癌の手術をしないという選択肢:手術拒否は乳がん患者の死亡率を2.4倍も高める

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がん治療には、いろいろな選択肢があります。

医師はエビデンス(医学的根拠)やガイドラインにしたがって、最も治療効果の高い方法を提案するでしょう。しかし、なかには医師のすすめる治療や標準治療を拒否される患者さんもいます。

乳がんでは、治療の第1選択はやはり手術になります。ところが、乳房を切除するという身体的(美容的)および精神的負担から、手術を拒否する患者さんが多いとのことです。

手術の拒否は治療成績(予後)にどのような影響を与えるのでしょうか?

今回、アメリカの大規模なデータベース解析により、乳がん患者における手術拒否の頻度、危険因子および生存率への影響が明らかになりました。

やはり手術の拒否は死亡率の増加につながるようです。

乳がん患者による手術拒否:危険因子と生存率への影響

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Refusal of Cancer-Directed Surgery by Breast Cancer Patients: Risk Factors and Survival Outcomes. Clin Breast Cancer. 2017 Jul 18. pii: S1526-8209(17)30381-6. doi: 10.1016/j.clbc.2017.07.010. [Epub ahead of print]

この研究では、米国立癌研究所(NCI)のSEER(Surveillance, Epidemiology and End Results)データベース(2004~2013年)に登録された531,700人乳がん患者を調査対象としました。

乳がんに対する手術をすすめられたにもかかわらず拒否した患者と、手術を受けた患者について、患者背景や予後を比較しました。

結果を示します。

■ 531,700人の乳がん患者のうち、3389人(0.64%)は手術を拒否していました。
■ 全患者の48%が放射線治療を受けていましたが、手術を拒否した患者ではわずか0.7%しか放射線治療を受けていませんでした。
■ 手術を拒否した患者は2004年から2013年にかけて増加傾向にありました。
■ 手術を拒否しやすい患者の特徴(危険因子)として、以下の因子が特定されました。
  • 高齢(50~69歳で5倍、70歳以上で17倍)
  • 人種
  • 配偶者の有無(独身で2倍、離別/離婚/死別で2倍)
  • ステージが高いこと(ステージIIで2倍、IIIで2倍、IVで13倍)
  • 医療保険に加入していないこと(2倍)
■ 手術を拒否した患者は、手術を受けた患者にくらべ、死亡リスクが2.42倍も増加しており、ステージが早期であるほどリスクが高まることがわかりました(例えば、ステージIでは3.6倍)(下図)。

乳がん手術拒否と生存期間

以上の結果より、医師よりすすめられた乳がんの手術を拒否する患者がいること(1%以下ですが、増えていること)高齢患者や配偶者がいない患者に多いこと、また死亡率が2倍以上になることが示されました。

もちろん米国と日本では人種や医療事情が全く異なるため、この結果をそのまま日本にも当てはめることはできません。

また、手術を拒否した患者さんの多くは放射線治療も受けておらず、手術だけではなく標準治療を拒否している(あるいは理由があって受けられない)可能性が高いことがわかりました。

がんの治療に関しては、治療効果だけでなく生活の質や自分の気持ち(価値観)を重んじることも大切ですので、必ずしも生存期間だけを基準にして治療を選択することが正解とはいえません。

ただ、やはり標準治療を拒否した場合には、少なくとも統計学的には死亡リスクが高まる可能性があることは確かなようです。

 


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