腸閉塞を合併した大腸がんの生存率は低いのか?日本からの研究報告

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先日、「チューリップ」の財津和夫さん(69歳)が腸閉塞大腸がん(下行結腸がん)と診断されたことがニュースとなりました。

ちなみにステージ(進行度)については告白しておらず、治療経過や余命が気になるところです。

大腸がんでは、腫瘍が大きくなって腸を塞いでしまうと腸閉塞(イレウス)を引き起こしますが、はたしてその予後(生存率)はどうなのでしょうか?

過去の研究では、腸閉塞をともなう大腸がんは生存率が低い(予後が悪い)という報告や、腸閉塞のない大腸がんと差はないとする報告もあります。

今回、日本から報告された腸閉塞を合併した大腸がんの生存率についての論文を紹介します。

大腸がんの生存期間(余命)

まずは、一般的な大腸がんの生存期間について最新のデータを紹介します。大腸がんの余命(生存期間)は進行度(ステージ)によって大きく異なります

全がん協部位別臨床病期別5年相対生存率(2004-2007年診断症例)によると、大腸がんの5年生存率は、以下のようになってます。

ステージ 5年生存率(%)
全ステージ 75.8
ステージ I 99.0
ステージ II 90.8
ステージ III 81.6
ステージ IV 18.1

つまり、他のがんと比べてもステージIIIまではかなり生存率は高いのですが、ステージIVになると20%以下(5人に1人しか生存できない)と急に悪くなります

ちなみに、大腸がんの場合、遠隔転移(肝臓や肺、腹膜などへの転移)を認めるとステージIVと診断されます。

腸閉塞を合併した大腸がんの予後

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さて、腸閉塞を合併した大腸がんは生存率が低くなるのでしょうか?閉塞を伴う大腸がんに対する手術成績について調査した日本からの報告を紹介します。

Effect of preoperative colonic drainage for obstructing colorectal cancer. Int Surg. 2015 May;100(5):790-6. doi: 10.9738/INTSURG-D-14-00262.1.

2001~2011年までの10年間に日本大学病院において手術を行った879例のステージI~IVの大腸がん患者を対象としました。このうち、腸閉塞を全く認めなかったT1またはT2(腫瘍が粘膜下層または固有筋層内にとどまっている状態)のがんは除外し、残りの656例について解析しました。

この656例中、腸閉塞を伴う大腸がんが104例(16%)で、腸閉塞を伴わない大腸がんが残りの552例(84%)でした。

この2つのグループについて治療内容および予後をふくめた手術の成績を比較検討しました。その結果を示します。

■ 腸閉塞を伴う大腸がんのグループでは術前の減圧(閉塞によって高くなった腸内の圧力をさげること)を行っていたが、その方法は、鼻から腸へのチューブによる減圧(40.4%)、肛門からのチューブによる減圧(14.4%)、そして人工肛門をつくる手術(45.2%)であった。
■ 2つのグループ間で年齢や性別などに差はなかったが、閉塞を伴う大腸がんのグループには下行結腸がんが多かった
■ 2つのグループ間でステージ(進行度)に差はなかった
■ 術後の合併症は、腸閉塞を伴う大腸がん患者で44.8%、腸閉塞のない患者で36.6%に認め、腸閉塞を伴う患者で高い傾向にありましたが、統計学的な有意差はなかった(P = 0.066)。
■ 手術後の5年全生存率は腸閉塞を伴う患者で69.5%であり、腸閉塞がない患者の72.9%と有意な差を認めなかった(下図)。

腸閉塞大腸がん生存期間

■ さらに、ステージII、III、IVに分けて生存率を比較したところ、すべてのステージにおいて、腸閉塞あり、なしの2つのグループ間に生存率の差は認めなかった

まとめ

以上の結果より、本研究では腸閉塞を伴う大腸がんの患者さんの生存期間は、腸閉塞がない大腸がんと比べて明らかな差は認めないとの結論でした。

したがって、やはり腸閉塞の有無よりも転移の有無が大腸がんの術後の生存期間(余命)に最も関係すると考えられます。

 


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