進行がんを克服して長期生存できた理由は?卵巣がん患者における研究
卵巣がんは初期症状が非常に乏しいため、多くの患者さんがステージ3以上の進行がんの状態で発見されます。
切除可能な早期の卵巣がんの治療成績は良好ですが、進行した卵巣がんの治療成績は決して満足できるものではありません。
例えば、ステージ4の卵巣がんの場合、5年生存率は30%程度です。つまり、多くの患者さんが5年以内に亡くなるということです。
一方で、30%の患者さんは、5年以上にわたり生存することも事実です。
では、これらのサバイバーが進行がんを克服して長期に生存できた理由はいったい何なのでしょうか?
今回、進行卵巣がんを克服したサバイバーからみた「長期生存に影響する因子」についての研究結果を紹介します。
卵巣がんサバイバーの視点からの長期生存に影響をおよぼした因子
“I am not a statistic” ovarian cancer survivors’ views of factors that influenced their long-term survival. Gynecol Oncol. 2019 Dec;155(3):461-467. doi: 10.1016/j.ygyno.2019.10.007. Epub 2019 Nov 6.
アメリカ(およびカナダ)からの研究です。
対象は、卵巣がん患者26人(うち、23人は進行がん)で、5年以上にわたって生存している人です。
患者さんの内訳は、ステージ3または4が88%、10年以上生存が73%、全員が手術を経験、抗がん剤治療を96%が経験、再発を50%が経験していました。
数人のグループに分け、がん診断後の身体活動(運動)、食事、瞑想、祈り、治療、代替補完医療、副作用などについて話し合いが行われました。
会話の中から、長期生存に影響をおよぼしたと考えられる因子を拾い上げる作業をおこないました。
結果を示します。
長期生存に影響した因子のうち、3つの重要なテーマが浮かび上がってきました。それは、
- 運動や食事を中心とした生活習慣を改善し、なんらかの代替補完医療を取り入れていること
- 家族、友人、患者会(サポートグループ)、信頼できるコミュニティ、および医療従事者などによる強力なサポートに頼ることができたこと
- 強い生きる目的(前向きな姿勢)を持っていること
以上の3つでした。
話し合いの内容から代表的なものを紹介します。
- がんの診断後、食事を完全に変えました。以前は、毎日のように赤肉を食べ、揚げ物、じゃがいも、マカロニやパスタなども多く摂っていましたが、それらをやめました。
- 砂糖ががんに悪いことを学んだため、過剰にとることをやめました。マフィン、クッキー、パンなどにも砂糖が含まれているため、より慎重になりました。
- 可能なかぎり、外でウォーキングをやるように心がけています。ウオーキングはとても心地よいです。
- エレベーターを使わずに、階段を使うようにしています。
- スポーツジムに通って運動するようにしています。
- 体に必要なサプリメントを摂っていることが、(とくに抗がん剤治療中は)とてもよいと感じています。
- 家族からある種のお茶(調べたところ、抗酸化作用があるお茶)をすすめられ、それを毎日かかさずに飲んでいます。
- 多くの人からサポートをもらい、とてもラッキーだった。
- わたしには4人の孫がいて、人生の大きなパートを占めている。
- いろいろなことを学べるため、サポートグループ(がん患者会)は大変役にたちました。
- ここに私がいるのは、治療してくれた医師たちのおかげです。すばらしい手術を受けることができました。
- 孫娘の世話をすることが生きがいとなっており、悲しいことをくよくよ考えずに済むようになった。
- もともと前向き(ポジティブ)であったが、以前にも増して前向きになった。
- パーセンテージを賢く考えること、つまり、「85%の患者が5年後にはいない」ということは、「15%は生き残る」という意味だと考えています。
以上です。
まとめ
進行した卵巣がんを克服した患者さんからみた「長期生存できた理由」には、おもに生活習慣の改善、動機、強い人生の目的、そして強力なサポートシステムがあることがわかりました。
今回の研究は、患者さん個人の意見に基づいているわけですから、主観的であり、科学的根拠(エビデンス)という意味では信頼性に欠けるかもしれません。
しかしながら、多くの長期生存したがん患者さんが、「がんを克服するために重要なこと」として共通の項目をあげていることは興味深いと思います。