肺がんステージ4の治療法:手術による局所治療追加で抗がん剤単独より生存率を大幅に改善
非小細胞肺がん(肺腺がん、肺扁平上皮がん、肺大細胞がん)のステージ4(遠隔転移を認める状態)に対する治療にはさまざまなものがあり、未だに確立されたものはありません。
一般的には、全身化学療法(抗がん剤)が治療の中心となります。最近では分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤(オプジーボやキイトルーダ)の導入により、治療の選択肢が増えてきました。
一方で、遠隔転移を認めるがんに対しても、放射線や手術による積極的な局所治療(原発部位(肺)に対する治療)を追加するいわゆる集学的治療によって、予後が改善するという意見もあります。
今回、アメリカの大規模データベース解析から、ステージ4の非小細胞肺がんに対する局所治療の有効性について報告がありました。
集学的治療、とくに手術(肺切除)を全身化学療法に組みあせる治療が、ステージ4の非小細胞肺がんの生存率(予後)を大幅に改善するという結果です。
ステージ4の肺がんとは?
ステージ4の肺がんとは、遠隔転移(離れた臓器への転移)を認める状態で、以下の3つの病態に分類されます。
治療に関しては、全身の薬物療法が中心となります。
現在、通常の抗がん剤、分子標的薬、あるいは免疫チェックポイント阻害剤が使われています。
しかしながら、ステージ4の非小細胞肺がんの予後はいぜんとして厳しく、5年生存率は5%程度です。
一部の施設では、放射線や手術など局所に対する積極的な治療を行っていますが、その効果については議論が分かれるところです。
非小細胞肺がんステージ4に対する局所治療併用は予後を改善するか?データベース解析
米国立癌研究所(NCI)のSEER(Surveillance, Epidemiology and EndーResults)データベースに登録された、45,321人の非小細胞肺がん患者(2004~2013年)が対象となりました。
これらの患者について、治療法と生存期間との関係を調査しました。
治療には、以下の4つのパターンがありました。
● 抗がん剤単独:17,779人
● 抗がん剤+放射線:24,966人
● 抗がん剤+手術:1,339人
● 抗がん剤+手術+放射線:1,237人
このように抗がん剤に放射線を組み合わせる治療が最も多く、全体の半数以上を占め、次に抗がん剤のみ(およそ40%)が多く、手術を併用する治療はわずかでした。
結果を示します。
以上の結果より、集学的治療、とくに局所治療として手術(肺切除)を抗がん剤に組みあせる治療が、ステージ4の非小細胞肺がんの生存率(予後)を改善することが示されました。
今回のデータは多数の患者における大規模な研究ですが、後ろ向きの解析であることより、いくつかの限界もあります。
手術を含めた局所治療の有効性については、今後、前向きのランダム化比較試験を行うことが望ましいと考えられます。
いずれにしても、転移を認めるステージ4の肺がんに対しても、局所のコントロールと全身療法の組み合わせが予後を改善する可能性を示す研究結果として重要な報告であると思います。
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