「トリプルネガティブ乳癌」若い女性に多い予後不良な乳がんの特徴とは?

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乳癌は増えています。

小林麻央さんや北斗晶さん、また南果歩さんなど多くの芸能人が乳癌と診断されています。

また最近、乳がんのなかでも比較的予後(治療成績)が悪いとされる「トリプルネガティブ乳癌」という聞き慣れない病名がたびたび聞かれるようになりました。

はたして「トリプルネガティブ乳癌」とはどんな乳がんなのでしょうか?

今回、若い女性に多いとされるこの乳がんについて、症状、治療、予後(余命)、および早期診断のためにできることを解説します。

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トリプルネガティブ乳癌とは?

トリプルネガティブ乳癌とは、乳がんのサブタイプ(がんの特徴をいくつかの分子マーカーによって分類したもの)の一つで、エストロゲン、プロゲステロンという女性ホルモンの受容体(結合する部位)と、HER2(ハーツー)という細胞の表面にあるがんを促進するタンパク質の受容体がすべて陰性の(発現していない)乳がんのことをいいます。

乳がん全体の10~15%を占めるといわれ、35歳未満(34歳以下)のいわゆる若年性乳がんに多いことがわかっています。

トリプルネガティブ乳がんは一般的にがん細胞の分裂・増殖が早いため、進行しやすく、転移や再発をきたしやすいとされています。

トリプルネガティブ乳がんの症状

トリプルネガティブ乳がんに特異的な症状はなく、他の乳がんと同様の症状がみられます。最も多い症状は、乳房のしこり、乳頭からの血性分泌、および乳腺のひきつれです。

1.しこり

乳がんの自覚症状として最も多くみられる代表的な症状です。自己検診で見つかることがあります。

反対側の手で、乳房とわきの下にしこりがないか調べます。入浴時に、石鹸などを乳房につけてから調べるとわかりやすくなります。

2.乳頭からの血性分泌物

乳がんの症状として、乳頭から血性(くすんだ赤色~茶色のこともあります)の分泌物が出てくることがあります。

自己検診では乳房や乳首をしぼり、分泌物(特に血性分泌)が無いかを調べましょう(妊娠しているときや授乳期は除きます)。

3.乳腺のひきつれ、乳頭陥没

乳腺のひきつれ感や乳頭陥没(以前はなかったのに乳頭がへこむ)は、乳がんの症状のことがあります。特に、手を挙げた時にひきつれ感を感じることが多いようです。

鏡の前で両手を挙げ、乳房にひきつれやへこみ、左右差がないかを調べましょう。

以上の3つが乳がんの特徴的な症状です。

これらの症状は自分で発見できるので、定期的(日にちを決めて)に自己検診をするとよいでしょう。ただし月経前や月経中は乳房が張って分かりにくいこともありますので、月経後の1週間~10日ごろに行うと良いでしょう 。

注意:乳房の痛みなど”しこり”以外の症状

乳がんの代表的な症状といえば”しこり”ですが、「乳房の痛み」など、それ以外の症状がでることもあります。しこりを自覚すれば乳がんを疑ってすぐに受診するのですが、それ以外の症状ではなかなか受診しないため、ステージが進んでしまう人もいるようです。

乳がんの典型的な症状と、非典型的な症状については、こちらの記事をどうぞ↓。

トリプルネガティブ乳がんの治療

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例えば、エストロゲンレセプターなどホルモン受容体が陽性の乳がんの場合、ホルモン療法(内分泌療法)が効果的です。また、HER2が陽性の乳がんでは、トラスツズマブ(ハーセプチン)やラパチニブ(タイケルブ)などの抗HER2療法が期待できます。

しかし、トリプルネガティブ乳がんではこれらの治療標的がすべてないため、手術と通常の化学療法(抗がん剤治療)が選択されます

手術が可能な場合には、補助療法として術前または術後に抗がん剤治療が行われます。

抗がん剤では、タキサン系、アントラサイクリン系の薬が主に使用されます。これらの薬には高い反応を示しますが、比較的早期に効果がなくなることがあります。しかし、トリプルネガティブ乳がんの中にも抗がん薬が効くタイプ、効きにくいタイプのがんがあるため、適切な治療薬の選択が難しいことが問題となっています。

また現在、トリプルネガティブ乳がんに対して、免疫チェックポイント阻害剤であるペムブロリズマブ(キイトルーダ、抗PD-1抗体)や、アテゾリズマブ(抗PD-L1抗体)の安全性と有効性を調べる臨床試験が行われており、一部の患者さんでは長期にわたって治療効果が持続するという結果が報告されつつあります。

トリプルネガティブ乳がんの予後

トリプルネガティブ乳がんは、標的となるホルモン受容体やHER2がないこと、生物学的悪性度が高いこと、また治療(抗がん剤)に抵抗性を示す傾向があることより、予後は悪いといわれています。

トリプルネガティブ乳がんでは、およそ30%の症例で遠隔転移を認め、また手術をしても術後3年以内の再発が多い(30%以上)とされています。転移・再発症例の平均の生存期間は約13ヶ月と、非常にきびしい状況です。

トリプルネガティブ乳がんの研究:治療への応用

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現在、トリプルネガティブ乳がんに対する新しい治療法の開発を目的に、様々なアプローチで研究が進んでいます。

一部のトリプルネガティブ乳がんの患者さんにはBRCA1遺伝子の変異があり、乳がん発症の原因となっている可能性が指摘されています。

また、トリプルネガティブ乳がんの原因となる遺伝子異常を網羅的に調べた結果が報告されています。この研究では、トリプルネガティブ乳がん100例以上について全RNAシークエンスという方法で、多くの遺伝子異常を解析しました(Nature. 2012 Apr 4; 486(7403):395-9)。

この結果、トリプルネガティブ乳がんにおいては、p53(がん抑制遺伝子)PIK3CA(がん遺伝子)PTEN(がん抑制遺伝子)などの遺伝子異常が多いことが分りました。

特に、PIK3CAは、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)/AKT/mTOR経路という、がんで活性化されている経路にある重要な遺伝子で、治療の標的として研究がすすんでいます。

例えば、この活性化されたPI3K/AKT/mTOR経路を阻害する薬剤(mTOR阻害剤PI3K阻害剤)がトリプルネガティブ乳がんに有効であることを示した細胞や動物実験の結果が報告されており、現在、臨床試験においてその有効性を調査中です(Oncotarget. 2016 Jul 26. doi: 10.18632)。

これらの薬剤が、一刻も早くトリプルネガティブ乳がんの治療へ導入されることを期待します。

乳がんを早期に発見しましょう!

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乳がんは、早期発見できれば8割以上は助かる病気です! 

毎日の自己検診に加え、以下の方法で乳がんを早期に発見しましょう。

1.市町村の乳がん検診をうける(40歳以上、2年に1回)
2.乳がん検診ができる病院(できれば乳腺科、乳腺外科など専門外来)を受診する
3.人間ドック・がんドック(できれば乳がん・婦人科がん専門ドック)をうける

また、一部の腫瘍マーカー遺伝子(DNA)検査によって乳癌を早期に発見する試みが行われています。

腫瘍マーカーについては、こちらの記事もどうぞ↓

遺伝子検査については、こちらの記事をどうぞ↓


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佐藤 典宏

医師、医学博士、メディカル・サプリメント・アドバイザー。 消化器外科医として診療のかたわら癌の基礎的な研究もしています。 ☞ くわしいプロフィールはこちら ☞ 標準治療、代替医療、最新のがん情報についてエビデンスをまじえて紹介します。がん患者さんやご家族のかたに少しでもお役に立てれば幸いです。☞ 当ブログが本になりました!「ガンとわかったら読む本」マキノ出版 ☞ 
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