ケトン食は癌に効果があるのか?動物実験における抗がん作用のエビデンス
ケトン食(ケトジェニックダイエット)は、炭水化物(糖質)の摂取量を極端に減らし、脂質を増やすことで、ケトン体がエネルギー源として使われる状態に誘導する食事療法のことです。
ケトン食は、難治性てんかんの治療法として実際におこなれている食事療法ですが、最近ではがんに対する治療効果も報告されるようになってきました。「ケトン食ががんを消す」の著者である古川健司先生(多摩南部地域病院外科)によると、進行がん患者を対象としたケトン食の試験において、がんの進行を食い止める病勢コントロール率は80%以上であったと報告しています。
しかし、ケトン食のがんに対する効果については、実験データや人での臨床試験といったエビデンス(医学的根拠)が少ないのが現状です。
はたして「ケトン食はがんを消す」のでしょうか?今回は、動物実験からのデータを総合的に評価した最近の報告を紹介します。
動物モデルにおけるケトン食の抗がん効果:腫瘍増殖および生存期間への影響
今回、医学論文データベースを調査し、ケトン食が腫瘍の増殖や生存期間に及ぼす影響についての動物実験の報告を集めました。
ケトン食(ketogenic diet)+癌(あるいは腫瘍、新生物など)を含むキーワードで検索したところ、268の論文がヒットしました。
このうち、動物実験におけるケトン食の効果について、がん(腫瘍)の大きさや生存期間を調べているものに限定したところ、最終的に13の論文が基準を満たしました。
結果ですが、この13の論文のうち、9つの論文ではケトン食による抗がん効果(腫瘍増殖抑制および生存期間の延長効果)を報告していました。
これら効果を認めたモデルでの腫瘍タイプは、膵臓がん、前立腺がん、胃がん、大腸がん、脳腫瘍、および肺がんでした。
このうち、代表的な論文として、膵臓がんのマウスモデルでの研究を紹介します。
この研究では、マウスの膵臓がん同所性移植モデル(膵臓にがん細胞を移植するモデル)を用いて、ケトン食とコントロール食を3週間与え、腫瘍の増殖とカヘキシア(がん悪液質)について評価しました。
その結果、コントロールと比べてケトン食のグループでは有意に腫瘍の重さおよび体積が減少していました(下図)。
ケトン食のグループでは、腫瘍内のケトン体の濃度が高まっていたとのことです。
一方で、筋肉の重さと体重はコントロールに比べてケトン食のグループで増加しており、カヘキシアを抑制する効果も確認できたとしています(下図)。
以上の結果より、ケトン食は膵臓がんの腫瘍増殖を抑え、一方で癌の進行に伴うカヘキシアも抑制することが示唆されました。
まとめ
今回の調査では、膵臓がんをはじめ、様々な癌に対するケトン食の有効性が動物実験では証明されていることがわかりました。ケトン食の抗がん作用を示すエビデンスとしては重要です。
しかし動物と人では生理学的に異なっており、このデータをそのまま人に当てはめることはできません。現在まで、人においてケトン食のがんに対する効果を調べたランダム化比較試験などの信頼できるデータはないため、今後の臨床研究の実施および結果を待ちたいと思います。
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