膵臓がんに対する新たな治療戦略:画期的新薬CPI-613とmFOLFIRINOX併用の第1相試験

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転移をみとめる進行膵臓がんに対しては、かつてはジェムザールやフルオロウラシル(5-FU)しか有効な治療がありませんでした。最近、ようやくジャムザール+アブラキサンやFOLFIRIONOX(オキサリプラチン、ロイコボリン、イリノテカン、およびフルオロウラシルの併用)といった新たな抗がん剤治療が導入され、転移性膵臓がんに対する治療の選択肢が増えてきました。

しかしながら、全生存率の大幅な改善につながるような画期的な抗がん剤治療はまだありません。一方で、膵臓がんに対する新薬の開発・臨床試験が進んでいます。

今回、転移性膵臓がんに対して、画期的新薬として期待されるCPI-613と、オリジナルのレジメンを改良したmodified FOLFIRINOX(mFOLFIRINOX)との併用療法についての第1相臨床試験の結果が報告されました。

画期的新薬CPI-613とは?

CPI-613とは、細胞のミトコンドリアにおけるエネルギー代謝の別の形態を標的にした新しい抗がん剤です。この薬は、ミトコンドリアの酵素活性と酸化還元(レドックス)状態に変化をもたらすことによって、がん細胞をアポトーシス(能動的な細胞死)、ネクローシス(受動的な細胞死)、そしてオートファジー(細胞内のタンパク質を分解する仕組みの一つで自食(じしょく)とも呼ばれる)に導きます。

これまでの試験管および動物実験により、様々ながんに対してCPI-613は強力な抗腫瘍効果を示すことが報告されています。

また血液がんの患者さんを対象にしたCPI-613の臨床試験も現在進行中です。

転移性膵臓がんに対するCPI-613とmFOLFIRINOXの併用治療の第1相臨床試験

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アメリカから、転移性膵臓がんを対象としたCPI-613とmFOLFIRINOXの併用治療についての、単施設、オープンラベル、用量漸増第1相臨床試験の結果が5月8日のLancet Oncologyオンライン版に報告されました。

Safety and tolerability of the first-in-class agent CPI-613 in combination with modified FOLFIRINOX in patients with metastatic pancreatic cancer: a single-centre, open-label, dose-escalation, phase 1 trial. Lancet Oncol. 2017 May 8. pii: S1470-2045(17)30314-5. doi: 10.1016/S1470-2045(17)30314-5. [Epub ahead of print]

全身状態の保たれた(ECOGパフォーマンスステータスが0または1)転移性膵臓がん患者20人について、CPI-613とレジメンを改良(それぞれの抗がん剤の用量を減量)したmodified FOLFIRINOX(mFOLFIRINOX)との併用療法を行いました。

今回の第1相試験では、CPI-613の用量を調節して最大用量を同定し、副作用および有効性についても評価しました。

結果を示します。

■ CPI-613の最大投与量は500 mg/mm3でした。
■ 予想された副作用としては、血小板減少、貧血、リンパ球減少、高血糖、低カリウム血症、低アルブミン血症、敗血症、および好中球減少がみられた。
■ 副作用による死亡例はなかった。
■ 最大用量が投与された18人の患者におけるグレード3~4の副作用は、高血糖(55%)、低カリウム血症(33%)、末梢神経障害(28%)、下痢(28%)、腹痛(22%)、および好中球減少(28%)、リンパ球減少(28%)、貧血(22%)、および血小板減少(17%)であった。
■ 18人の最大用量が投与された患者のうち、11人(61%)が客観的(完全および部分)奏効を示した(下図)

CPI-613+mFOLFIRINOX膵癌第一相

以上の結果より、転移性膵臓がん患者におけるCPI-613とmFOLFIRINOXの併用治療は比較的安全であり、今後の第2相臨床試験へ希望が持てる結果であるとしています。

少数の患者さんにおける小規模な解析ではあるものの、61%という奏功率(完全寛解+部分寛解)は非常に高く、さらなる臨床試験の結果を待ちたいと思います。

 


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