免疫チェックポイント阻害剤ペムブロリズマブ(キイトルーダ)が膀胱がんなど(尿路上皮がん)にも有効
新たな免疫チェックポイント阻害剤である抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(キイトルーダ)の勢いが止まりません。
2016年9月に悪性黒色腫に対する適応で承認され、同年12月には非小細胞肺がんに対する適応で承認されました。
さらに、ホジキンリンパ腫の適応追加を申請しており、他にも多くのがんに対して第三相臨床試験が進行中です。
このうち、進行した尿路上皮がん(腎盂がん、尿管がん、膀胱がん)を対象としたペムブロリズマブの第三相臨床試験の結果が今回報告されましたので解説します。
抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(キイトルーダ)とは?
もともとがんを攻撃して除去する免疫細胞には、PD-1という免疫チェックポイントがあり、攻撃をゆるめるためのシステムがそなわっています。
がん細胞は、免疫細胞からの攻撃を逃れるために、PD-L1というタンパク質を出し、これが免疫細胞のPD-1に結合すると、免疫細胞の働きが抑制されます。
ペムブロリズマブ(キイトルーダ)は、ニボルマブ(オプジーボ)と同様、PD-1に対する抗体薬であり、先回りしてこの免疫細胞のPD-1に結合することで、がん細胞が出すPD-L1との結合をじゃまします。
これにより、免疫細胞のブレーキを解除して働きが復活させ、がん細胞への攻撃を強化することができると考えられています。
ペムブロリズマブは現在、悪性黒色腫と非小細胞肺がんに対して承認されていますが、特に非小細胞肺癌に対しては、未治療の患者(ファーストライン)を対象とした第三相臨床試験において、通常の抗がん剤治療をはるかに上まわる治療成績を示しました(こちらの記事もどうぞ「肺がんの治療が変わる?免疫チェックポイント阻害剤による癌免疫療法の驚くべき効果」)。
この他にも、乳がん、胃がん、頭頸部がん、多発性骨髄腫、食道がん、肝細胞がん、腎細胞がんを対象とした第三相試験が現在進行中であり、今後さらに適応拡大が期待されています。
尿路上皮がんに対するペムブロリズマブの第三相試験
今回、進行した尿路上皮がんの患者を対象としたセカンドライン治療としてのペムブロリズマブの効果を調べる第三相臨床試験が、一流医学雑誌ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(N Engl J Med)に報告されました。
このオープンラベル多施設無作為化試験(KEYNOTE-045)では、シスプラチンやカルボプラチンなどプラチナ製剤をベースとした化学療法で病勢が悪化した542人の尿路上皮がん(腎盂がん、尿管がん、膀胱がん)の患者を、ペムブロリズマブ単剤による治療(ペムブロリズマブ群)または主治医が選択した通常の抗がん剤(パクリタキセル、ドセタキセル、またはビンフルニン)による治療(化学療法群)に無作為に割り付けました。
有効性
有効性については、奏功率(部分寛解)は化学療法群で11.4%、ペンブロリズマブ群で21.1%であり、ペンブロリズマブ群で有意に高い結果でした(P=0.001)。
また全生存期間(中央値)は、化学療法群で7.4ヶ月であったのに対し、ペムブロリズマブ群では10.3ヶ月とおよそ3ヶ月間も延長していました(ハザード比、0.73; 95% CI, 0.59 to 0.91; P=0.002)(下図)。
(N Engl J Med. 2017 Feb 17. doi: 10.1056/NEJMoa1613683.より一部改変)
つまり、尿路上皮がんに対するセカンドラインの治療法として、ペンブロリズマブは通常の抗がん剤治療よりも有効であることが示されました。
安全性(有害事象)
有害事象(すべてのグレード)については、化学療法群(90.2%)に比べて、ペンブロリズマブ群(60.9%)で少なく、またグレード3以上の重篤な有害事象についても、化学療法群(49.4%)に比べて、ペンブロリズマブ群(15.0%)で少なかったとのことです。
要するに安全性に関しては、ペンブロリズマブの方が副作用が少なく安全であったとのことです。
まとめ
今回のランダム化第三相臨床試験では、尿路上皮がんに対するセカンドラインの治療法として、ペンブロリズマブは通常の抗がん剤治療よりも有効であることが示されました。
転移をともなう進行尿路上皮がんの予後はきわめて悪く、今回の結果によって免疫チェックポイント阻害剤が新たな治療法として重要な位置づけになることは間違いなさそうです。
今後、ペンブロリズマブが尿路上皮がんに対しても承認される日がくることと思います。
現時点では限られた治療法しかない多くの進行尿路上皮がん患者さんが、一刻も早くペンブロリズマブによる治療をうけることができることを期待しています。
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