大腸がんの抗がん剤耐性と再発の新たな原因を発見!恐怖の細菌フソバクテリウムとは?
大腸がんの罹患者および死亡者数は、世界的にも、また日本においても増加しています。
効果の高い抗がん剤や分子標的薬の導入により、大腸がんの予後は改善しつつあります。しかし、なかには抗がん剤が効かなくなる(薬剤耐性あるいは抗がん剤耐性といいます)症例もあり、再発および生存率低下の最大の原因となっています。
抗がん剤耐性の原因を見いだし、これを克服することで、大腸がんの治療成績を改善できる可能性があります。
この度、大腸がんの抗がん剤耐性の新たな原因として、ある細菌の関与が発見されました。今後の大腸がんの新しい治療法開発につながる発見として重要視されています。
Fusobacterium nucleatum(フソバクテリウム・ ヌクレアタム)とは?
フソバクテリウムは、口の中や腸内に存在する常在菌(嫌気性のグラム陰性菌)で、以前は歯周病の原因菌として知られていました。
ところが最近、大腸がんの組織から多量のフソバクテリウム(なかでもフソバクテリウム・ヌクレアタム)が検出され、注目されるようになりました。研究によると、11人の患者における大腸がんの組織中に、正常な大腸組織と比較して平均でおよそ80倍ものフソバクテリウム・ヌクレアタムが存在していたとのことです。
また、他の研究では、フソバクテリウム・ヌクレアタムの量が多い大腸がん患者は、生存期間が短い(予後が悪い)ことが報告されています。
しかしながら、この細菌がどのようにがんの発生、進行や再発に関わっているかについてはまだ分かっていません。
今回、フソバクテリウム・ヌクレアタムが大腸がんの抗がん剤耐性の原因になっているという衝撃的な報告が、米国の一流科学雑誌セルに発表されました。
フソバクテリウム・ヌクレアタムがオートファジーを調節して大腸がんの抗がん剤耐性を促進する
Fusobacterium nucleatum Promotes Chemoresistance to Colorectal Cancer by Modulating Autophagy. Cell. 2017 Jul 27;170(3):548-563.e16. doi: 10.1016/j.cell.2017.07.008.
研究者らは、まず再発した大腸がん患者と、再発しなかった大腸がん患者のがん組織中に存在する細菌パターンを比較し、再発した大腸がんにおいてフソバクテリウム・ヌクレアタムが最も多量に存在することを発見することからスタートします。
つまり、フソバクテリウム・ヌクレアタムが大腸がんの再発に関与している可能性を指摘しています。
次に、いくつかの独立した大腸がん患者の集団において、がん組織中のフソバクテリウム・ヌクレアタムが多い大腸がん患者(高フソバクテリウム群)は、少ない患者(低フソバクテリウム群)と比べて有意に無再発生存期間が短い(死亡率がおよぞ4倍に増加する)ことを示しました(下図)。
大腸がんの再発の重要なメカニズムのひとつは、抗がん剤が効かなくなること(抗がん剤耐性)です。
そこで、研究者らは大腸がん細胞を使って、フソバクテリウム・ヌクレアタムと抗がん剤耐性との関係を調べます。
少し複雑なのですが、フソバクテリウム・ヌクレアタムが大腸がん細胞のToll様受容体(TLR4)とマイクロRNA(miRNA-18aとmiRNA-4802)を調節し、オートファジーを促進することによって、抗がん剤(オキサリプラチンあるいは5-フルオロウラシル)によるアポトーシス(細胞死)を阻害することが分かりました(下図)。
ちなみにオートファジーとは自食(じしょく)とも呼ばれ、細胞内のタンパク質を分解し、蓄積するのを防ぐための仕組みです。
つまり、フソバクテリウム・ヌクレアタムが大腸がん細胞のオートファジーを調節することによって抗がん剤耐性の原因となっていることが示されました。
以上の結果より、
(1)大腸がん組織のフソバクテリウム・ヌクレアタムを測定することで患者の予後が評価できること
(2)フソバクテリウム・ヌクレアタム(あるいはオートファジー)を標的にすることで、抗がん剤の感受性(効果)を高め、再発を防ぐ新たな治療法の開発につながる可能性があること
などが考えられます。
大腸がんの薬剤耐性および再発に、腸に住む常在菌のひとつが重要な役割を果たしているという衝撃的なデータであり、今後のさらなる研究が待たれます。
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