膵臓がんの肺への転移は比較的予後がいい?オリゴメタ(少数転移)の可能性
膵臓がんが血流にのって遠隔転移(遠くの臓器への転移)をおこした場合、一般的には全身に広がった末期がん(あるいは終末期)とみなされ、場合によっては緩和医療のみで抗がん剤や手術など積極的な治療は行わないこともあります。
膵臓がんが転移する場合、多く(80%以上)は肝臓へと転移します。この場合、非常に予後が悪く、抗がん剤治療を行っても平均の生存期間は6ヶ月~1年程度です。
一方で、少ないですが、膵臓がんが肺だけに転移することもあります。この場合、他の部位(臓器)への転移と比較して予後が良好であることことより、転移に対して切除手術を行っている施設もあります。
今回、膵臓がんの肺への転移についてまとめてみました。
膵臓がんの肺転移は予後良好なグループ?
ドイツのグループは、過去に治療を行った膵臓がんの肺転移症例について、その治療法および予後について調査を行いました。
2002年から2015年までの間に、診断され、治療を受けた膵臓がん患者のうち、40人に肺だけへの転移が認められました。
この40名について、治療や予後を含めて詳細に調査しました。
結果を示します。
Pancreatology. 2016 Jul-Aug;16(4):593-8. doi: 10.1016より引用。一部改変
一般的に抗がん剤治療(あるいは緩和医療だけ)を行った転移性膵臓がん患者の生存期間が半年~1年以内であるのに対し、25.5ヶ月(2年以上)は非常に良好といえます。
以上の結果より、まだ小規模な症例での後ろ向きな解析ではありますが、膵臓がんが肺に限局性に転移した症例は特殊なグループであり、特に転移の個数が少ない場合には比較的良好な予後が期待できる可能性が示されました。
膵臓がん/胆道がんの肺転移に対する肺切除術
膵臓がんの遠隔転移に関しては、全身転移説(1つでも転移が確認されたら、すでに全身にがんが散らばっている)の考え方に基づいて、一般的には手術を行うことはありません。
しかし、もし膵臓がんの中にもオリゴメタ(少数転移)のパターン(がんの転移が無数でなく、2-3個までにとどまっている)があると仮定した場合、確認できるすべての転移を切除することで生存期間の延長が期待できます。
実際に、施設(病院)によっては、膵臓がんの肺転移に対して切除術を行っているところがあります。最近報告された日本からの治療成績について紹介します。
2006年から2016年までの10年間に肺の切除を行った膵臓がん(4人)と胆道がん(6人)の患者、計10人についての検討です。
10人のうち、9人は単発(1個)の肺転移で、残りの1人は両側の多発転移でした。初回の原発巣の手術から肺の手術までの期間は23.3ヶ月(中央値)でした。
治療は、1人に対して葉切除(片方の肺を切除)し、残りの9人には部分切除を行いました。
その結果、肺切除後の生存期間の中央値は38.5ヶ月(予測5年生存率は38.9%)とのことでした。
しかしながら、5人では肺切除術後に再発をきたしており、再発までの期間は6ヶ月(中央値)でした。
膵臓がんだけでなく、胆道がん患者も含まれているため正確な評価はできませんが、肺転移に対して積極的な切除術が生存期間を延長する可能性を示しています。
まとめ
以上の研究結果より、膵臓がんの肺への転移は他の部位(肝臓)と比較すると予後が良好な病態であるといえます。特に、肺切除によって転移巣が完全に除去できた場合(いわゆるオリゴメタの状態)、比較的長期の生存が期待できます。
症例数を増やした今後のさらなる研究が必要ですが、膵臓がんの肺転移に対しては積極的な治療によって生存期間が延長する可能性があります。
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