糖尿病の治療薬と乳癌の予後との関係:メトホルミン(メトグルコ)による再発率、死亡率低下

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近年、日本における糖尿病患者は増加の一途をたどっています。

糖尿病はそれ自体で死亡の原因になりますが、様々な種類のがんの発症率を高めることがわかっています。

例えば、国立がん研究センターの調査によると、糖尿病の既往がある人では、がん(胃がん、膵臓がん、結腸がん、肝臓がん、乳がん、卵巣がん等)になる確率が20~30%も増えることがわかっています。

また、一部のがんでは、糖尿病があるとがんの予後(治療成績)が悪くなることを示すデータもあります。

たとえば、糖尿病にかかったことがある乳がん患者は、生存期間(全生存期間および無再発生存期間)が短くなることが示されています。

関連記事:糖尿病は乳がん患者の予後(生存率)を悪化させるのか?最新のメタアナリシスより

さらに、糖尿病の治療法(治療薬)も、がんの発症率や生存率(予後)に影響を与えることが話題となっています。たとえば一般的な糖尿病の治療薬であるメトホルミンが、乳がんの発症リスクを低下させることが報告されています。

しかしながら、糖尿病の治療法と乳がん患者の予後(生存率)との関係についてはよくわかっていません。

今回、米国の大規模データベースの解析により、糖尿病の治療法(メトホルミン、スルホニル尿素薬、インスリン)と乳がん患者の生存率との関係が明らかにされました。

この結果によると、メトホルミンは乳がんの死亡リスクを低下させ、逆にスルホニル尿素薬やインスリンは死亡リスクを高めるということです。

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糖尿病の治療薬

メトホルミン

商品名)メトグルコ、メトホルミン塩酸塩錠など

ビグアナイド系の血糖降下薬で、インスリンに対する感受性を高め、おもに肝臓での糖分の生成を抑えることで血糖を下げる薬です。

スルホニル尿素薬(SU薬)

(商品名)オイグルコン、ダオニール、アマリールなど

インスリンを合成する膵臓のβ細胞に働き、インスリンの分泌を促進させる薬です。

インスリン製剤

(商品名)ノボラピッド、ペンフィル、ノボリン、ヒューマリン、ヒューマログ、トレシーバ、ランタスなど

インスリンそのものを注射製剤にしたもので、血糖値を下げる薬です。作用時間によって、(1)超速効型、(2)速効型、(3)中間型、(4)混合型、(5)持効型に分類されています。

この他にも、インクレチン関連薬、DPP-4阻害薬、α-グルコシダーゼ阻害剤、チアゾリジンジオン誘導体など、さまざまな種類の糖尿病治療薬があります。

早期乳がん患者における糖尿病治療とがん生存率との関係

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Diabetes treatments and risks of adverse breast cancer outcomes among early stage breast cancer patients: A SEER-Medicare analysis. Cancer Res. 2017 Sep 21. pii: canres.0687.2017. doi: 10.1158/0008-5472.CAN-17-0687. [Epub ahead of print]

米国立癌研究所(NCI)のSEER(Surveillance, Epidemiology and EndーResults)データベースに登録された、14,766人の乳がん患者を対象とした後ろ向き研究です。

乳がん診断後に、糖尿病に対してどんな治療薬(メトホルミン、スルホニル尿素薬(SU薬)、インスリン、あるいは他の薬剤)を使用していたかについて調査しました。

これらの使用薬剤と、二次性乳がんの発症、乳がんの再発、および乳がんによる死亡との関係を調べました。

結果を示します。

■ 14,766人の乳がん患者のうち、観察期間中の二次性乳がんの発症、乳がんの再発、および乳がんによる死亡者数はそれぞれ791人、627人、および237人であった。
■ メトホルミンを使用していた乳がん患者(2,558人)では、二次性乳がんの発症率、乳がんの再発率、および乳がんによる死亡率がそれぞれ28%、31%、および49%低下していた
■ 一方、スルホニル尿素薬またはインスリンを使用していた患者では、乳がんによる死亡率がそれぞれ1.49倍と2.58倍に増加していた

以上の結果より、メトホルミンは二次性乳がんの発生率、乳がんの再発率および乳がんによる死亡率を低下させ、スルホニル尿素薬やインスリンは乳がんによる死亡率を高めるという結果でした。

糖尿病の治療薬が、乳がんの予後(死亡リスク)や二次性乳がんの発生に影響をおよぼすことをはじめて示した研究結果です。

本研究は後ろ向き研究であるため、乳がんサバイバーにおける糖尿病の治療としてメトホルミンが最良であるかどうか、また糖尿病がない乳がん患者においてもメトホルミンの使用が有益かどうかについては、さらなる研究が必要であるとしています。

いずれにせよ、乳がん患者さんの糖尿病の治療においては、可能であればメトホルミンを第1選択として使用するのが妥当であると考えられます。


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コメント

  1. くま より:

    糖尿病に対してメトホルミンはアメリカではポピュラーですが(妻の国フィリピンでもふつうこれです)、日本で処方してくれる医者はあまりいないと思います。実際のところ、最近はDPP-4阻害薬がほとんどではないかと思います。何か理由があるのでしょうか?副作用とか製薬会社の思惑とか??がん対策には糖質制限が最善と私は信じていますが、このあたりについても医学的な知見を教えていただきたいです。

    • satonorihiro より:

      くま様

      コメントありがとうございます。
      たしかに日本ではメトホルミンはあまり処方されていません。
      メトホルミンは古い薬で、1950年代から日本で使われていたそうですが、1970年代に乳酸アシドーシスという重大な副作用が問題となり、その結果日本ではあまり処方されなくなったとのことです。
      ところがメトホルミンはとても安全な薬で、腎機能が悪い患者さん以外では副作用の乳酸アシドーシスもほとんどないとのことです。
      ですので風評被害といったところでしょうか?

      また、最近では糖質制限食が糖尿病だけでなく、がんの進行をおさえるのに有効であると考えられています。
      わたし自身もがん患者さんには(ゆるい)糖質制限をおすすめしています。

      関連記事:すべてのがん患者さんへ!楽しくゆるい糖質制限食のすすめ(http://satonorihiro.xyz/post-471/)

      今後ともご意見やご感想を聞かせていただければ幸いです。
      よろしくお願い申し上げます。

      佐藤