遺伝子異常(ミスマッチ修復機構欠損)により抗PD-1抗体(ペンブロリズマブ)が効く癌を予測
手術、抗がん剤、放射線に次いで第4の標準治療として注目されている免疫チェックポイント阻害剤(オプジーボやキイトルーダなど)ですが、一部の患者にしか効果がみられないこと、予期せぬ副作用、および医療費の高騰などの問題も抱えています。
事前に効果が期待できる患者だけを選択することができれば、より効率的な治療が行えます。
免疫チェックポイント阻害剤が効きやすいがんの特徴として、ミスマッチ修復機構の欠損(DNA複製エラーを修復する機能不全)があげられています。このミスマッチ修復欠損は、大腸がんをはじめ様々ながんにみられます。すでに米国(FDA)ではこの特徴をもつ固形がんに対するキイトルーダ(抗PD-1抗体)の使用が承認されています。
今回、ミスマッチ修復異常をもつがんに対するキイトルーダの効果につていの大規模なデータ解析がScience(サイエンス)誌から報告されました。
ミスマッチ修復機構(MMR)欠損がんとは?
正常の細胞では、DNAがコピーされる時に塩基配列の間違い(ミスマッチ)を修復する機能があります。これをミスマッチ修復機構(mismatch repair: MMR)と呼びます。
一部のがんでは、このミスマッチ修復機構が欠損しており、無数のDNAの複製エラー(遺伝子異常)が蓄積する原因となっています。このようながんの特徴を、ミスマッチ修復機構(MMR)欠損、あるいはマイクロサテライト不安定性とも呼びます。
このミスマッチ修復機構の欠損と抗PD-1抗体ペンブロリズマブの治療効果との関係が、2015年の「The New England Journal of Medicine」に報告されました。この臨床試験では、ミスマッチ修復機構の欠損があるがんに対しては、ペンブロリズマブの治療効果が非常に高かったという驚くべき結果を示し、注目されました。
今回、各種がんを含むさらに大規模な症例について、ミスマッチ修復機構欠損とペンブロリズマブの効果についての解析結果が報告されました。
ミスマッチ修復機構欠損はチェックポイント(PD-1)阻害剤の効果を予測する
今回の臨床試験では、ミスマッチ修復機構(MMR)欠損が確認された12の異なるがん(大腸がん、子宮内膜がん、胃・食道がん、膵臓がん、胆道がんなど)患者86人を対象としました。全ての患者は、試験登録前に少なくとも1つ以上の前治療を受けており、効果がなく病状が進行した状態でした。
これらの患者に対して、抗PD-1抗体ペンブロリズマブ(キイトルーダ)を投与し、治療効果について評価しました。
結果を示します。
以上の結果より、ミスマッチ修復機構欠損がんの大部分は、原発臓器に関係なくチェックポイント阻害剤に感受性が高く、また効果の持続期間も長いことが示されました。
つまり、原発部位にかかわらず、この遺伝子異常を認めるがんは、キイトルーダをはじめとする免疫チェックポイント阻害剤のよい適応であると考えられます。
各種がんにおけるミスマッチ修復機構欠損の頻度
さて、気になるのがこのミスマッチ修復機構欠損がんの頻度です。がんの部位(原発臓器)によって違うことがわかっていますが、それぞれのがんでの実際の割合はどうなのでしょうか?
この報告では、さらに12,019例の大規模ながんの遺伝子解析によって、ミスマッチ修復機構欠損がんの頻度を示しています。
5%以上のものでは、子宮内膜がん、胃がん、小腸がん、大腸がん、子宮頸がん、肝細胞がん、前立腺がん、胆管がんなどがありました。なかでも子宮内膜がんや胃がんでは頻度が高いという結果です。
これらのがんでは、チェックポイント阻害剤が期待できる症例が多いことが予想され、またミスマッチ修復機構欠損が治療効果を予測するバイオマーカーとして有用であるといえます。
チェックポイント阻害剤の効果を予測できる他のマーカーについてはこちらの記事をどうぞ。
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