がんの手術後には、傷の痛みはもちろんですが、手術に関連した様々な部位の痛みをともないます。特に、膵臓がんの手術では、通常、比較的傷が大きな開腹手術になりますので、痛みも強くなる傾向にあります。
麻酔の進歩や痛み止めの開発などにより、術後の痛みのコントロールも徐々に良好になってきました。しかし、個人差はありますが、まだ術後の痛みに苦しむ患者さんがいるのも確かです。
そして、この術後の痛みはストレスとなって体のホルモンバランスを乱し、免疫力を低下させることにより、がんの進行や転移を促進する可能性が指摘されています。
今回、膵臓がんの手術後の痛みのコントロールと生存率(予後)との関係について興味深い研究結果が報告されました。
膵臓がん手術後の痛みのコントロールと予後との関係
2009年~2014年までに膵臓がんに対して手術を施行した221人の患者を対象としました。手術は、146人(69%)が膵頭部(膵臓の右側)の切除(膵頭十二指腸切除術など)、66人が膵体尾部(膵臓の左側)の切除でした。
術後1, 2, 3, 5, 7日目の痛みを調査しました。なお術後の痛みは、看護師の問診によって評価され、痛みの程度をスコア(0から10)で記録しました。
このうち、術後早期(1, 2, 3日目)の痛みの平均と術後晩期(5, 7日目)の痛みの平均を求め、術後晩期の痛みが早期の痛みよりも減っている場合に「痛みのコントロール良好」とし、術後晩期の痛みが早期の痛みと変わらないか悪化している場合に「痛みのコントロール不良」と定義しました。
この手術後の痛みのコントロールと患者さんの生存率(予後)との関係を調べました。
結果を示します。
つまり、膵体尾部切除術後に、しっかりと痛みをコントロールできた(痛みが軽くなった)患者さんでは、コントロールができなかった(痛みが変わらないまたは悪くなった)患者さんより予後が良かったという結果でした。
まとめ
膵臓がん手術後の痛みをコントロールすることは、生存率を高めるために重要であることが示唆されました。
明確なメカニズムは不明ですが、これまでの研究によると、術後の痛みはストレスとなり、神経や内分泌バランス、また免疫に悪影響をおよぼす可能性があります。実際に、ある動物実験では、術後の痛み(特に手術直後の強い痛み)がNK(ナチュラルキラー)細胞の活性を低下させたという報告があります。
がんの手術後には、痛みを我慢せずにきちんと看護師や担当医に報告し、しっかりと痛み止めの治療を受けることが重要であると思われます。
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