オプジーボ(ニボルマブ)が抗がん剤に抵抗性の食道癌に有効:日本からの第2相試験

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近年、日本における食道癌の罹患数は増加傾向にあり、2012年には2万人を超えました。芸能人のなかにも、食道癌で治療を受けたり、亡くなった方が多数いらっしゃいます(例えば、桑田佳祐さん、やしきたかじんさん、立川談志さん、淡路恵子さん等)。

また、日本人の食道癌の90%以上は扁平上皮がんであり、その主な原因は飲酒と喫煙(とくに両方でリスク増加)と考えられています。

食道癌は難治がんの1つであり、化学療法(抗がん剤)が効かなくなった症例に対する治療法の選択肢は限られています。

この抗がん剤に抵抗を示す食道癌に対して、現在日本では免疫チェックポイント阻害剤であるニボルマブ(オプジーボ)が有効かどうかを調べる臨床試験が進行中です。今回、多施設第2相試験の結果を紹介します。

免疫チェックポイント阻害剤オプジーボとは?

人にはがん細胞を排除する免疫監視システムが備わっています。まずは抗原提示(こうげんていじ)細胞と呼ばれる見張り役が、がん細胞の特徴をヘルパーT細胞に知らせ、ヘルパーT細胞はキラーT細胞という兵隊に指示を出してがん細胞を攻撃させます。

一方で、この免疫にも暴走しないようにブレーキがあります。このブレーキのひとつが、免疫細胞(T細胞)の表面にあるPD-1(programmed cell death-1)と呼ばれる受容体(つまりカギ穴)で、「免疫チェックポイント分子」と呼ばれています。

がん細胞は巧みにこのシステムを利用し、このPD-1(カギ穴)に、PD-L1(あるいはPD-L2)というカギを結合させ、免疫細胞にブレーキをかけてしまうのです。その結果、免疫細胞はがん細胞に対する攻撃をやめてしまうのです。

抗PD-1抗体のニボルマブ(商品名オプジーボ)とペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)は、この免疫細胞のPD-1(カギ穴)を先回りしてふさいでしまい、PD-L1およびPD-L2が結合するのをブロックします。これにより、免疫細胞にブレーキがかからなくなり、がん細胞への攻撃力を維持することができるのです。

現在日本では、オプジーボは悪性黒色腫(メラノーマ)非小細胞肺がん腎細胞がん、ホジキンリンパ腫、および頭頸部がんに承認を受けています。消化器がんに関しては、胃がんに対して申請中です。

食道癌に対するオプジーボの安全性および効果:日本における第2相臨床試験の結果

本試験は、進行食道癌に対するオプジーボの安全性および有効性を調査する目的で日本の多施設で行われたオープンラベル第2相臨床試験です。

標準的な抗がん剤(フッ化ピリミジン系、プラチナ製剤、およびタキサン系薬剤)が無効であった食道癌(扁平上皮がん)患者65人が対象となりました。

これらの患者に対してオプジーボ単独投与(3mg/kgの静脈投与、週2回を6週間サイクル)を行いました。

一次評価項目は、奏功率(完全寛解+部分寛解)とし、治療中の有害事象(副作用)を調査しました。

結果を示します。

■ 奏功率は17%(64人中11人)であった。このうち、完全寛解(標的病変の消失)が1人(2%)部分寛解(30%以上の縮小)が10人(16%)であった。
■ 標的病変(腫瘍)のサイズは、29人(45%)で縮小していた(下図)。

オプジーボ食道癌腫瘍サイズ

■ 安定(腫瘍の進行なし)が16人(25%)で、病勢コントロール率(奏効+安定)は42%であった。
■ 全生存期間の中央値は10.8ヶ月であった。
■ 治療の有害事象に伴う死亡はなく、重大な副作用には、肺感染症(6%)、脱水(3%)、間質性肺疾患(3%)などがあった。

以上の結果より、オプジーボは進行食道癌患者に対する治療として比較的安全であり、有望な結果を示したとしています。

標準化学療法に奏効しなかった進行食道癌に対する、新たな治療戦略になる可能性が高いと考えられます。

食道癌に対するオプジーボの現状

オプジーボは現時点では、食道がんに対する適応はありません。

しかしながら、この第2相臨床試験の結果を受け、進行食道がん患者を対象として、「新規免疫療法とされる免疫チェックポイント阻害薬・抗PD-1抗体である治験薬」または「ドセタキセルまたはパクリタキセル」を使用した場合の有効性と安全性を比較する第3相臨床試験を募集中です。

この試験は「手術による根治切除不能な食道がん患者」であれば、参加できる可能性があります。

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