膵臓がんの手術後に早期に再発する人としない人の違いとは?

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また膵臓がん(膵癌)で著名人が亡くなりました

膵臓がんであることを公表し、治療を続けていた沖縄県の翁長雄志(おながたけし)知事(67歳)が、8月8日午後6時43分、浦添総合病院で死去しました。

翁長氏は、4月に人間ドックを受けた際に膵臓に腫瘍が見つかり、確定診断のための切除手術を受けたとのことです(翁長氏は、胃の全摘手術を受けていたため、超音波内視鏡による細胞の検査などができなかったと考えられます)。

しかし、その後、肝臓への転移などが見つかり、抗がん剤治療を受けていたそうですが、8月7日より(おそらく肝転移の進行による肝不全により)意識混濁となっていたとのことです。

切除手術を受けてから、わずか数か月しかたっていませんが、膵臓がんではこのように術後早期に再発(転移)する例もめずらしくありません

今回は、膵臓がんの切除後の再発パターンと、最近報告された論文による「膵臓がんの手術後にすぐ再発する人としない人の違い」について解説します。

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膵臓がん手術後の再発パターン

膵臓がんの手術後の再発パターンには、大きくわけて3つあります。

1.血行性転移

一つ目は、血行性の転移です。

これは、がん細胞が血管の中に入り込み、血液のながれにのって遠くの臓器(肝臓、肺など)へたどりつき、そこで大きくなることです。

膵臓がんの場合、一番多いのは、肝臓への転移です。

術前の検査では、肝臓や肺などをチェックし、あきらかな転移がないことを確認して手術をしますが、この時点で画像検査でみえない小さな転移がかくれている可能性は否定できません。

翁長氏の場合も、手術を受けた時点ですでに肝臓への転移が存在していたと考えられます。

2.局所再発

切除で取りきれなかった局所のがんや、近くのリンパ節などに潜んでいたがんが、術後に大きくなる再発のパターンです。

一般的に、切除をした部位にかたまりとして出現したり、近くのリンパ節が大きくはれたり、あるいは動脈に沿った組織のかげ(軟部陰影:なんぶいんえい)が大きくなってきます。

3.腹膜播種(ふくまくはしゅ)

がん細胞が、腹腔内(腹膜)にパラパラとちらばったように転移するパターンです。播種(はしゅ)が小さな初期の段階では、画像検査ではわからないことが多いです。

術後の検査で、お腹の中(とくに骨盤など)に「かたまり」がみつかったり、腹水がたまってわかることがあります。

進行すると、難治性腹水を引き起こしたり、腸閉塞を併発することもあります。

膵臓がんの再発は、どのパターンが最も予後が悪いのか?

では、どの再発パターンがもっとも予後が悪い(余命が短い)のでしょうか?

最近、膵臓がんのハイボリュームセンター(たくさん手術している病院)として有名な、米国ジョンズホプキンス大学医学部から、膵臓がん術後の再発様式と予後(生存期間)との関係が報告されました。

Implications of the Pattern of Disease Recurrence on Survival Following Pancreatectomy for Pancreatic Ductal Adenocarcinoma. Ann Surg Oncol. 2018 Aug;25(8):2475-2483. doi: 10.1245/s10434-018-6558-7. Epub 2018 Jun 14.

この研究では、膵臓がんの切除例877例を追跡調査し、662例(75.5%)の再発例について、予後を調査しました。

その結果、最も予後の悪い再発パターンは、「複数の部位の再発」であり、生存期間(中央値)は4.7か月でした。続いて、「肝臓再発のみ」の生存期間が7.2か月でした。
予後が比較的よかった再発パターンは、「局所再発のみ(9.7か月)」「肺再発のみ(15.4か月)」でした。

以前の記事でも紹介しましたが、膵臓がんの肺への転移はオリゴメタ(少数転移)である可能性があり、他の部位への転移と比べやはり予後がいいようです。

膵臓がん手術後の早期再発と晩期再発を予測する因子について:957例の解析から

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膵臓がんの手術を受けても、すぐに再発する人がいる一方で、しばらく時間がたってから再発する人もいます。

この差はどこからくるのでしょうか?

また、すぐに再発する人と、時間がたって再発する人を予測する方法はあるのでしょうか?

Defining and Predicting Early Recurrence in 957 Patients With Resected Pancreatic Ductal Adenocarcinoma. Ann Surg. 2018 Mar 23. doi: 10.1097/SLA.0000000000002734. [Epub ahead of print] 

米国ジョンズホプキンス大学医学部の研究者らは、957例の切除後の膵臓がん患者についての検討より、早期の再発例(12か月以内)晩期の再発例(12か月以降)について、いろいろな因子を比較検討しました。

その結果、早期に再発する人に特徴的な術前の因子および術後の因子として、以下のものがみつかりました。

早期再発にかかわる術前因子

● Charlson Age-Comorbidity Index (チャールソン併存疾患指数:持病など全身状態の指標)が4以上(=持病が多くて全身状態が悪い)
● 腫瘍の大きさが3cm以上
● CA19-9 > 210 IUmL

早期再発にかかわる術後因子

 腫瘍の分化度が低い(つまり悪性度が高い)こと
● 顕微鏡的にがん細胞の血管・リンパ管浸潤がある
● リンパ節転移が多い
● CA19-9 > 37 IUmL

以上です。

早期再発のリスクを下げる因子

逆に、早期再発のリスクを下げる因子として、

 術後抗がん剤治療
● 術後抗がん剤+放射線治療

が同定されました。

まとめ

膵臓がんの手術後に、早期に再発(転移)することはめずらしいことではありません。

再発のパターンには血行性転移、局所再発、および腹膜播種などがあり、複数の部位での再発や肝臓への再発(転移)が最も予後が悪いということでした。

また、がんが早期に再発する因子として、もともとの全身状態が悪い人がんのサイズが大きい人、あるいは(術前、術後の)腫瘍マーカー(CA19-9)が高値などがあります。

早期に再発すると予測される患者さんでは、より強力な術後補助療法が必要であると考えられます。

がんの再発リスクを減らすために

膵臓がんをはじめ、がんの手術後の再発リスクを減らすために、術前そして術後に患者さん自身ができることをまとめています


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佐藤 典宏

医師、医学博士、メディカル・サプリメント・アドバイザー。 消化器外科医として診療のかたわら癌の基礎的な研究もしています。 ☞ くわしいプロフィールはこちら ☞ 標準治療、代替医療、最新のがん情報についてエビデンスをまじえて紹介します。がん患者さんやご家族のかたに少しでもお役に立てれば幸いです。☞ 当ブログが本になりました!「ガンとわかったら読む本」マキノ出版 ☞ 
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