がん診断後のライフスタイル(運動、昼寝、テレビ視聴時間)が大腸がんサバイバーの寿命を決定する
がんの原因の1つとして、運動や食事、睡眠時間などの生活習慣(ライフスタイル)が関係しているといわれています。たとえば、定期的な運動をしない活動性の低い人はがんになりやすいことがわかっています。
また、がん診断後のライフスタイルは、がんの進行や予後にも関わっていることが明らかとなってきました。つまり、がんの診断をきっかけに、その後のライフスタイルを変えることで寿命(生存期間)をのばすことが可能であると考えられています。
でも、実際にがん診断後のライフスタイルが、がん患者さんの予後に影響するというエビデンスはあるのでしょうか?
今回、大腸癌サバイバーにおける、診断後のライフスタイルと死亡率との関係についての研究報告を紹介します。
診断後のライフスタイル(身体活動、睡眠時間、テレビ視聴時間)が大腸癌サバイバーの死亡率と関連
Postdiagnostic physical activity, sleep duration, and TV watching and all-cause mortality among long-term colorectal cancer survivors: a prospective cohort study. BMC Cancer. 2017 Oct 25;17(1):701. doi: 10.1186/s12885-017-3697-3.
ヨーロッパ(ドイツ)からの前向きコホート研究です。
1376人の大腸癌サバイバー(平均年齢69歳)を対象に、診断後のライフスタイルについての詳しいアンケート調査を行いました。調査内容は、以下の通りでした。
● 1週間のうち、様々な身体活動(ウォーキング、サイクリング、スポーツ、ガーデニング、家事(例、クッキング、皿洗い、洗濯)、家の修理(日曜大工))についやす平均時間
● 階段のぼり(1日何段)、夜間および昼間の睡眠時間、テレビ視聴時間(1日何時間)
観察期間中(中央値7年)に、200人が死亡しました。これらの診断後のライフスタイルと死亡率について関連性を調査しました。
結果を示します。
■ 全体の身体活動性が高いグループでは、低いグループに比べて有意に死亡率が低下していました(47%の死亡リスク低下)。
■ とくに、スポーツ(66%の死亡率低下)、ウォーキング(35%の低下)、ガーデニング(38%の低下)を活発にしているグループで死亡率が低下していました。
■ 昼間に2時間以上の睡眠をとっているグループでは、昼間に睡眠をとらないグループに比べて死亡率が2.22倍も上昇していました。
■ 1日4時間以上テレビを視聴しているグループは、2時間未満のグループに比べて死亡率が45%増加していました。
以上をまとめると、
がん診断後の高い身体活動(とくにスポーツ、ウォーキング、ガーデニング)は大腸癌サバイバーにおける死亡リスクを低下させ、一方で長時間の昼寝(2時間以上)とテレビ視聴(4時間以上)は死亡リスクを増加させるという結果でした。
がんと診断されてからの生活習慣が、がん患者さんの寿命を左右するというエビデンスとして重要な研究結果だと思います。
がんサバイバーへ運動のすすめ
米国がん協会の「がん生存者における栄養および身体活動のガイドライン(2012年)」によると、これまでの多くの大規模な研究において、適度な運動が乳がん、大腸がん、前立腺がん、卵巣がん患者の再発リスクを減らし、生存期間を延ばすことが明らかになっています。
今回の研究結果からも、がんサバイバーには「とにかく体を動かすこと」がすすめられます。
アメリカの様々な学会や協会がすすめている「がんサバイバーの運動に関するガイドライン」から抜粋して紹介します。
成人がん患者(18歳から64歳まで)では、「中ぐらい」の運動(運動しながら話すことができる程度)を週に少なくとも150分間(2時間30分)、または「はげしい」運動(止まって息をしないとしゃべれない程度)を週に少なくとも75分間(1時間15分)することが望ましいとなっています。
「中ぐらい」と「はげしい」運動の具体例を以下に紹介します。
中ぐらいの運動
「中ぐらい」の運動:1日20~25分を毎日 |
● 社交ダンスとライン・ダンス ● サイクリング(平地または少しの上り坂がある場所) ● カヌー ● ガーデニング(庭そうじ、木の剪定) ● ボールを使ったスポーツ(野球、ソフトボール、バレーボール) ● テニス(ダブル) ● 手動車椅子での移動 ● 自転車のペダル踏み運動器(エアロバイク) ● 早足歩き ● 水中エアロビクス |
はげしい運動
「はげしい」運動:1日20~25分を2日に1回 |
● エアロビクスダンス ● サイクリング(時速16キロメートル以上) ● 早いダンス ● きついガーデニング(土掘り、くわを使う) ● 上り坂のハイキング ● なわとび ● 武道(空手など) ● 競歩、ジョギング、またはランニング ● たくさん走るスポーツ(バスケットボール、ホッケー、サッカー) ● 早く、または何往復も泳ぐ ● テニス(シングル) |
以上です。
まとめ
大腸がんサバイバーを対象とした研究によると、がん診断後の高い身体活動(とくにスポーツ、ウォーキング、ガーデニング)は死亡リスクを低下させ、一方で長時間の昼寝(2時間以上)とテレビ視聴(4時間以上)は死亡リスクを増加させるという結果でした。
ガイドラインによると、成人がん患者(18歳から64歳まで)では、「中ぐらい」の運動を週に少なくとも150分間(2時間30分)、または「はげしい」運動を週に少なくとも75分間(1時間15分)することが望ましいとなっています。
ちなみに、「65歳以上の患者さんも、可能であれば同様な運動が望ましいが、慢性の病気によって制限がある場合には、長時間の運動は避けたほうがよい」となっています。
きついと感じる場合には休憩をとり、無理のないように運動しましょう。
運動の強さはともかく、たのしく運動が続けられるように工夫し、毎日の習慣にしましょう。
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