がんに良い脂肪酸、悪い脂肪酸とは?EPA/アラキドン酸比率が低いとがん死亡リスク増加
最近、がんの発生や進行に関する脂肪酸(オメガ3脂肪酸やオメガ6脂肪酸)の役割についての研究がすすんでいます。
たとえば、海外からの研究では、EPAやDHAなどのオメガ3脂肪酸(PUFAs)には、がんの予防効果やがん患者の生存期間を延長させる効果が報告されています。
一方で、オメガ6脂肪酸の過剰摂取はがんの発症と関係していると報告されています。
つまり、オメガ6を控えめにしてオメガ3脂肪酸を多く摂取することで、がんのリスクを低下できる可能性があります。では、実際には脂肪酸の摂取パターンとがん死亡率との関係はどうなのでしょうか?
今回、日本の研究において、血液中のエイコサペンタエン酸(EPA)とアラキドン酸(AA)濃度との比率が、がんの死亡率と相関するという研究結果が報告されました。
オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸
脂質を構成する成分である脂肪酸には飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があり、化学構造式で炭素原子どうしが一重結合(すなわち飽和結合)しているものを飽和脂肪酸、二重結合(すなわち不飽和結合)しているものを不飽和脂肪酸といいます。
不飽和脂肪酸は、さらに一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸に分類され、一価不飽和脂肪酸にはオメガ9脂肪酸、多価不飽和脂肪酸にはオメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸があります(下図)。
オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸はヒトの体内での合成ができず、食物などから摂取する必要があるため必須脂肪酸とよばれています。
このうちオメガ3脂肪酸には、α-リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサペンタエン酸(DPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)が含まれます。
これらのオメガ3脂肪酸には炎症を抑える作用や抗酸化作用があり、がんの予防や治療に有効であるとされています。
一方、オメガ6脂肪酸にはリノール酸がやアラキドン酸(AA)が含まれます(アラキドン酸はリノール酸が体内で変換したものです)。
アラキドン酸から生成されるプロスタグランジンは炎症をうながし、がんの原因となったり、がんを進行させる可能性が指摘されています。
血清EPA/アラキドン酸濃度の比率とがん死亡リスクとの関係:日本からの報告
福岡県の久山町における大規模な疫学調査(Hisayama Study)です。40歳以上の3098人の住民について、9.6年間(2002年~2012年)にわたり観察しました。
採血検査によってオメガ3脂肪酸のエイコサペンタエン酸(EPA)濃度とオメガ6脂肪酸のアラキドン酸(AA)濃度の比(EPA:AA比)を求め、その数値により4つに分類しました。
つまり、アラキドン酸(リノール酸)の摂取に比べてEPAの摂取が多い人では、このEPA:AA比が高くなると考えられます。
観察期間中のがん死亡リスクとの関係を解析しました。結果を示します。
以上の結果より、一般的な日本人における解析により、血清EPA:AA比の低下はがん死亡率を増加させる危険因子であることがわかりました。
このことは、EPA(オメガ3脂肪酸)の積極的な摂取およびアラキドン酸(オメガ6脂肪酸)の控えめな摂取によって、がん死亡リスクを減らせる可能性を示しています。
EPAをとりましょう!
厚生労働省によると、日本人には1日1g(1000mg)以上のオメガ3脂肪酸(EPAおよびDHA)の摂取を推奨しています。
オメガ3脂肪酸(EPA)は、おもにマグロ(脂身)、イワシ、サンマ、サバ、アジなどの魚に含まれています。
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