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抗PD-L1抗体デュルバルマブ(durvalumab)が非小細胞肺癌の生存期間を有意に延長

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切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌(小細胞癌という特殊なタイプ(組織型)以外の約80%の肺がん)は予後不良ながんですが、ここにきてその治療法は大きく変化しつつあります。

抗PD-1抗体薬であるオプジーボ(ニボルマブ)、キイトルーダ(ペムブロリズマブ)の導入をきっかけに、免疫チェックポイント阻害剤が新たな治療法の選択肢として確立されつつあります。

一方で、通常の抗がん剤に放射線を併用した化学放射線治療にもかかわらず、多くの局所進行切除不能(ステージ3)の非小細胞肺癌は増悪することより、新たな治療戦略が必要と考えられます。

今回、局所進行切除不能(ステージ3)の非小細胞肺癌に対する化学放射線治療後の地固め療法として、抗PD-L1抗体薬であるデュルバルマブが生存期間を有意に延長するという結果が報告されました。

切除不能の非小細胞肺癌に対する新しい治療戦略として、希望をもたらす研究報告であると思います。

非小細胞肺癌に対する免疫チェックポイント阻害剤

免疫チェックポイント阻害剤は、簡単に言うと免疫細胞のブレーキを解除する薬です。

つまり、がん細胞を攻撃する免疫細胞(T細胞)の働きにブレーキをかけているPD-1とPD-L1(およびPD-L2)の結合を阻止することで、PD-L1により抑えられていたT細胞の働きを活性化することで抗がん効果を発揮する薬です。

免疫チェックポイント阻害剤には、免疫細胞にある「カギ穴」のPD-1に対する抗体薬と、がん細胞が持っているタンパク質である「カギ」のPD-L1に対する抗体薬があります。

現在、非小細胞肺癌に承認または適応申請されている免疫チェックポイント阻害剤を紹介します。

オプジーボ

オプジーボは、2015年12月に国内ではじめて「切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」の適応追加承認を取得した抗PD-1抗体薬です。

現在、ステージ4の非小細胞肺癌に対する2次治療(最初の治療がうまく行かなかった場合の次の治療)以降において、オプジーボは標準治療のひとつに位置づけられています。 

キイトルーダ

抗PD-1抗体薬キイトルーダは、非小細胞肺癌の1次治療(最初の治療)として、従来の抗がん剤治療と比較した非盲検ランダム化比較第Ⅲ相試験(KEYNOTE-024試験)において、PD-L1高発現の患者で全生存期間(OS)を延長しました。

この結果をうけ、キイトルーダは2016年12月に「PD-L1陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌 」の適応承認をうけ、1次治療(PD-L1発現率50%以上)、2次治療(PD-L1発現率1%以上)のいずれもで使用が可能となりました。

アテゾリズマブ

さらに、非小細胞肺癌に対しては、抗PD-L1抗体薬テンセントリク(アテゾリズマブ)単剤療法がPD-L1発現率に関係なく有効であることが証明されており、現在非小細胞肺癌の2次治療以降の治療法として適応申請中です。

抗PD-L1抗体デュルバルマブ(durvalumab)が局所進行切除不能(ステージ3)の非小細胞肺癌患者の生存期間を延長

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Durvalumab after Chemoradiotherapy in Stage III Non-Small-Cell Lung Cancer. N Engl J Med. 2017 Nov 16;377(20):1919-1929. doi: 10.1056/NEJMoa1709937. Epub 2017 Sep 8.

PACIFIC試験は、局所進行切除不能(ステージ3)の非小細胞肺癌患者を対象に、地固め療法としての抗PD-L1抗体デュルバルマブの効果を評価する二重盲検多施設無作為化プラセボ対照国際第3相試験です。米国、カナダ、ヨーロッパ、日本など26カ国235施設で実施されました。

プラチナ系抗がん剤ベースの化学療法と放射線治療の併用を受け、進行していない713人の(局所進行切除不能)非小細胞肺癌患者を、デュルバルマブ投与群とプラセボ投与群に2:1に割り付けました。

実際に治療を受けることができた709人中、473人がデュルバルマブ群、236人がプラセボ群となりました。

結果を示します。

■ 無増悪生存期間(progression-free survival: PFS)中央値は、デュルバルマブ群16.8ヶ月で、プラセボ群5.6ヶ月に比べ有意に延長され、疾患進行または死亡のリスクを48%も減少しました(ハザード比0.52、P<0.001)(下図)。

デュルバルマブ生存曲線NEJM

■ 寛解率(完全寛解+部分寛解)デュルバルマブ群でプラセボ群よりも高く(28.4% vs. 16.0%; P<0.001)、また寛解期間も長かった(18ヶ月持続寛解率が72.8% vs. 46.8%)。
■ 死亡または遠隔転移までの期間は、デュルバルマブ群でプラセボ群よりも有意に長かった(23.2ヶ月 vs. 14.6ヶ月; P<0.001)。
■ グレード3または4の有害事象(副作用)はデュルバルマブ群で29.9%、プラセボ群で26.1%でみられた(有意差なし)。このうち最も多い副作用は肺炎であった(4.4%と3.8%)。

以上の結果より、局所進行切除不能(ステージ3)の非小細胞肺癌に対する化学放射線治療後の地固め療法として、デュルバルマブは無増悪再発を有意に延長することが示されました。

また、寛解率寛解期間死亡または遠隔転移までの期間のいずれにおいても、デュルバルマブ群はプラセボ群よりも良好な結果でした。

一方で安全性についてはプラセボ群と同様でした。

今後、デュルバルマブが局所進行切除不能の非小細胞肺癌に対する新たな治療の選択肢となる可能性が高いと考えられます。

 


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  • この記事を書いた人

佐藤 典宏

医師(産業医科大学 第1外科 講師)、医学博士。消化器外科医として診療のかたわら癌の基礎的な研究もしています。 標準治療だけでなく、代替医療や最新のがん情報についてエビデンスをまじえて紹介します。がん患者さんやご家族のかたに少しでもお役に立てれば幸いです。

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