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膵臓がんに対するゲムシタビン(ジェムザール)とS-1(ティーエスワン)の併用療法の効果

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切除手術ができない転移性膵臓がんや局所進行膵臓がんに対しては、抗がん剤治療が中心となります。長らくゲムシタビン(ジェムザール)の単独投与が行われていましたが、生存期間は1年未満のままでした。

最近ではいくつかの新しい抗がん剤の登場や組み合わせによって、少しずつではありますが、生存率の改善がもたらされつつあります。しかしながら、まだまだ満足のいく状況ではありません。

日本では、進行膵臓がんに対してゲムシタビン(ジェムザール)とS-1(ティーエスワン)を組み合わせたGS療法について臨床試験が行われてきました。

今回、日本で行われた3つのランダム化比較試験のデータから、GS療法の有効性と安全性についてあらためて評価した統合解析の結果が報告されました。

GS療法の有効性および安全性:ランダム化比較試験データの統合解析(プール解析)

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日本(一部台湾を含む)で行われた、ゲムシタビン単独治療とゲムシタビンとS-1の併用療法(GS療法)を比較する3つのランダム化比較試験(GEST、JACCRO PC-01、およびGEMSAP試験)について統合解析(それぞれの研究の元データを集めて再解析する方法)が実施されました。

Efficacy and safety of gemcitabine plus S-1 in pancreatic cancer: a pooled analysis of individual patient data. Br J Cancer. 2017 May 4. doi: 10.1038/bjc.2017.128. [Epub ahead of print]

対象は、770人の進行膵がん患者であり、ゲムシタビン単独が389人、GS療法が381人でした。これらの患者について、ジェムザール単独群とGS療法群の有効性および安全性を比較検討しました。

また、データ解析は、局所進行膵臓がん(まわりの臓器や血管に広がるタイプの進行がん)転移性膵臓がん(遠くの臓器に転移するタイプの進行がん)に分けて行いました。

結果を示します(生存期間は中央値)。

■ 局所進行膵臓がん(193人)については、ゲムシタビン単独群の生存期間は11.83ヶ月であったのに対して、GS療法群の生存期間は16.41ヶ月と有意に予後良好でした(ハザード比0.708、P=0.0220)

GS療法vsジェム単独生存率

■ 転移性膵臓がん(577人)については、ゲムシタビン単独群の生存期間は8.02ヶ月で、GS療法群の生存期間9.43ヶ月と有意な差は認めませんでした(ハザード比0.872、P=0.1102)。
■ グレード3以上の有害事象(副作用)は、GS療法群でゲムシタビン単独群に比べて有意に多くみられました(局所進行膵臓がんでは発疹と血小板減少、転移性膵臓がんでは発疹、下痢、好中球減少)。

まとめ

GS療法は、局所進行膵臓がんにおいてゲムシタビン単独治療よりも有効性が高く、生存期間の中央値は16ヶ月を超えるという結果でした。

現時点では、局所進行膵臓がんに対しては、ゲムシタビン単独療法、S-1単独療法に加え、FOLFIRINOX療法やゲムシタビン+ナブパクリタキセル(アブラキサン)併用療法などが推奨されています。

今後は、これに加えてGS療法(ゲムシタビン+S-1)が治療の選択肢として加わることになります。

有効性と副作用のバランスを考慮してこれらの治療法を選択することになると思いますが、局所進行膵がんに対する武器(治療法)が増えることは大変よいことだと思います。

 


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  • この記事を書いた人

佐藤 典宏

医師(産業医科大学 第1外科 講師)、医学博士。消化器外科医として診療のかたわら癌の基礎的な研究もしています。 標準治療だけでなく、代替医療や最新のがん情報についてエビデンスをまじえて紹介します。がん患者さんやご家族のかたに少しでもお役に立てれば幸いです。

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