症状で発見(診断)されたがんのステージは?がんのサインに気づく重要性
がんは早期に発見されれば、治る可能性が高い病気です。
したがって、がんの死亡率を下げる目的で「がんの症状・サインを知ってください」といったキャンペーン(symptom awareness campaign)が世界的に行われています。
一方で、症状がでてから診断されたがんは「ステージ4などのかなり進行したがん」なので、このようなキャンペーンではがん死亡率の低下につながらない、といった意見もあります。
はたして、症状がでて診断されたがんは進行がんなのでしょうか?
今回、海外から一般的な「がん症状」がきっかけで診断されたがん患者さんのステージについての大規模研究の結果が報告されました。
がんの症状と診断時のステージとの関係
Presenting symptoms of cancer and stage at diagnosis: evidence from a cross-sectional, population-based study. Lancet Oncol. 2019 Nov 5. pii: S1470-2045(19)30595-9. doi: 10.1016/S1470-2045(19)30595-9. [Epub ahead of print]
イギリスの国民がん診断報告書から一般国民におけるデータを使った解析です。
合計で7997人のがん患者を対象としました。
がんの種類は、膀胱がん、乳がん、結腸がん、子宮体がん、喉頭がん、肺がん、皮膚がん(メラノーマ)、口腔(または咽頭)がん、卵巣がん、前立腺がん、結腸がん、および腎臓がんの12のタイプ(すべて固形がん)でした。
20個の一般的ながんの症状(例えば、腹痛、体重減少、胸のしこり等)について、それぞれ診断時のステージ(ステージ4あるいはステージ1~3)の割合を調査しました。
結果を示します。
■ がん患者に占めるステージ4の割合は、症状によって1%(異常なほくろ)から80%(首のしこり)まで様々でした。
■ 症状のうち、首のしこり、胸の痛み、および背中の痛みの3つは、ステージ4であるリスクが高いという結果でした。
■ 20のうち13の症状(異常なほくろ、胸のしこり、閉経後の不正出血、直腸からの出血、下部尿路症状、血尿、排便習慣の変化、嗄声、倦怠感、腹痛、下腹部痛、体重減少、および他のあらゆる症状)でがんが見つかった患者の50%以上は、ステージ4以外のステージ(1~3)でした(下図)。
症状 | ステージ4の割合(%) (95%CI) |
---|---|
異常なほくろ | 1% (1-3) |
胸のしこり | 5% (4-6) |
閉経後の不正出血 | 6% (3-9) |
直腸からの出血 | 16% (13-20) |
下部尿路症状 | 19% (16-21) |
血尿 | 21% (17-25) |
排便習慣の変化 | 29% (26-32) |
下腹部痛 | 29% (24-35) |
他のあらゆる症状 | 36% (34-38) |
腹痛 | 37% (32-42) |
嗄声 | 41% (32-50) |
倦怠感 | 47% (41-52) |
体重減少 | 49% (45-53) |
せき | 54% (50-58) |
血痰 | 54% (47-62) |
呼吸器感染 | 56% (50-61) |
呼吸困難 | 56% (52-61) |
背中の痛み | 61% (54-66) |
胸の痛み | 62% (56-67) |
首のしこり | 80% (71-87) |
以上の結果より、いくつかの症状(首のしこり等)では診断時ステージ4であるリスクが高いものの、大部分の症状では、ステージ4よりも早い段階でがんが発見されていました。
これは、早期診断のための「がんの一般的な症状の周知」の重要性をサポートするデータであるとしています。
がんの症状・サインを知っておきましょう
がんは種類(発生した臓器)や悪性度にもよりますが、早期に発見できれば治る可能性が高い病気です。
がんの病期(ステージ)別の生存率では、ステージ1の早期がんの5年生存率は90%以上であるのに対して、もっとも進んだ段階であるステージ4の場合、およそ20%まで下がります。
つまり、たとえがんになったとしても、早期に発見して適切な治療を受けることができれば、がんで死ぬことは回避できる可能性が高いのです。
がんを早期に発見するためには、できるだけ早く「がんのサインとしての症状」に気づき、勇気をもって専門の病院を受診することが重要です。
そこで、「がんを早期発見するために、知っておくべき症状・危険因子(どんな人がなりやすいか)」を中心に、広くがんについての情報をまとめ、1冊の本にしました。
本書では、臓器(部位)別に、以下のおもながんの症状(サイン)と危険因子(どんな人がなりやすいか)をまとめました。
[st-midasibox title=”がんの種類(臓器)” fontawesome=”” bordercolor=”” color=”” bgcolor=”” borderwidth=”” borderradius=”” titleweight=”bold”]
口腔がん、咽頭がん、喉頭がん、甲状腺がん、肺がん、食道がん、胃がん、大腸がん、肝臓がん、胆のうがん・胆管がん、膵臓がん、腎臓がん、尿路上皮がん(膀胱がん)、前立腺がん、乳がん、子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がん、悪性リンパ腫、白血病、皮膚がん、脳腫瘍
[/st-midasibox]
例えば、堀ちえみさんで話題となった舌がん(口腔がん)については、2週間以上治らない口内炎・できもの、口の中のかたいしこり、あごの下、首のしこり(リンパの腫れ)などが典型的ながんのサインです。
「自分はどんながんになりやすいのか?」および、一般的な「がんの症状」を知っておくことはとても大切です。
「あの時に受診していれば・・・」ということにならないよう、気になる症状がある人は早めに医療機関で検査を受けましょう。