卵巣がん腹膜播種(転移)に対する腹腔内温熱化学療法の効果:腫瘍減量手術後の生存期間を延長
卵巣癌は、がんが腹膜へ転移した状態(腹膜播種:ふくまくはしゅ)で診断されることも多く、非常に治療がむずかしく予後不良ながんの一つです。
現在、こうした腹膜へ広がった卵巣がんに対しては、出来るだけ腫瘍を取り除き(腫瘍減量手術)、カルボプラチンおよびパクリタキセルを中心とした全身(静脈内)化学療法が行われています。
しかしながら、これらの治療には限界があり、がんが進行して腸閉塞や難治性腹水を引き起こすことになります。
このような現状において、一刻も早く新たな治療方法の開発が待たれます。これまでに、ステージ3の卵巣がん患者を対象に、抗がん剤の静脈内投与と腹腔内投与の併用が生存期間を延長すると報告されています。
また一部の施設では、腹膜播種をともなう癌に対して、腹膜播種病変を切除した後に抗がん剤を温めて腹腔内に投与する腹腔内温熱化学療法(HIPEC)が行われています。
今回、卵巣がんに対して、腫瘍減量手術にHIPECを組み合わせる治療法について、その有効性を評価したランダム化比較試験の結果が発表されました。
腹腔内温熱化学療法(Hyperthermic IntraPeritoneal chemotherapy ; HIPEC)とは?
腹腔内温熱化学療法(通称HIPEC)とは、簡単にいうとヒーターで温めた生理食塩水に抗がん剤を混ぜてお腹のなかに環流するものです(温めた抗がん剤でお腹のなかを洗うといった感覚です)。
HIPECでは、がん細胞に対する温熱療法の効果が期待できるのと、抗がん剤が腹膜に浸透しやすくなり、より吸収されるため、腹膜播種をともなうがんにより有効であると考えられています。
卵巣がんに対する腫瘍減量手術にHIPECを加える治療法は安全であり、その有効性が確認されつつありますが、エビデンスに関してはランダム化比較試験(RCT)のデータはありませんでした。
卵巣がんに対する腹腔内温熱化学療法
【対象と方法】
本試験は、ステージ3の卵巣がん患者を対象とした第三相多施設ランダム化比較試験です。
まずカルボプラチンとパクリタキセルの全身(静脈内)化学療法(3コース)による治療後、不変(stable disease)以上の効果を示した患者245人を、腫瘍減量手術にHIPEC(シスプラチン)を加えたグループ(手術+HIPEC群)とHIPECを加えないグループ(手術のみ群)にランダムに割り付けました。
HIPEC群では腹腔内の温度を40℃に保ち、シスプラチン(100 mg/m2)を希釈した生理食塩水を環流し、できるかで回収しました。
また術後、カルボプラチンとパクリタキセルの全身(静脈内)化学療法を3コース追加しました。
【結果】
【結論】
ステージ3の卵巣がんに対して、腫瘍減少手術にHIPECを加えることは、無再発生存期間および全生存期間を延長し、一方で副作用は増加しなかった。
以上の結果より、HIPECは、今後、腹膜播種をともなう卵巣がんに対する有効な治療法として期待されます。
日本における腹腔内温熱化学療法(HIPEC)の現状
日本では、HIPECはごく限られた施設(病院)で試験的に行われていますが、まだ確立された治療法ではありません。
ネットで調べてみたところ、以下の病院にHIPECの紹介がありました(実際に、現在行われているかどうかはわかりませんので、詳しい情報については直接お問い合わせください)。
また、こちらの統合医療の本でも腹腔内化学療法が紹介されています。
がんに効く最強の統合医療 (がんの名医が厳選したベスト治療)
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