睡眠不足および長時間の睡眠はサルコペニアのリスク増加と相関:適正な睡眠時間の重要性
何度もブログで紹介していますが、がん患者さんにとって「筋肉」はとても重要で、サルコペニアがあると予後が悪くなります。
サルコペニアとは、「筋肉量の低下に加えて筋力の低下または身体能力の低下のいずれかがある状態」です。
簡単に言うと「筋肉やせ」のことで、「手足の筋肉が落ちて細くなり、日常生活の動作が遅くなる」といった状態のことです。
サルコペニアがあるがん患者さんは、サルコペニアがない患者さんに比べ、手術の合併症や死亡率が高いこと、そして、生存期間が短くなることが明らかとなっています。
つまり、がん患者さんではサルコペニアを防ぐことがとても大切なのです。
サルコペニアの原因として、加齢、がんによる代謝異常、食欲低下による栄養状態の悪化、あるいは運動量の低下などが考えられていますが、じつは睡眠時間とも関係しているという報告があります。
今回、睡眠時間とサルコペニアとの関係についての研究報告を紹介します。
睡眠時間とサルコペニアのリスクとの関係
Sleep duration and sarcopenia risk: a systematic review and dose-response meta-analysis. Sleep Breath. 2019 Dec 12. doi: 10.1007/s11325-019-01965-6. [Epub ahead of print]
この研究では、過去の論文から「サルコペニアと睡眠時間との関係」についてシステマティックレビューと用量反応メタアナリシスを行いました。
最終的に、4つの研究の17,551人のデータを使って解析しました。
以下に結果を示します。
■ 平均的な睡眠時間(6~8時間)のグループと比べて、最も短い睡眠時間(6時間未満)のグループは、サルコペニアのリスクが70%以上も増加していました(オッズ比1.71)。
■ 平均的な睡眠時間(6~8時間)のグループと比べて、最も長い睡眠時間(8時間以上)のグループは、サルコペニアのリスクが50%以上も増加していました(オッズ比1.52)。
■ サブグループ解析では、女性では短時間および長時間睡眠の両方ともサルコペニアのリスク増加と相関していましたが、男性では長時間睡眠のみがリスク増加と相関していました。
■ 用量反応メタアナリシスでは、睡眠時間によるサルコペニアのリスクはU字型の関係を示し、8時間が最も低いという結果でした(下図)
以上、短時間および長時間の睡眠はサルコペニアのリスク増加と相関しているという結果でした。
この理由については不明ですが、おそらく睡眠不足は筋肉合成に何らかの悪影響をおよぼす可能性と、逆に長時間睡眠は活動量(運動量)の低下をもたらす可能性が考えられます。
今後、その理由もふくめて睡眠時間とサルコペニアとの関係をさらに検討する必要があるとしています。
まとめ
短時間および長時間睡眠はサルコペニアのリスクを増加させる可能性があります。
人によって違うと思いますが、しっかりと適正な睡眠(おおむね6~8時間)をとることが大切ですね。