脳転移(転移性脳腫瘍)でもあきらめない!10年生存例の解析

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脳転移(転移性脳腫瘍)とは、肺がんや乳がんなど、脳以外の部位にできたがんが脳に転移した状態をいいます。

一般的に脳転移が認められた場合、がんの終末像(いわゆる末期の状態)とされ、治癒する可能性はほとんどないと考えられています。

しかし、実際には脳転移についての大規模な調査はなく、その自然史(どのような経過をたどるか)や長期生存の可能性については情報がほとんどありません。

今回、10年以上にわたる長期の追跡調査による脳転移の生存率および予後と関連する因子について報告した論文を紹介します。

脳転移の10年生存者についての解析:治癒は可能である

1973年~2004年までの10年以上の追跡調査が可能である脳転移(転移性脳腫瘍)患者1953人を対象としました。

これらの脳転移の患者について、その臨床学的特徴と予後(生存率)について調べ、さらに予後不良の因子を解析しました。

A cure is possible: a study of 10-year survivors of brain metastases. J Neurooncol. 2016 Sep;129(3):545-55. doi: 10.1007/s11060-016-2208-8. Epub 2016 Jul 25.

結果を示します。

■ 原発部位は、非小細胞肺がんが811例(41.5%)と最も多く、以下、乳がん280例(14.3%)、小細胞肺がん174例(8.9%)、腎細胞がん154例(7.9%)、皮膚がん(メラノーマ)134例(6.9%)、原発不明がん131例(6.7%)、大腸がん62例(3.2%)、その他でした。原発がんの診断から脳転移までの期間(中央値)は7.2ヶ月でした。
■ 治療として、放射線治療(全脳照射、定位手術的照射)、あるいは手術が行われていました。
■ すべての患者の生存期間(中央値)は6.3ヶ月(0.1~322.1ヶ月)でした。
■ 1年、2年、5年生存率は、それぞれ29.9%12.1%3.0%でした。さらに、10年生存率1.3%でした(下図)。

脳転移生存曲線

■ 多変量解析では、性別(男性が女性より1.2倍死亡率増加)、手術なし(1.8倍の死亡率増加)、および定位手術的照射なし(1.8倍の死亡率増加)が予後不良(生存期間が短い)に関連する因子として同定されました。
■ 全体で、23人(1.2%)が10年以上長期生存しており、これらのサバイバーの生存期間(中央値)は18.5年であった
■ 単発性(1個)の脳転移および脳以外に転移を認めないことが、予後良好(長期生存)と関連していた。

以上の結果より、まれではあるが、がんの脳転移を認めた患者でも根治および長期生存の可能性があることが示されました。

単発性の脳転移など予後が期待できる患者には、手術を含めた積極的な治療をすべきであると結論づけています。

日本における脳転移(転移性脳腫瘍)の治療

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脳転移の治療は難しく、一般的に予後不良とされています。

しかしながら、がんの進行状況や原発巣(もともとの臓器)の状況、脳転移の状態(部位や個数)、および全身の状態などにより、いろいろな治療法の選択があります。実際に、手術、薬剤、放射線治療などを組み合わせることにより治療成績は向上しているとのことです。

以下に、脳神経外科疾患情報ページを参考に治療法についてまとめてみます。

手術

手術による腫瘍摘出は、一般的に以下の項目をみたす場合に考慮されます。

転移性脳腫瘍に対する手術適応                      1.単発性で全身状態がよい                       2.手術により重篤な後遺症を残さない部位にある             3.原発巣が十分にコントロールされている                4.頭蓋外転移があっても直接生命に影響がない場合            5.確定診断が困難な場合

しかし、手術は患者さんに対する体力的、精神的負担は大きく、その適応については慎重に決定されます。

放射線治療

放射線治療の種類には、脳全体に照射する全脳照射と、腫瘍部のみに一回で多くの放射線を照射する定位放射線照射(ガンマナイフ、サイバーナイフ、ライナックなど)があります。

転移性脳腫瘍に対する定位放射線照射の適応                1. 一病巣の大きさが平均3cm以下であること
2. 病巣の数が数個で治療可能な範囲内に存在すること
3. 治療後少なくとも3ヶ月以上の予後が望めること

これまでの臨床試験の結果から、単発の脳転移に対しては手術+全脳照射が世界的に標準治療法となっています。また最近の試験結果から、単発性転移に対しては全脳照射+定位放射線照射の方が治療効果が高いとの報告も出てきています。

定位放射線治療は、大きな身体的侵襲なく、かつ短期間の治療が可能であるため、腫瘍の大きさが3cm以下の小さい病巣で、転移病巣が数個以内の場合、有力な治療法となることがあり、我が国では定位放射線照射が選択されることも多くなっています。

脳腫瘍全国統計第12版(1981-2000)によると、診断時に無症状であった転移性脳腫瘍の患者さんの1年生存率は59.7%2年生存率は41.4%とのことでした。無症状でみつかった場合にはやはり予後がいいようです。

 

以前はがんの末期像とされ、根治は不可能と考えられていた脳転移(転移性脳腫瘍)ですが、現在では様々な治療法の進歩に伴い、確実に治療成績が改善し、長期生存の可能性もでてきているようです。以上、がんの脳転移に対する治療法についてでした。

 


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