EPA(エイコサペンタエン酸)の抗がん作用:ステージ4(肝臓転移)の大腸癌に対する臨床試験
EPA(エイコサペンタエン酸)は、必須脂肪酸(オメガ3脂肪酸)の一種で、魚油(フィッシュオイル)に多く含まれています。
EPAには血液をさらさらにする効果や炎症を抑える作用があり、心血管病の予防だけではなく、がんの予防や治療効果があるとされています。
特に、細胞や動物実験のレベルでは、EPAはがんの発生や増殖・転移を抑えることが多くの研究で報告されています。
しかし、実際の人における臨床試験などで、EPAの抗がん効果を証明した医学的根拠(エビデンス)はあるのでしょうか?
今回、EPAの投与が、大腸がん肝転移の患者さんに対して有効かどうかを調査した臨床試験の結果について解説します。
大腸がん肝転移例に対するEPAの効果を調べる第II相ランダム化比較試験
大腸がんの肝転移を認める患者さんを対象とした第二相ランダム化比較試験です。
大腸がんの肝転移に対して切除手術予定の88名の患者さんに対し、平均30日間(12~65日)にわたりEPA(1日2グラム)を投与するグループ(43名)と、プラセボ群(45名)にランダムに割り付けました。
その後、肝転移に対して切除術を行い、生存期間を含めて経過を観察しました。
評価項目としては、切除した肝転移巣(腫瘍)の増殖インデックス(Ki67)、血管新生(腫瘍内の血管の数)、およびEPAの安全性と患者の生存期間です。
Anticolorectal cancer activity of the omega-3 polyunsaturated fatty acid eicosapentaenoic acid. Gut. 2014 Nov;63(11):1760-8. doi: 10.1136/gutjnl-2013-306445. Epub 2014 Jan 27.
さらに、同じ臨床試験についての別の論文では、赤血球のEPA濃度(血液の中で、EPAは主に赤血球の細胞膜に多く含まれます)を測定し、生存期間との関係を調べています。
Measurement of red blood cell eicosapentaenoic acid (EPA) levels in a randomised trial of EPA in patients with colorectal cancer liver metastases. Prostaglandins Leukot Essent Fatty Acids. 2016 Dec;115:60-66. doi: 10.1016/j.plefa.2016.10.003. Epub 2016 Oct 7.
結果を示します。
■ EPA投与による重大な副作用はみられなかった。
■ EPA投与群では、肝転移腫瘍内のEPA濃度が約40%増加していた。
■ 腫瘍の増殖(Ki67)インデックスに差はみられなかったものの、血管数が減少していた。
■ 肝転移切除後の最初の18ヶ月間において、EPA投与群でプラセボ群に比較して生存期間が延長する傾向にあった(下図)。
■ EPA投与群では赤血球中EPA濃度が有意に上昇しいた。
■ この赤血球中EPA濃度が高いグループは、腫瘍におけるEPA濃度が高く、また赤血球中EPA濃度が低いグループに比べて生存期間が有意に延長していた(ログランク検定P=0.04)。
以上の結果より、
1.大腸がん肝転移の患者に対するEPAの投与(平均30日間)は安全で良好な耐容性を示し、(おそらく一部には血管新生を阻害することによって)生存期間延長の効果をもたらす可能性がある。
2.赤血球中EPA濃度は、EPAが腫瘍へ行き届いていることを示すバイオマーカーとして有用な可能性がある、
と結論づけています。
今後、第三相試験において、さらに長期のEPA投与の効果を調べる予定であるとしています。
要するに、この第二相臨床試験は、短期間のEPA投与でも大腸がん肝転移患者の予後(生存期間)を改善する可能性があることを示した貴重なデータです。
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