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ウコン(ターメリック)が癌に効く:がんに対するクルクミンの効果を医師が解説

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皆さんは、ウコン(うこん)といえば「お酒」や「二日酔い」を連想するでしょう。

ウコンとは、紀元前からインドで栽培されているショウガ科ウコン属の多年草で、スパイス(ターメリック)としてカレーなどの料理に使われています。

また、昔からインドの伝統医学アーユルヴェーダにも薬として使われていたとのことです。

日本では、お酒を飲む人のサプリメントとして有名ですね。

じつは、ウコンにはがんを予防したり、がんの進行を抑える、いわゆる抗がん効果もあるようです。

ウコンの成分であるクルクミンのがんに対する研究結果をまとめてみます。

クルクミンのがんに対する効果

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クルクミンのがんに対する研究は昔から非常にたくさんあります。

まずは癌細胞における実験、動物を使った実験、さらには人での臨床実験までありますので、順番に紹介していきます。

1. がん細胞に対する効果

クルクミンによるがんの抑制効果は非常に多くの細胞実験で示されています。

実際に、クルクミンは大腸がん、胃がん、乳がん、肺がん細胞に対して、増殖、遊走(ゆうそう=がんの動き)、浸潤(しんじゅん)、転移などを抑制したと報告されています。

2. 動物実験でのデータ

クルクミンとDHA(ドコサヘキサエン酸)の同時投与により、マウスにおける膵臓がんの増殖を70%以上も抑制したという報告があります。

またマウスにおける実験で、クルクミンは胃がんに対する化学療法(5-FUとオキザリプラチンによるFOLFOX治療)の効果を高めたと報告されています。

3. クルクミンががんを抑えるメカニズム

がんを抑制するクルクミンの作用には、以下のメカニズムが報告されています。

■ 抗酸化・抗炎症作用
■ がん細胞の増殖シグナル( NF-kB活性、ERK1/2など)を阻害
■ がん細胞に対する細胞死(アポトーシス)の導入作用
■ 血管新生(がんの成長に不可欠な、新たな血管を引き寄せる作用)の阻害
■ がん幹細胞(がんの中でもとくに薬が効きにくい細胞)を特異的に攻撃する作用

4. 人におけるクルクミンの臨床試験

これらの細胞や動物実験でのデータをふまえ、じっさいに人のがんに効くかどうかを調べている研究があります。

まずは、大腸がんの発がん抑制実験です。米国イリノイ大学のキャロルらは、クルクミンの経口摂取が大腸の前がん病変(aberrant crypt foci: ACF)に与える影響を臨床試験で調査しています。

この試験によると、1日4グラム(1ヶ月間)のクルクミン摂取により、大腸の前がん病変(ACF)の数が、40%減ったとのことです。この結果より、クルクミンには大腸がんを予防する可能性があると結論づけています。

また、大腸がん患者の抗がん剤治療に、クルクミンを加えることによって治療効果が高まったという報告もあります。

次に、進行膵がんに対する臨床試験です。進行膵がんの患者に対するクルクミン単独(1日8グラム)による第二相臨床試験が米国で行われており、肝臓の転移病変が著明に縮小した症例が報告されています(下図)

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Dhillon N., et al. Clin Cancer Res. 2008;14:4491-9.より引用

5. クルクミンの副作用

最後に、クルクミンの副作用についてのデータです。

人における臨床試験では、1日2~8グラムまでのクルクミン摂取により、肝機能障害などの副作用はみられなかったとのことです。

ただ、一部の臨床試験では下痢といった軽度の消化管症状が6割程度の人にみられたとのことです。

しかし長期に大量に摂取した場合などについてはデータがなく、まだ確実に安全とは言えませんが、1日1グラム以下(一般的なサプリメントに含まれている量)程度であれば問題なさそうです。ただし、抗がん剤治療を受けている患者さんでは主治医に相談した方がよいでしょう。

ウコン(クルクミン)の抗がん作用の報告(日本における研究)

体内で有効成分に変わるクルクミンの化合物を合成(京都大学)

2017年7月26日のニュースによると、日本(京都大学)の研究チームが、「排せつされにくく、体内で有効成分に変わるクルクミンの化合物を合成した」とのことです。実際に動物実験(マウスの大腸がん移植モデル)でがん抑制効果を証明したそうです。以下、読売新聞より引用。

がん抑制に「ウコン」の力…抗がん剤と遜色なく

カレーの香辛料ターメリックとしても知られる「ウコン」の成分を利用し、がんの進行を大きく抑えることにマウスの実験で成功したとする研究結果を、京都大のチームがまとめた。(中略)

この成分は「クルクミン」と呼ばれ、大腸がんや膵臓(すいぞう)がんの患者に服用してもらう臨床試験が国内外で行われている。ただ、有効成分の大半が排せつされるため血液中の濃度が高まらず、効果があまり出ないという課題があった。

チームの掛谷秀昭教授(天然物化学)らは、排せつされにくく、体内で有効成分に変わるクルクミンの化合物を合成。有効成分の血中濃度を従来の約1000倍に高めることに成功した。人の大腸がんを移植したマウス8匹に注射したところ、3週間後の腫瘍の大きさが、治療しない同数のマウスの半分以下に抑えられた。目立った副作用も確認されなかった。

掛谷教授は「安全性が高く、既存の抗がん剤と遜色ない効果も期待できる」とし、京大発のベンチャー企業と組んで抗がん剤としての開発を目指す方針。

さらに、京都大学は2020年3月16日、大腸がんの標準治療薬オキサリプラチンが効かなくなった治療抵抗性大腸がんの動物モデルにおいて、水溶性プロドラッグ型クルクミン(クルクミンモノグルクロニド)が顕著な抗腫瘍効果を示すことを明らかにしたと発表しました。

研究グループは、ヒト大腸がん細胞を移植したマウスに水溶性プロドラッグ型クルクミンを投与。すると、体重減少、骨髄抑制、肝障害などの副作用を伴うことなく顕著な抗腫瘍効果が確認されたとのことです。

クルクミン類縁体GO-Y030によるがん免疫療法の効果増強

また、2021年には、東北大学の研究者らは、クルクミン類縁体GO-Y030によるがん免疫療法(免疫チェックポイント阻害薬:抗PD-1抗体)の効果増強を確認したとのことです。

 

高吸収型クルクミンのサプリメントがいよいよ発売

そして、ついに、京都大学発ベンチャー セラバイオファーマ社によるクルクルージュ使用のサプリメントが発売されました!

クルクミンを非晶化し、通常品の約93倍の吸収率を向上したとのことです。

このサプリメントに期待したいですね!

  • この記事を書いた人

佐藤 典宏

医師(産業医科大学 第1外科 講師)、医学博士。消化器外科医として診療のかたわら癌の基礎的な研究もしています。 標準治療だけでなく、代替医療や最新のがん情報についてエビデンスをまじえて紹介します。がん患者さんやご家族のかたに少しでもお役に立てれば幸いです。

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