遺伝子検査によって治癒可能なオリゴメタを診断!大腸がん肝転移の解析より
最近、オリゴメタという言葉をよく耳にします。
オリゴメタ(oligometastasis: オリゴメタスターシス)とは、がんが遠くの臓器に転移しているものの、少数にとどまっており、その転移を切除すれば治癒がえられる可能性が高い状態です。
そもそも、これまでは、1つでも遠隔転移があれば、がんはからだ全体に広がっており、転移を治療しても意味がない(つまり長期生存が望めない)という考え方(いわゆる全身転移説)が主流でした。
ところが最近、さまざまながん(大腸がん、肺がん、乳がん、前立腺がん、腎がん)において、転移があっても限局している症例が意外と多いことがわかり、このオリゴメタの概念が普及してきました。
実際に、たとえば大腸がんの少数転移例では、すべての転移病変の切除によって長期生存(治癒)する症例も少なからず報告されるようになり、このオリゴメタの存在を裏付けるデータが蓄積されてきました。
しかしながら、画像検査で確認できる転移が、本当に限局性のオリゴメタなのか、あるいは全身に無数に散らばった転移の1つであるのかを判定する方法はありませんでした。
今回、大腸がんの肝転移の分子異常を解析し、予後と相関するサブグループに分類することよって、切除によって治癒可能か(つまりオリゴメタかどうか)を予測できるという研究結果が報告されました。
この方法が応用されれば、局所治療によって治る可能性が高いオリゴメタの症例をピックアップできることになります。
大腸がん肝転移の統合分子サブグループ分類によるオリゴメタの診断
【対象と方法】
本研究では、肝臓への転移を切除した134人の大腸がん(ステージ4)を対象としました。
肝臓への転移は、同時性(大腸がんの診断と同時期に診断)が47%、異時性(大腸がんの治療後)が53%でした。
肝転移の個数は、1個が61%、2個が22%、3個以上が17%でした。
臨床的解析
大腸がん肝転移患者におけるがん再発・死亡のリスクを評価する指標として有名な、臨床リスクスコア(CRS)を計算しました。臨床リスクスコア(CRS)の評価項目は、以下の5つです。
- 原発巣(大腸がん)診断と転移が見つかるまでの無病期間が12ヶ月未満
- 肝転移の数
- 最大の肝転移の大きさが5cm以上
- リンパ節転移陽性
- CEA(腫瘍マーカー)>200 ng/mL
分子生物学的(遺伝子)解析
次に、切除した肝転移からRNAを抽出し、マイクロアレイを用いて遺伝子発現プロファリングを行いました。
さらに、一部の肝転移については、オンコプラスを持ちいて、がん関連遺伝子パネル(1212遺伝子)の変異を調べました。
この他にも、マイクロRNA(miRNA)の発現プロファイリングおよびマイクロサテライト不安定性(MSI)解析も行いました。
【結果】
まずは、臨床リスクスコア(CRS)を使って、生存率を比較しました。
つまり、この臨床リスクスコアでも、ある程度は予後が予測できるということがわかりました。
次に、遺伝子発現プロファイリングおよび遺伝子変異の結果を統合し、以下の3つの異なるグループ(サブタイプ)に分類できることがわかりました。
1)免疫活性型(immune):インターフェロン経路↑、p53経路(予後良好)
2)標準型(canonical):免疫↓、間質↓、E2F/MYC経路↑(予後中間)
3)間質型(stromal):間質↑、KRAS経路↑、EMT(上皮間葉移行)と血管新生↑(予後不良)
【結語】
以上の結果より、現在使われている臨床リスクスコアに分子サブタイプを統合することで、大腸がん肝転移切除後の予後(生存期間)を、より正確に予測することができるとしています。
つまり、「遺伝子レベルの解析を追加することにより、オリゴメタかどうかが判定できる」という結果でした。
まとめ
このような遺伝子解析の技術は、研究にとどまらず、すでに臨床において実用レベルの段階に来ています。
近い将来、がんの転移がオリゴメタかどうかを判定する上で、遺伝子サブタイプ解析が使われるようになるでしょう。
この解析を肝転移の生検組織などに応用すれば、治る可能性の高いオリゴメタをピックアップでき、同時に、無用な治療(切除手術など)を減らすことも可能になります。
また、大腸がんだけでなく、膵臓がんなど他の癌にも応用できると考えられます。
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