膵臓がんにジェムザールが効かない理由は細菌だった?抗生剤で治療効果が高まる可能性
膵臓がんに対する化学療法(抗がん剤治療)の選択肢は増えてきましたが、やはり現在でもゲムシタビン(ジェムザール)をベースとした治療が主体となっています。
たとえば、切除不能の膵臓がんに対しては、ゲムシタビン単独療法、ゲムシタビンとナブパクリタキセル(アブラキサン)の併用、あるいはゲムシタビンとS-1(ティーエスワン)の併用療法などが行われています。
しかしながら、とくに膵臓がんではゲムシタビンをはじめ抗がん剤耐性(薬が効かなくなること)が最も深刻な問題となります。この薬剤耐性のメカニズムを解明することは、治療の効果を高め、予後を改善する上で非常に重要な課題です。
今回、ゲムシタビンの耐性のメカニズムとして、腫瘍内に存在する細菌(バクテリア)が関与しており、抗生剤によって細菌を治療することで抗がん剤が効きやすくなるという驚くべき研究結果が、米国の一流科学雑誌サイエンスから報告されました。
今後の膵臓がんの治療法改善につながる重大な発見であると考えられます。
ゲムシタビンの薬剤耐性に腫瘍内の細菌が関与
本研究では、1.大腸がん細胞を使った試験管での実験、2.マウスを使った抗生剤によるゲムシタビン耐性克服の実験、そして3.人の膵臓がん組織での検討の3つのパートから構成されます。それぞれについて、簡単に説明します。
1.大腸がん細胞を用いた試験管での検討
研究者らは、まず大腸がん細胞を用い、細菌とゲムシタビン耐性との関係を調べました。
通常であればゲムシタビンによって大腸がん細胞の増殖は抑えられるのですが、マイコプラズマ・ハイオライニス(Mycoplasma hyorhinis)という細菌と一緒に培養すると、ゲムシタビンが効かなくなることを突き止めました。
さらにその原因として、細菌が分泌するゲムシタビンの代謝酵素であるシチジンデアミナーゼ(CDD)によってゲムシタビンが不活性化され、このために効かなくなることがわかりました。
このゲムシタビンを不活性化する酵素(シチジンデアミナーゼ)は他の細菌にも存在しますが、とくに酵素の特殊なタイプ(長い構造のもの)をもつ細菌がゲムシタビンの代謝(不活性化)をすすめることがわかりました。
2.マウスの大腸がん移植モデルにおけるゲムシタビン耐性と抗生剤による耐性克服
次に、マウスを使った実験にうつります。
つまり、このマウスの大腸がんモデルからも、細菌が腫瘍内に存在することによってゲムシタビンの効果が低下しており、抗生剤にて細菌を治療するとゲムシタビンによるがん抑制効果が高まることが示されました。
3.膵臓がん組織内における細菌の存在
次に、このような細菌が実際の人におけるがんに存在するかどうかを調べました。ここでは、ゲムシタビンが治療の中心的な役割を果たす膵臓がんで検討しました。
このガンマプロテオバクテリアは十二指腸に存在することが知られており、膵管を経由して膵臓がん組織へ細菌が移動している可能性が考えられました。
まとめ
以上の結果より、膵臓がん組織の多くに細菌が存在しており、ゲムシタビンを代謝する酵素によってその効果を弱めていることが示唆されました。
さらに、抗生剤を併用することにより、ゲムシタビンの効果を高め、耐性を克服できる可能性があります。
今後、膵臓がんに対するゲムシタビンと抗生剤の併用療法について臨床試験などでの検証が必要と考えられます。
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