ステージ4でもあきらめない!切除不能胃がんに対するmDCS療法とコンバージョン手術

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胃がんの罹患率は減少しているにもかかわらず、切除不能の進行胃がんによる死亡者数はいまだに多く、世界的にも大きな問題となっています。

しかし最近では、新たな全身化学療法の導入によって、切除不能の胃がんが縮小して切除手術(コンバージョン手術)が可能となるケースもでてきました

つまりステージ4の胃がんでも、強力な抗がん剤治療とコンバージョン手術の組み合わせにより、長期生存も可能なのです。

今回、切除不能胃がんに対するmodified DCS治療(減量ドセタキセル、シスプラチン、S-1)の第2相臨床試験の結果が日本から報告されました。

進行胃がんに対するmodified DCS療法とは?

進行胃がんに対する治療としては、3剤を併用するDCS療法(ドセタキセル、シスプラチン、S-1)が非常に有効であり、国内の第2相臨床試験では87%もの奏功率を示しました。

しかし一方で、DCS療法は副作用も強く、高率にグレード3以上の血液毒性(好中球減少など)や食欲不振、嘔気などがみられました。

そこで、ドセタキセルを減量したレジメンであるmodified DCS(mDCS)療法が開発されました。

このレジメンでは、S-1(ティーエスワン)を40 mg/m2で1-14日に投与し、ドセタキセル(50 mg/m2)とシスプラチン(60 ng/m2)を8日目に投与します。これを3週間毎にくり返します。

コンバージョン手術とは?

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切除不能ながんに対して全身化学療法(抗がん剤治療)を行い、治療が奏効して画像検査で腫瘍が縮小したり、転移病変が消失し、根治手術が可能となることがあります。

このような症例に対して、根治を目的におこなう手術をコンバージョン手術(conversion surgery)といいます。

たとえステージ4の切除不能胃がんであっても、抗がん剤治療が奏効してコンバージョン手術ができれば、長期生存も可能なのです

実際に、多発肝転移をともなう胃がん(cT3N3M1, stage IV)に対してS-1とシスプラチンの併用治療を行い、肝転移の劇的な退縮がみられたためコンバージョン手術(胃切除術)が可能となり、術後33ヶ月間再発無く経過している症例が報告されています(Surg Case Rep. 2017 Aug 29;3(1):95. doi: 10.1186/s40792-017-0372-5.)。

切除不能胃がんに対するmDCS療法:日本における第II相臨床試験

今回、日本から切除不能胃がんに対するmDCS療法の安全性と有効性を調べる第II相臨床試験の結果が報告されました。

A phase II study of modified docetaxel, cisplatin, and S-1 (mDCS) chemotherapy for unresectable advanced gastric cancer. Cancer Chemother Pharmacol. 2017 Aug 28. doi: 10.1007/s00280-017-3404-8. [Epub ahead of print]

対象は切除不能胃がんで、49人が登録され、最終的には43人(男性27人、女性16人、平均年齢59歳)が評価可能でした。

43人のうち、41人は遠隔転移(リンパ節、腹膜、肝臓、骨、肺、副腎など)であり、2人は周囲の臓器へ直接浸潤していたために切除不能と診断されました。

mDCS治療(1~15コース、中央値5コース)を行い、安全性(副作用)および有効性(奏功率、無再発生存、全生存)について評価しました。

結果を示します。

■ 全体の奏功率は79%であり、完全寛解2例(4.7%)部分寛解32例(74.4%)であった。

■ 43例中、15例(35%)は遠隔転移の消失およびダウンステージングがえられ、根治的コンバージョン手術が可能となった

■ 無再発生存期間の中央値は350日全生存期間の中央値は722日であった(観察期間中央値429日)。

■ コンバージョン手術ができなかった症例(化学療法のみ)の生存期間中央値が413日であったのに対し、コンバージョン手術が可能であった症例の生存期間は延長していた(観察期間において中央値に達しなかった)(下図)。

全生存期間コンバージョン手術ありなし

■ 最も多いグレード3/4の副作用は好中球減少(79%)食欲不振(26%)貧血(19%)であった。

■ 発熱性好中球減少が15例(35%)に認められた。

 

以上、mDCS療法は切除不能胃がんに対して非常に高い有効性を示し、コンバージョン手術への移行を可能にする化学療法であると結論づけています。

また、DCS療法に比べて副作用は少ないものの、発熱性好中球減少など血液毒性に対しては、やはり厳重な注意は必要であるとしています。

今後、ステージ4を含む切除不能胃がんに対する強力な抗がん剤治療として期待が持てます。

 


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