サプリメント(マルチビタミン)が遺伝性の大腸がんを防ぐ:研究報告
「サプリメントはがんの予防や治療に有効か?」については、一定の見解は得られていません。
特に「ビタミンのサプリメントはがん予防に有効か?」については多くの疫学研究で調査されていますが、一定の効果があるとするものや、効果がないとするものもあり、いまだ結論はでていません。
試験管レベルや動物実験では、マルチビタミンは様々ながん予防に有効であることが示されています。
また特定のビタミン(たとえばビタミンD)がある種のがんの予防に有効であるとする報告はありますが、マルチビタミンのがんに対する予防効果については否定的な論文も多くみられます。
さて、今回は発がんのリスクが高い特殊な症候群において、マルチビタミンとカルシウムが大腸がんの予防に有効であることを証明する研究結果を紹介します。
マルチビタミンのサプリメントががんに有効であることを支持するエビデンスの1つになると思います。
リンチ症候群におけるサプリメントの大腸がん予防効果?
Multivitamin, calcium and folic acid supplements and the risk of colorectal cancer in Lynch syndrome. Int J Epidemiol. 2016 Jun;45(3):940-53. doi: 10.1093/ije/dyw036. Epub 2016 Apr 10.
リンチ症候群とは遺伝性非ポリポーシス性大腸がん(Hereditary Non-Polyposis Colorectal Cancer: HNPCC )とも呼ばれ、大腸がんをはじめ子宮内膜、
この症候群の患者さんには、ミスマッチ修復遺伝子の異常やマイクロサテライト不安定性といった分子レベルでの異常がみられ、傷ついたDNAの修復が上手くできないために発がんリスクが高まると考えられます。
この研究では、米国、オーストラリア、カナダなどの大腸がん家族レジストリに登録された1966人のリンチ症候群の患者さんを対象としました。
これらの患者さんについて、自己申告によるサプリメントの摂取など生活スタイルを調査し、大腸がんの発がんリスクとの関係について解析しました。
結果を紹介します。
■ 744人の大腸がんを発症した患者のうち、(少なくとも1ヶ月以上)マルチビタミン、カルシウム、および葉酸サプリメントの摂取をしていた人は、それぞれ18%、6%、および5%であった。
■ 一方、1222人の大腸がんを発症しなかった人のうち、(少なくとも1ヶ月以上)マルチビタミン、カルシウム、および葉酸サプリメントの摂取をしていた人は、それぞれ27%、11%、および10%であった。
■ 他の大腸がんリスクと関係する因子で調節した解析では、(3年間以上の)マルチビタミンの摂取(ハザード比 0.47)および(3年間以上の)カルシウムの摂取(ハザード比 0.42)が大腸がんリスクの減少と有意に相関していた。
■ 葉酸サプリメントの摂取は大腸がんリスクの低下と有意な相関はなかった。
つまり、(3年間以上の)マルチビタミン摂取によって大腸がんのリスクを50%以上も減らすことができたという結果でした。
まとめ
リンチ症候群の患者さんを対象とした臨床試験によって、マルチビタミンの長期摂取によって大腸がんのリスクが50%以上も減ったという結果を紹介しました。
最近日本において大腸がんが増加しています。
もちろん特殊な母集団を対象としたこの研究結果をそのまま当てはめることはできませんが、マルチビタミンは大腸がんの予防(および治療)に有効である可能性を示した1つのエビデンスになると考えます。
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