糖尿病は乳がん患者の予後(生存率)を悪化させるのか?最新のメタアナリシスより
糖尿病は世界的に増加傾向にありますが、日本においても増加の一途をたどっています。
糖尿病は、様々ながん発症のリスクとなることが報告されています。また、一部のがん(乳がんなど)では、糖尿病の既往があると、がんの予後(治療成績)が悪くなるとする報告もあります。
はたして糖尿病があると乳がんの生存率が低下するのでしょうか?今回、糖尿病と乳がんの予後との関係について、過去の大規模な研究をまとめた最新のメタアナリシスが報告されましたので解説します。
糖尿病とがんとの関係
厚生労働省の平成26年(2014年)「国民健康・栄養調査」によると、糖尿病が強く疑われる人の割合は、男性で15.5%、女性で9.8%であり、2006年調査に比べて増加しています。
また2015年の調査では糖尿病の患者数は316万6,000人となり、2011年調査の270万から46万6,000人増えて、過去最高となっています。
糖尿病はそれ自体で死亡の原因になりますが、色々ながんの発症率を高めることがわかっています。
例えば、国立がん研究センターの調査によると、糖尿病の既往がある人では、既往がない人と比べ、何らかのがんにかかる危険性が男性で1.27倍、女性で1.21倍ほど高くなり、20-30パーセントほど、がんになりやすくなる傾向があることがわかっています。
特に男性では肝臓がん、腎がん、膵臓がん、結腸がん、胃がん、女性では胃がん、肝臓がん、卵巣がんのリスクが高くなると報告されています。
また、海外からの報告では、一部のがん(乳がんなど)では、糖尿病があるとがんの予後(治療成績)が悪くなることを示すデータもあります。
はたして糖尿病があると乳がんの生存期間が短くなるのでしょうか?最近発表されたメタ解析の結果について紹介します。
糖尿病と乳がん患者の予後(生存期間)との関係
この研究では、過去に糖尿病と乳がんの予後との関係について調査した17本の論文(48,315人の乳がん患者)について、詳細な検討およびメタアナリシス(複数の研究の結果を統合し、より高い見地から分析する手法)を行いました。
以下に結果を示します。
糖尿病の既往がある乳がん患者では、既往のない患者と比べ、全生存期間(overall survival: OS)が短かった(ハザード比が1.5)。
糖尿病の既往がある乳がん患者では、既往のない患者と比べ、無増悪生存期間(disease-free survival: DFS)が短かった(ハザード比が1.28)。
一方、無再発期間(relapse-free period)に関しては、糖尿病の既往がある患者と既往のない患者の間で差を認めなかった。
以上の結果より、糖尿病の既往は、乳がん患者における予後(全生存期間および無再発生存期間)の悪化と関係していることが示されました。
今後、糖尿病の治療薬などによる高血糖の適切なコントロールが、糖尿病を合併した乳がん患者の予後を改善するかについては、前向き試験によって調べる必要があると結論づけています。
糖尿病ががん患者の予後を悪化させる理由
なぜ糖尿病が乳がん患者の予後を悪化させるのかについての明確な理由はわかっていません。しかし、糖尿病に伴う以下の状態が関与している可能性があります。
■ 糖尿病による高インスリン血症
■ インスリン様成長因子(IGF)の増加
■ 性ホルモンの変化
■ 高血糖状態がもらたす酸化ストレスや炎症
これらの複数の要因が、乳がんの進行を早め、結果的に生存期間に影響していると考えられています。しかし、因果関係を解明するには、今後のさらなる研究が必要です。
糖尿病の予防、治療をしましょう
かたよった食事(赤肉・加工肉の摂取過剰、野菜・果実・食物繊維の摂取不足、過剰な糖質の摂取など)、運動不足、肥満、喫煙、過剰飲酒は、糖尿病とがんの共通の危険因子ですので、注意が必要です。
また、とくに乳がん患者さんにおいては、糖尿病が生存期間に影響することより、適切な食事療法、運動、禁煙、節酒、および糖尿病の監視と治療が、がん死亡のリスク減少につながる可能性があります。
応援よろしくおねがいします!
いつも応援ありがとうございます。 更新のはげみになりますので、「読んでよかった」と思われたら クリックをお願いします_(._.)_!
↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓