ヘリコバクターピロリ除菌で新たな胃癌の発症率を50%低下:早期胃がん患者における検討

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検診や内視鏡検査の普及にともない、胃癌が早期に発見される患者さんが増えています。

粘膜や粘膜下層にとどまる段階で発見された場合、内視鏡で切除することが可能です。

胃がんの原因として知られているヘリコバクターピロリ菌Helicobactor Pylori)ですが、その除菌治療によって胃癌の発生率が本当に減るのかについてのエビデンスはまだ十分とはいえません。

また、早期胃がんの治療後にピロリ除菌をする意義についてはよくわかっていませんでした。

今回、一流の医学雑誌ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(N Eng J Med)に発表された論文によると、早期胃がん患者では、ピロリ除菌によって新たな胃癌の発症率が50%低下するという研究結果でした。

今後、胃癌治療後の患者さんにピロリ除菌を推奨するエビデンスになると考えられます。

早期胃がん患者におけるヘリコバクターピロリ除菌が異時性胃がんの発生に与える効果について

Helicobacter pylori therapy for the prevention of metachronous gastric cancer. Choi et al. N Engl J Med. 2018 Mar 22. doi: 10.1056/NEJMoa1708423.

【対象と方法】

この二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験では、早期胃癌あるいは高度異形を示す腺腫(胃癌の前がん病変)に対して内視鏡的切除をうけた470人の患者を対象としました。

これらの患者を、ピロリ除菌群(アモキシリン、クラリスロマイシン、およびプロトンポンプ阻害剤ラベプラゾールを1日2回、1週間内服)またはプラセボ群にランダムに割り付けました。

一次エンドポイント(主要評価項目)として、1年目またはその後の胃がんの発症率と、3年目の胃底腺の委縮(発がんに関連する委縮性胃炎)の程度(改善度)を調査しました。

【結果】

■ 5.9年間(中央値)の観察期間中に、新たな胃癌はピロリ除菌群では14人(7.2%)プラセボ群では27人(13.4%)に発見され除菌によって50%低下する(ハザード比0.50、95%CI, 0.26-0.94, P = 0.03)という結果でした(下図)。

新規胃がんピロリ除菌

■ 327人の胃粘膜の組織学的(顕微鏡)検査が可能であった患者のうち、胃体部の委縮の改善プラセボ群では15.0%にみられたのに対し、ピロリ除菌群では48.4%と有意に多くみられた(P < 0.001)。
■ 両群ともに治療にともなう重症の有害事象(副作用)はなかったが、味覚の変化、下痢、めまいといった軽度の副作用はピロリ除菌群により多く報告された(42.0%対10.2%、P < 0.001)

【結論】

早期胃がん患者において、ピロリ除菌治療は胃粘膜の萎縮(委縮性胃炎)を改善し、あらたな胃癌の発生をおよそ50%低下させるという結果でした。

一方で、ピロリ除菌をしても完全には胃癌の発生を防ぐことはできないということも明らかとなりました。

まとめ

早期胃がんの患者において、ピロリ菌の治療は新たな胃癌の発生を防ぐことがあきらかとなりました。

今後、早期胃がん患者にピロリ除菌をすすめるエビデンスになると思われます。

 


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