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がん患者・サバイバーの不安・ストレスや症状をやわらげる「マインドフルネス」とは?

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マインドフルネスは、「今この瞬間」の自分の体験に注意を向けて現実をあるがままに受け入れる心の状態のことをいいます。瞑想やヨガを組み合わせたマインドフルネスのプログラムは、ストレス対処法の1つとして医療・教育・ビジネスの現場で実践されており、最近注目を集めています。

欧米では、早くよりこのようながんに伴う症状の改善や、がん患者・サバイバーの生活の質を高める目的でマインドフルネスが取り入れられてきましたが、最近の臨床試験により、乳がん患者さんの症状を改善したり、身体的および精神的な健康を促進するということが証明されました

がん患者さんでの効果が確認されたマインドフルネスとはいったい何なのでしょうか?

マインドフルネスとは?

マインドフルネスとは、過去や未来のことをあれこれ思い悩むのをやめ、今という瞬間につねに注意を向けて、自分が感じている感覚や感情、思考をあるがままに受け入れることです

つまり、「今、ここ」に100%注意を向ける心のあり方のことです。

マインドフルネスの起源は仏教(ヴィパッサナー瞑想)にあるとされていますが、1979年に米国マサチューセッツ大学教授のジョン・カバット・ジンが、主に痛みなどを緩和するための心理学的治療法として、マインドフルネス・ストレス低減法(Mindfulness-based stress reduction: MBSR)を開発しました。

今ではマインドフルネスは、ストレス対処法の1つとして医療・教育・ビジネスの現場で実践されており、最近注目を集めています。

欧米では、早くよりがんに伴う症状の改善や、がんサバイバーの生活の質を高める目的でマインドフルネスによる治療が取り入れられてきました。特に、乳がん患者において、様々な身体的および精神的症状を軽減する目的で、いくつかの臨床試験が行われてきました。

乳がんサバイバーにマインドフルネスは有効か?

がん患者さんは、痛みや吐き気などの「からだの症状」だけでなく、不安や再発の恐怖といった「こころの症状」に悩まされています。このような症状は、がん患者さんの生活の質(クオリティ・オブ・ライフ)を低下させ、治療が続けられない原因ともなります。

今回、マインドフルネスが、がん患者さんの精神的および身体的症状に対して有効であることを示した最新の研究結果を紹介します。

J Clin Oncol. 2016 Aug 20;34(24):2827-34

乳がん患者を対象としたマインドフルネス・ストレス低減法が、乳がんサバイバーの精神的症状と身体的症状、および生活の質に有効かどうかを調査したランダム化比較試験です。

322名の乳がんサバイバーを、6週間のマインドフルネス・ストレス低減法を施行したグループ(155名)と通常のケアを施行したグループ(167名)の2つのグループに、ランダムに分けました。

2つのグループにおいて、うつ、不安、ストレス、および再発の恐怖などの精神的症状、疲労感や痛みといった身体的症状、さらに生活の質について比較検討しました。

その結果、マインドフルネス・ストレス低減法をうけたグループでは、通常のケアを受けただけのグループに比べて、精神的症状(不安、再発のおそれ)と身体的症状(疲労感)の両方において改善率が高かったとのことです。

特に、もともとストレスのレベルが高いサバイバーでは、マインドフルネス・ストレス低減法が非常に効果的であったとしています。

したがって、マインドフルネスは、乳がんサバイバーの精神的および身体的症状の緩和と生活の質の向上に役立つと結論付けています。

マインドフルネスの実践

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マインドフルネスの実践について簡単にまとめます。

マインドフルネス瞑想の方法

姿勢、呼吸に注意し、1日10分間の瞑想を行います。

1.姿勢:

座るまたは立つ。背骨が気持ちよく伸びていて、首や肩に、よけいな力が入っていない状態

・座る(骨盤の安定感を感じる。背もたれに寄りかからない。)

・立つ(内股を軽くしめ、両足の裏で大地を感じる)

2.呼吸

・鼻で呼吸する

・呼吸に集中する(呼吸によって変化している身体の感覚を観察する)

・呼吸を数える

・ハミングする(目と口を軽く閉じて、舌先を上あごにつけ、振動させながら声を出す)

瞑想を深める5つのポイント

1.今、ここに在る

過去、未来に向かった状態から、意識を「今、ここ」に向けて集中する。

2.何もしない

リラックスしようとしたり、呼吸を深めようとすることはやめ、「何もしない」こと。

3.ジャッジしない

感じたもの、気づいたことに対して、良い、悪い、と評価や判断しない。

4.受け入れる

自分が感じていることを否定せず、ありのまま受け入れる。

5.毎日やる

毎日やることが肝心です。短時間でもいいので、日々、「今、ここ」に在ろうと意識すること。

 

詳しくは、下記のマインドフルネス入門書(CD付きです)をご参照ください。

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また、東京マインドフルネスセンターマインドフルネス&ヨーガネットワークなど、いくつかの施設ではマインドフルネスのプログラムを行っています。

本格的にマインドフルネスを体験されたい方は、実際にプログラムの受講をおすすめします。

がん患者さんへ、マインドフルネス瞑想のすすめ

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がん患者さんは、いつも再発の恐怖や不安、ストレスとたたかっています。

マインドフルネスでは、そういった感情を否定したり、無理に消そうとするのではなく、ありのまま受け入れることから始まります。そして、「今ここ」に心を向けることにより徐々に無の状態に近づいてきます。

マインドフルネスはがん患者さんやがんサバイバーのストレスを軽減し、精神的な状態を改善する有効な手段のひとつであると思います

1日10分のちょっとした瞑想でもいいので、がん患者さんには日常生活に積極的に取り入れてほしいですね。

 


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  • この記事を書いた人

佐藤 典宏

医師(産業医科大学 第1外科 講師)、医学博士。消化器外科医として診療のかたわら癌の基礎的な研究もしています。 標準治療だけでなく、代替医療や最新のがん情報についてエビデンスをまじえて紹介します。がん患者さんやご家族のかたに少しでもお役に立てれば幸いです。

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