がんが自然に治る!?大腸癌の自然退縮(消失)例の報告
がんが自然に小さくなったり消えてしまう、いわゆる「自然退縮(spontaneous regression)」の症例は、世界中から多数報告されており、その頻度はおよそ6~10万人のがん患者に1人といわれています。
しかし、大腸がんの自然退縮の報告は非常に少なく、まれであると考えられます。
今回、日本から大腸がん(横行結腸がん)の自然退縮例の報告がありましたので紹介します。
横行結腸癌の自然退縮例
症例は、80歳代の男性で、早期胃がんに対して手術を受け、その後の経過観察中に大腸内視鏡検査を行ったところ、横行結腸におよそ3cmの腫瘍が見つかりました(下図)。
CT検査でも横行結腸に壁が厚くなっているところがありましたが、周囲に明らかに腫れたリンパ節はありませんでした。また、他の臓器への転移は認めませんでした。この時点でのがんの病期は、ステージIでした。
その2週間後に再度内視鏡検査を行ったところ、がんは2cmまで縮小しており、かたちも変わっていました(下図)。
腫瘍の一部を採取して顕微鏡で観察したところ、低分化型腺がん(がんのなかでも悪性度の高いタイプ)の診断であり、またがん細胞はリンパ球に取り囲まれていました。
その1週間後に、横行結腸の部分切除を行いました。
切除した標本を調べると、肉眼的に腫瘍は消失しており、潰瘍の跡だけが残っていました(下図)。
さらに病理検査(顕微鏡検査)の結果、病変部にがん細胞はなく、炎症細胞の集まりと線維化が残っているだけでした。また免疫染色という特殊な染色法による検査では、病変部にCD4+Tリンパ球が多く集まっているのが観察されました(下図:茶色の細胞がCD4+リンパ球)。
術後の経過は問題なく、5ヶ月後の大腸内視鏡検査では残りの大腸に病変を認めませんでした。現在まで12ヶ月間、再発なく経過しているとのことです。
大腸がんの自然退縮:メカニズムと他の報告例
今回の症例は、抗がん剤などの治療をしていないにもかかわらず、数週間で大腸がんが自然退縮したことが確認された貴重な例です。肉眼的に腫瘍が消失していただけではなく、顕微鏡検査でもがん細胞が全く見られなかったとのことです。
さて、大腸がんが自然に消失するメカニズムはどのようなものでしょうか?
これまでの自然退縮したがんの調査では、腫瘍部に免疫監視細胞(活性化CD3+リンパ球やNK細胞)が多く集まっていることが報告されています。つまり、免疫のはらたきによってがんが治ったと考えられています。
今回の症例でも、免疫の指令塔の役割を果たすCD4+Tリンパ球が集まっていたことを考えると、やはり免疫監視システムによってがん細胞が排除されたと考えるのが妥当であるとしています。ただ、この間に患者さんが一体何をしていたかなどの情報はありませんでした。
さらに著者らは、過去に報告された大腸がんの自然退縮例がないか調べてみたところ、2006年以降、4例の同様な症例が報告されていました。これらの症例も、1.5~6ヶ月の間にがんが自然に消失していたとのことです。
非常にまれではありますが、大腸がんが自然に治る症例が存在すること、そしてこれらの症例におけるがんの自然退縮にはおそらく免疫が関与している可能性があるということが、あらためて示されました。
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