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フィッシュオイル(EPA/DHA)と抗がん剤の併用にて消化器がん患者の予後改善:日本からの最新報告

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近年、大腸がんや膵臓がんをはじめとして消化器がん患者が急増しています。早期がんに対しては、手術を中心とした治療によって根治も可能であり、治療成績(生存率)も比較的良好です。一方で、進行がん患者の予後は依然として厳しい状況です。

新しい抗がん剤や分子標的薬の登場により、進行がんに対する薬物療法は飛躍的な進歩をとげつつあります。しかしながら、がんが進行するにつれて、多くの患者さんがカヘキシア(悪液質)という栄養状態の悪化をきたし、最終的に治療を続けられなくなるといった問題もクローズアップされています。

特に、消化器がんの患者さんではカヘキシアが直接的な死因となることが多いため、栄養状態を良好に保つことが予後を改善するためには必要になります。

今回、カヘキシアを伴う消化器がんに対して、フィッシュオイル(オメガ3脂肪酸)が豊富な栄養補給が予後を改善するというデータが日本の研究グループから報告されました。

化学療法中の消化器がん患者に対するフィッシュオイルが豊富な栄養補給の効果

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Fish oil-enriched nutrition combined with systemic chemotherapy for gastrointestinal cancer patients with cancer cachexia. Sci Rep. 2017 Jul 6;7(1):4826. doi: 10.1038/s41598-017-05278-0.

抗がん剤治療(術後補助または緩和的化学療法)を受けている消化器がん(食道がん、胃がん、大腸がん、胆道がん、膵臓がん)患者128人を対象とした臨床研究です。

全例で5%以上の体重減少を認め、カヘキシアを伴っていました

これらの患者を、フィッシュオイルを豊富に含む経口栄養補給を摂取するグループ(フィッシュオイル栄養補給群)と摂取しないグループ(コントロール群)に振り分けました。

最終的に37人(29%)がフィッシュオイル栄養補給群、残りの91人がコントロール群となりました。

栄養補給群では、栄養機能食品プロシュア(アボット)を1日1~2パックで6ヶ月継続しました。このプロシュアには、タンパク質 16g、EPA 1.1g、DHA 0.5g(オメガ3脂肪酸として計1.6g)含まれています。

栄養補給群とコントロール群について、以下の項目について比較しました。

1.炎症のマーカ-であるCRP(C-リアクティブ・プロテイン)値

2.骨格筋量

3.除脂肪体重

4.生存率

なお生存率については、CRPとアルブミン値で決まり、予後を予測するすぐれたスコアであるグラスゴー予後スコア(GPS)によって患者を分類して生存率を比較しました。

結果を示します。

■ コントロール群では、炎症のマーカーであるCRPが上昇していたが、フィッシュオイル栄養補給群では変化を認めなかった

■ コントロール群では、骨格筋量および除脂肪体重に変化を認めなかったが、フィッシュオイル栄養補給群ではこれらの有意な増加を認めた

■ 患者さん全体では生存率に差を認めなかったものの、予後不良と予想されるグループ(グラスゴー予後スコアが1または2)での比較では、コントロール群に比べフィッシュオイル栄養補給群が有意に生存率が良好であった(P = 0.0096)(下図)。

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■ 予後と最も関連する因子の解析(多変量解析)では、フィッシュオイルが豊富な栄養補給が独立した予後因子として同定された。

 

以上の結果より、特に予後不良と予測されるグラスゴー予後スコア1または2の患者において、フィッシュオイルが豊富な栄養補給によって、炎症が抑えられ、骨格筋量および除脂肪体重が増加し、最終的に生存率が上昇するという結果でした。

まとめ

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上記の研究結果のように、オメガ3脂肪酸(特にEPA)には炎症を抑える作用、カヘキシアを予防してがん患者さんの体重を維持する作用、抗がん剤の効果を高めて生存率を改善する効果が証明されつつあります。

以下のような患者さんに特にオメガ3脂肪酸をふくむ栄養補助が有効だと思われます。

■食欲のない消化器がん(胃がん、大腸がん、食道がん、胆管がん、膵臓がん)患者

■体重が減少してきたがん患者さん

■炎症のマーカー(CRPなど)が高いがん患者さん

■抗がん剤治療中のがん患者さん

  • この記事を書いた人

佐藤 典宏

医師(産業医科大学 第1外科 講師)、医学博士。消化器外科医として診療のかたわら癌の基礎的な研究もしています。 標準治療だけでなく、代替医療や最新のがん情報についてエビデンスをまじえて紹介します。がん患者さんやご家族のかたに少しでもお役に立てれば幸いです。

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