いる場合は陽子線治療、それよりも重い粒子(炭素イオン)を用いる場合は重粒子線治療と呼ばれています。

陽子線は体内に照射されると、正常な細胞にほとんど影響することなくがん細胞に到達し、がん細胞の核の中にあるDNAを攻撃します。陽子線により損傷を受けたがん細胞は、死滅し、増殖できなくなります。

陽子線治療のメリットとして、侵襲(体への負担)の低さがあげられます。すなわち、外科手術が困難な全身状態の悪い症例や、高齢の患者さんに対しても、比較的安全に治療を実施することができます。また手術による切除と違って臓器の機能が温存されるため、生活の質(QOL)を良好に維持することができます。

一方、陽子線治療のデメリットとしては、小児の固形がん(一定の条件に合うもの)に対してのみ保険適応であることより、他の多くのがんでは治療費が全額自己負担(1か所につき約300万円)となることです。

転移性肝腫瘍に対する陽子線によるSBRTの有効性:第二相臨床試験

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今回、アメリカから転移性肝腫瘍に対する陽子線SRBTの有効性に関する臨床試験の結果が報告されました。

Phase II Study of Proton-Based Stereotactic Body Radiation Therapy for Liver Metastases: Importance of Tumor Genotype. J Natl Cancer Inst. 2017 Sep 1;109(9). doi: 10.1093/jnci/djx031.

対象は、多発の肝細胞がんを含む、転移性肝腫瘍の患者さんです。肝臓以外に転移病変がないこと、あるいは、あっても3ヶ月間は進行していないことが条件となりました。

30~50グレイ相当の陽子線をSBRTによって5回に分けて分割照射しました。

全体で89人が評価可能であり、原発腫瘍は大腸がん34人、膵臓がん13人、食道・胃がん12人、他30人)でした。

腫瘍のサイズは2.5cm(中央値)、放射線用量は40グレイ(中央値)でした。

結果を示します。

■ 全患者における生存期間の中央値は30.1ヶ月(範囲、14.7~53.8ヶ月)でした。
■ 重大な(グレード3~5の)副作用はみられませんでした。
■ 1年および3年局所コントロール率(照射部位からがんが再発または再燃しない率)は、それぞれ71.9%61.2%でした。
■ 大きな腫瘍(6cm以上)においても、1年局所コントロール率は73.9%と高い治療効果が得られました。
■ 遺伝子変異との関係では、KRAS遺伝子の変異がある腫瘍では局所コントロール率が低い(つまり放射線が効きにくい)という結果でした。
■ またKRASおよびTP53(p53)の両方とも変異を認める腫瘍はとくに放射線に対して抵抗を示し、1年局所コントロール率はわずかに20.0%(その他すべてでは69.2%)でした。

まとめ

転移性肝腫瘍に対する陽子線によるSBRTは非常に有効な治療法であり、1年局所コントロール率は70%以上、生存期間(中央値)が30ヶ月(2年以上)という結果でした。

また、6cm以上の大きな腫瘍に対しても有効であることが示されました。

一方で、KRASTP53など遺伝子変異を認める腫瘍では効果が低くなることより、今後はこれらの腫瘍に対する対策が必要と考えられます。


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コメント

  1. まりん より:

    ブログ記事をいつも拝読しております。

    放射線治療の進歩はよく指摘され、手術と同等の治療成績を望めるとも言われているようです。
     この臨床研究の結果は、遺伝子検査を踏まえた治療法の選択を示唆しているとも言えそうです。ここ日本では先進医療の扱いですし、高額な医療費を要します。遺伝子検査も実施機関は限られ、また検査対象も幅があります。
     こうした環境下では、とりあえず遺伝子異常如何で期待する治療効果が得られないかもしれないことを踏まえて、治療選択をしていくことになるのでしょうか?

     また、陽子線ではなく、より殺傷能力の高い重粒子線ではどうなるのかは気になるところです。

    いつも有用な配信をありがとうございます。

    • satonorihiro より:

      まりん様

      貴重なコメントありがとうございます。
      粒子線は日本では先進医療あるいは完全な自費診療ですが、このように海外の一流ジャーナルから粒子線治療の有効性について報告されていることより、効果があることは確かでしょう。
      またおっしゃるように重粒子線の効果も期待できると思います。
      遺伝子検査についてはまだまだ研究段階で、どのように臨床で使っていくのか方向性も定まっていません。
      今後の日本での動向を見守りたいと思います。

      佐藤