膵臓がんに対する免疫チェックポイント阻害剤の効果を高める新たな戦略:IL-6阻害
がんに対する第4の治療といわれる免疫療法の開発および臨床応用が加速度的にすすんでいます。
なかでも免疫チェックポイント阻害剤は、免疫細胞のブレーキを外すことでがんに対する攻撃力を復活させる画期的ながん免疫治療薬として、期待されています(くわしくは、がん治療の新時代に突入:免疫チェックポイント阻害剤は夢のくすりか?)。
現在、抗PD-1抗体ニボルマブ(オプジーボ)はメラノーマ(皮膚がん)、非小細胞肺がん、腎細胞がんに対して適応が承認されており、他のがんに対しても、チェックポイント阻害剤の臨床試験が進行中です。
近い将来、チェックポイント阻害剤の適応が拡大することが予想されますが、一番の難治がんとされる膵臓がんに対しては効果が少ないことがわかっています。
現在、膵臓がんに対する免疫チェックポイント阻害の治療効果を高める新たな戦略についての研究が世界中で行われています。
インターロイキン6(IL-6)の阻害が、膵臓がんに対するチェックポイント阻害剤の治療効果を高める
さて、今回の論文では膵臓がんに対するチェックポイント阻害剤(PD-L1阻害)の効果を高める新たな治療戦略についてのアメリカからの研究報告です。
インターロイキン6(IL-6)とは、炎症を引き起こすサイトカイン(炎症性サイトカイン)の一種で、液性免疫(抗体や補体を中心とした免疫)を制御します。
IL-6は膵臓がんで発現が上昇しており、IL-6が高いと予後が悪くなることが報告されています。また膵臓がんの進行にIL-6が必要であることも分かっています。
そこで、著者らはこのIL-6に着目し、膵臓がんのマウスモデルを用い、IL-6とPD-L1の両方を阻害する治療の効果について調べました。
実験結果を示します。
● 膵臓がん組織ではIL-6とPD-L1の発現が上昇していた。またIL-6は特にがん間質(がん細胞のまわりの組織)の膵星細胞(PSC)において著明に発現していた。
● IL-6とPD-L1に対する抗体を用いた併用治療は、マウスの膵臓がん皮下移植モデルおよびマウス膵発がんモデルにおいて、それぞれの単独治療よりも有意に腫瘍増殖を抑制し、生存期間を延長させた。
以上の結果より、おもに膵臓がんの間質から放出されるIL-6は免疫系に作用してがんの進行を早めていると考えられ、その阻害は膵臓がんに対するチェックポイント阻害治療の効果を高める可能性があるとしています。
今後の治療の展望
この研究で用いられていた抗PD-L1抗体(アテゾリズマブ)は、オプジーボと同様に免疫チェックポイント阻害剤であり、現在、非小細胞肺がん、膀胱がん、腎細胞がん、乳がん(トリプルネガティブ)、小細胞肺がんに対する第3相臨床試験が行われています。
おそらく近い将来、これらのがんに対して承認されると思われます。
またIL-6阻害剤のトシリズマブ(アクテムラ)は、ヒト化抗IL-6受容体抗体であり、国産初の抗体医薬です。適応疾患である関節リウマチ、多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎、全身型若年性特発性関節炎、ならびにキャッスルマン病に対して実際に使用されています。
また、IL-6阻害剤は多発性骨髄腫などがんに対しても有効であることがわかってきました。これまで、IL-6阻害剤は膵臓がん患者では限定的な治療効果しか確認されていませんでしたが、今回の結果より、チェックポイント阻害剤と併用する新しい治療戦略に期待がもてるとしています。
この動物実験(前臨床試験)の結果が、今後の臨床試験での有望な結果につながることを期待します。
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